PARP阻害薬や免疫チェックポイント阻害薬に続く トリプルネガティブ乳がんに待望の新薬登場!

監修●岩田広治 名古屋市立大学大学院医学研究科臨床研究開発学分野特任教授
取材・文●「がんサポート」編集部
発行:2024年12月
更新:2024年12月


どのような副作用がありますか?

「普通の抗がん薬は、血中に入った途端、もちろんがんにも効きますが、がん以外の正常な細胞にも副作用を及ぼすわけです。けれどもADCという薬剤は、がん細胞に届いてから抗がん薬が効くようなデザインになっているので副作用が少ないのですが、もちろんゼロじゃありません。血中を薬が流れているときに、中にはリンカーから離れてしまう抗がん物質があり、どうしても副作用は出ますが、通常の抗がん薬に比べると、当然副作用は少なくなります」

ASCENT試験で多く見られた副作用は、倦怠感、好中球減少症、下痢、悪心、感染症、脱毛、貧血、食欲減退、便秘、嘔吐、腹痛、食欲減退でした。

その中でも好中球減少症という白血球が減る副作用が問題で、G-CSF製剤の使い方が重要になります。

「トロデルビの投与スケジュールは、2週投与して1週休薬です。ところが、日本での予防的なG-CSF製剤の投与は、ロングタームのG-CSF製剤しか使うことはできなくて、1週目の投与の後にG-CSF製剤を使うことはできません。ですからトロデルビを2週連続投与した後で、G-CSF製剤を使って白血球の減少を抑えるといった使い方が一般化していくと思います」

今後のトリプルネガティブ治療は?

トロデルビは、現在は全身療法歴のあるホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳がんに承認されていますが、今後はもっと早い段階での使用が期待されます。

「1次治療で使って有効性があるかどうかは、現在、臨床試験を行っている最中で、その結果に期待をしているところです。また、Trop-2をターゲットにした同じ作用機序の新薬の発売も控えていますので、その薬との使い分けも重要になってくると思います」

これまで他の乳がんに比べて有効な治療法が限られていて、再発や転移の可能性が高く、再発すれば余命が短かったトリプルネガティブ乳がんに次々と使える薬の登場は、治療の選択肢が増え患者さんにとって大きな希望につながっています。

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