新薬の登場で選択肢が増える 乳がんの再発・転移の最新治療

監修●德留なほみ 静岡県立静岡がんセンター女性内科部長
取材・文●「がんサポート」編集部
発行:2024年5月
更新:2024年5月


BRCA遺伝子変異変異の検査も必要ですか?

「もう1つ考えないといけないのは、HER2陽性以外の患者さんであれば、BRCA遺伝子変異の検査を行う必要があります。BRCA遺伝子変異があれば、PARP阻害薬リムパーザ(一般名オラパリブ)を使うことができます。またBRCA遺伝子変異がある症例に対してはターゼナ(一般名タラゾパリブ)も最近承認されました」

BRCA遺伝子変異は遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)の原因の遺伝子で、乳がん全体のおよそ5%、トリプルネガティブでは20%と言われています。

「BRCA遺伝子検査については、遺伝の問題もあるのでそれを説明したうえで、検査を進めるようにしています。しかし、兄弟姉妹やお子さん、お孫さんにも関わることなので保留される方もおられます。その場合には、繰り返し説明をするようにはしています」

再発・転移の患者さんが押さえておくべきポイントは?

「当センターに初診に来られたとき、すでに再発・転移がある患者さんに、『ご自分の乳がんが、どういうものかちゃんと知っておいてください』とお話しします。それはもしかしたら情報格差によるものかもしれませんが、サブタイプをご存じない方が多いからです。当科に初診で来られる患者さんの一定数は、前の病院で治療を受けているのですが、なぜ自分がこの治療を受けてきたかわからない方がいます。サブタイプによって全く治療法が違うので、少なくともご自分の乳がんのサブタイプがなんであるか知っておくことが大切です」

再発・転移と診断されると、人は誰でも動揺して情報をうまく処理できません。しかも、乳がんの情報量は非常に多いので、その情報を取捨選択して、うまく整理していくことが必要になります(表3)。

「おそらく、どこの病院でも患者さんに説明する資材は作っているはずです。それをまず読んでもらい、わからないことがあったら、そのつど聞いていただきたいですね。たとえば、医者だけでなくて、看護師さんや薬剤師さんもトレーニングを積んでいますので、看護師さんや他の医療スタッフに聞いてもらってもいいと思います。疑問を1つ1つ解消しながら治療していくのが一番だと思います」と徳留さんは話を締めました。

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