定位放射線療法を併用した臨床試験も進行中 子宮頸がんの化学放射線療法
4門照射に代わる強度変調放射線治療
副作用を最小限に抑えるための対策を行いながら治療が行われるが、それでも副作用には十分注意する必要がある。
治療中や治療直後に現れる急性期障害には、腸炎、膀胱炎、皮膚炎、粘膜炎、感染症などがある。
治療から3カ月以上経過して現れる晩期障害には、腸管の症状(吸収不全、腸閉塞、直腸出血、狭窄など)、膀胱炎、膀胱出血、骨盤骨折、骨粗鬆症などがある。
将来的には、4門照射に代わって強度変調放射線治療(IMRT)が行われるようになる可能性もあるという。
「25回行う体外照射のうち最後の5回は、膀胱や直腸に当たる線量を減らすため、照射野の中央部分をシールドで覆って治療します。中央遮蔽(しゃへい)というのですが、これがIMRTを導入しにくい理由の1つになっています」
定位放射線治療を併用した臨床試験が進行中
都立駒込病院の放射線診療科では、子宮頸がんに対する、新しい化学放射線療法の臨床試験が行われている。腔内照射ができない患者を対象に、標準的な腔内照射の代わりに(体幹部)定位放射線治療(SBRT)を行い、その有効性と安全性を調べる臨床試験である。
「腔内照射ができない患者さんは少なくありません。がんの最大径が7cm以上と非常に大きいケースや、大きな子宮筋腫などの他の疾患があるケース、さらに膣が狭くて治療器具を入れられないようなケースにも、腔内照射ができません。
また、膣や子宮に器具を入れる治療に抵抗感を示す患者さんもいます。まず、そういった患者さんを対象に、新しい化学放射線療法がどのくらい効くのか、どのくらい安全なのかを調べてみることにしたのです」
高い精度で複数方向から照射
SBRTとは、通常の体外照射に比べて非常に高い精度で位置決めを行い、放射線を周囲の複数方向から照射することで、ターゲットとなる範囲に集中させる放射線治療のこと。治療したい部位への線量を上げながら、周囲の組織への照射量を減らすことが可能になる。
SBRTを行う治療装置には、サイバーナイフ、トモセラピーなどいくつかの機種があるが、今回の臨床試験で定位放射線治療に用いているのは、ヴェロ(VERO-4DRT���と呼ばれる高精度な放射線治療装置である(図3)。
この治療装置は、呼吸などによって体内の臓器が動くのに合わせて放射線を照射する、ヘッド部分が動く機能を持っている。赤外線認識センサーとX線透視複合システムを利用する動体追尾機能により、呼吸している患者の肺がんに対しても、正確に放射線を照射することができるという。
患者の負担を軽減
子宮は呼吸中の肺のように大きく動くことはないが、膀胱や直腸などに接する臓器なので、どうしても移動してしまう。そうした動きがあっても、動体追尾機能を持つヴェロは、狙った範囲に9方向から正確に放射線を照射することができる。
「シスプラチンによる化学療法と体外照射は従来の治療と同じとし、腔内照射の部分をヴェロに変えて臨床試験を行っています。
腔内照射は週1回で4回行いますが、ヴェロはターゲットをがんに絞り込み、1回7Gyの治療を3回行うだけです。これを3日間連続で行います。計21Gyですが、内部にはより高線量が照射されるので、4回の腔内照射に劣らない治療効果が期待できます。
膣内に治療器具を入れる必要もなく、体外から照射されるだけですし、3日間で終わるので、治療を受ける患者さんにとっては、負担は軽くてすみます」
治療成績については、臨床試験の結果を待つ必要があるが、現段階では効果が高い印象があるという。
「将来的には、IMRTとSBRTを組み合わせ、それと化学療法を併用する化学放射線療法が主流になるのではないかと考えています。そうなると、治療効果が高まるのに加え、副作用も軽減されるのではないかと期待できます」
進歩の途上にある子宮頸がんの化学放射線療法。臨床試験の結果が出るのが待たれる。
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