新薬の登場で、HER2陽性・進行再発乳がん治療はここまで変わった!
新しい治療戦略を示したASCOのガイドライン
パージェタとカドサイラが加わることで、HER2陽性・進行再発乳がんの治療戦略はどう変わったのだろうか。ASCO(米国臨床腫瘍学会)が新たなガイドラインを発表している。日本で使用できない治療法は除いて、徳田さんに解説してもらった。
◆ホルモン受容体陰性の場合(図3)
ハーセプチンによる補助療法を行わなかった人と、行ってから12カ月経過して再発した人は、1次治療として「パージェタ+ハーセプチン+タキサン系薬剤の併用療法」が推奨されている。2次治療は「カドサイラ単独療法」である。
ハーセプチンによる補助療法を行い、12カ月以内に再発した人は、CLEOPATRA試験のデータを当てはめることができない。そこで、最初から2次治療と考え、「カドサイラ単独療法」が推奨されている。

◆ホルモン受容体陽性の場合(図4)
従来はまずホルモン療法が推奨されていたが、ASCOガイドライン2014年版ではハーセプチンによる補助療法を行わなかった人と、行ってから12カ月経過して再発した人は、1次治療として「パージェタ+ハーセプチン+タキサン系薬剤の併用療法」が推奨されている。あるいは、「ホルモン療法+ハーセプチン併用療法」、「ホルモン療法単独」でもよいとされている。
まず3剤併用療法を行い、それで奏効が得られた場合、「ホルモン療法+ハーセプチン併用療法」などに切り替えることも考えられるとしている。また、2次治療は「カドサイラ単独療法」である。
一方、ハーセプチンによる補助療法を行い、12カ月以内に再発した人は、最初から2次治療と考え、「カドサイラ単独療法」が推奨されている。

◆3次治療以降(図5)
1次治療で「パージェタ+ハーセプチン+タキサン系薬剤の併用療法」、2次治療で「カドサイラ単独療法」が行われている場合には、3次治療として「タイケルブ+ゼローダ併用療法」か「ハーセプチン+化学療法」が推奨されている。
ただし、1次治療と2次治療で、パージェタが使われていなければ、3次治療は「パージェタ+ハーセプ���ン+タキサン系薬剤の併用療法」、カドサイラが使われていなければ、3次治療には「カドサイラ単独療法」が推奨されている。

HER2陽性乳がんの治療はまだ進歩していく

「現在、さまざまな臨床試験が行われているので、数年後、治療戦略が新たな展開を見せている可能性もあります。現在、注目されているのはMARIANNE試験です」
この試験では、「パージェタ+カドサイラ併用療法」と「カドサイラ単独療法」と「ハーセプチン+タキサン系薬剤併用療法」の比較が行われている。結果によっては、「パージェタ+カドサイラ併用療法」が標準治療となる可能性があるという。
「パージェタとカドサイラの併用療法は、副作用の点で、パージェタ、ハーセプチン、タキソテールの3剤併用より優れている可能性があります。両者を直接比較する臨床試験は行われていませんが、場合によっては1次治療が変わるかもしれません」
HER2陽性乳がんの治療は、まだまだ進歩していきそうだ(図6)
同じカテゴリーの最新記事
- HER2発現の少ないHER2-low乳がんにも使用可能に 高い効果で注目のエンハーツ
- 驚くべき奏効率で承認された抗HER2薬「エンハーツ」 HER2陽性再発乳がんの3次治療で期待される新薬
- HER2陽性・進行再発乳がんの薬物療法に大きな変化
- 乳がん再発・転移時には HER2発現の陰転化に配慮を
- 切除不能または再発乳がんの治療戦略を変える新薬 HER2陽性乳がん治療薬「パージェタ」の可能性
- 昨年からハーセプチンも使えるように。新たな新薬登場にも期待 温存と治療予測というメリットも!乳がんの「術前化学療法」
- 乳がん再発予防:乳がん治療を大きく変えたハーセプチンが、さらに適応を広げる ハーセプチンの術前療法で再発を防止、乳房温存も可能に!!
- ハーセプチンの適応拡大で治療法が増え、QOLもさらに向上 待望の「術前化学療法」も認められた分子標的治療