増えている腺がん。重粒子線治療など新たな治療法も研究中 どう治療する?予後が悪い子宮頸部腺がん

監修:深澤一雄 獨協医科大学医学部大学院産科婦人科学講座主任教授
取材・文:文山満喜
発行:2012年2月
更新:2013年4月

初期は手術が原則

[1B,2A期の扁平上皮がんと腺がんでの治療法別生存率の比較]

  5 年
生存率(%) 無病生存率(%)
  扁平上皮がん 腺がん 扁平上皮がん 腺がん
手術 84 70 76 66
放射線治療 88 59 78 47
P ns 0.05 ns 0.02
腺がんは扁平上皮がんに比べて放射線治療が効きにくい
出典:Lancet350:535-540,1997

子宮頸がんは0期、1A期などの初期のがんには子宮頸部円錐切除術(円錐状に頸部組織を切り取る方法)と呼ばれる手術が行われますが、腺がんはがん細胞が散らばっていることもあり、断端(切り口)が陰性と判断されても、慎重な経過観察が必要です。

1B期、2期の治療については、日本婦人科腫瘍学会は手術、放射線療法を並列の治療選択肢として提示しています。

しかし、腺がんに関しては、手術のほうが放射線療法よりも予後が良好であるという研究結果が報告されているため、原則第1選択は手術とされています。

ただし、腫瘍径3センチ未満の小さな腺がんに対しては「放射線療法を主治療としても予後良好である」との報告もあり、高齢、合併症などの理由で手術が難しい場合には放射線療法が行われることもあります。

3期、4A期は抗がん剤のシスプラチン(一般名)を基本とした化学放射線療法(放射線療法と化学療法を同時に行う併用療法)が推奨されています。

4B期で化学療法を行う場合には、シスプラチンをはじめとした「プラチナ製剤」に分類される抗がん剤を単独もしく���他の薬剤との併用で治療を行います。

[子宮頸部腺がんにおける各ステージの治療方針]
子宮頸部腺がんにおける各ステージの治療方針

重粒子線治療など新たな治療の研究が進む

[子宮頸部腺がん進行期例の放射線治療成績]

報告(年) 進行期 治療法 3年生存率
Eifel PJ(1990) 46 3 放射線 28%
Hopkins MP(1991) 25 3 放射線 8%
Lea JS(2002) 24 3 化学放射線 0%
Baalbergen A(2004) 22 3 放射線 9%
NIRS(2005) 17 3-4A 重粒子線 58%
重粒子線治療で良好な効果が得られている

腺がんは放射線療法が効きにくいと話しましたが、重粒子線治療の効果に期待が高まっています。

重粒子線治療は、とくに難治性のがんに対して、従来の放射線(エックス線やガンマ線)治療より高い効果を得ることができると注目されている治療方法です。

まだ研究段階ですが、腺がんにおいても従来の放射線に比べて良好な治療成績が得られています。

増加傾向にある腺がんは、化学療法の研究も進行中です。

子宮頸がんの化学療法は、通常プラチナ製剤をベースとする化学療法が行われますが、未だ標準的な治療方針は確立していません。

したがって、薬剤の組み合わせは各施設の判断に委ねられているのが現状です。

そのため、現在もどのような薬の組み合わせがいいか、臨床研究が意欲的に続けられています。

最近は、腺がんに対して、子宮体がん、卵巣がんで行われている化学療法(プラチナ製剤とタキサン系薬剤の併用療法)が有効ではないかと、研究も進められています。

また、消化器がんの多くが腺がんであるため、再発した腺がんの患者さんに対して、消化器がんの化学療法「SOX療法」( TS-1()とエルプラット()の併用療法)を用いた有効性の報告もあります。

TS-1=一般名テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム
エルプラット=一般名オキサリプラチン

ワクチン接種で予防

子宮頸がんに関する最近のトピックスとしては、「子宮頸がんを予防するヒトパピローマウイルス・ワクチンの発売」が挙げられます。

現在、日本で接種できる子宮頸がん予防ワクチンは2種類あり、1つは16型・18型、もう1つは16型・18型・6型・11型に対して効果をもつものです。

ワクチンを接種することで、子宮頸がんの6~7割を防げるとされています。

ワクチン接種が若い世代に順調に浸透すれば、ヒトパピローマウイルス感染に起因する扁平上皮がん、腺がんの減少につながっていく可能性があります。

頸部腺がんは扁平上皮がんと比べて予後が悪いがんですが、子宮頸がんを予防するヒトパピローマウイルス・ワクチンで腺がんの征圧も期待できるようになっています。


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