AI支援のコルポスコピ―検査が登場! 子宮頸がん2次検診の精度向上を目指す
AIソフトウェアはいつ臨床現場で使えますか?
「AIがコルポ診での異常度の強い所見を可視化したとしても、いちばん重要なことは、AIのサポートを受けた臨床医がどう動いてくれるかです」と植田さんは強調します。AIがどれほどきれいに色分けしても、実際にその部分の組織を臨床医が正しく採取しない限り意味がないと言うのです。
「コルポスコピー検査を行う臨床医が、このツールを活用することで病変組織を実際に正しく採取して診断できたかどうかを、今後証明していかなくてはなりません。そのためにも、まずは開発したAIを搭載したソフトウェアとして臨床現場に届けるべく、今年(2023年)中には販売開始する予定です」と植田さん。
開発中の製品は、株式会社HACARUSと共同開発した「専用ソフトウェア」で、形態はこの専用ソフトウェアが入ったタブレットです。ケーブルで繋げば、コルポスコープに装着したデジタルカメラからタブレットへリアルタイムで動画像が送られます。
「カメラとタブレットをケーブルで繋ぐと、タブレット画面にコルポスコープが捉えた画像が映し出され、酢酸加工後に画像取り込みボタンを押すと、2~3秒で予測結果が表示されます。出力に関して、動画と静止画を両方残せることも、このソフトウェアの強みです。カメラだけだと静止画しか残せませんが、正しい評価をするためにも、動画を残しておくことは非常に重要。さらに今後、検査の質の向上を目指すためにも、動画で残すことの意義は大きいと考えます」(図5)

一方、患者さんから見ると、通常のコルポスコピー検査を受けるのと全く同じと思っていいのでしょうか?
「患者さんからすれば何も変わりませんが、AIサポートによって検査の信頼性が増すことが、患者さんにとって一番のメリットといえるでしょう。加えて、どの部位を採取したらよいかが一目瞭然なので、不必要に何カ所も採取されることがなく、検査時間の短縮にも繋がり、患者さんに優しい検査になると思います」
実際、熟練医なら5~10分ほどで終わるコルポスコピー検査ですが、不慣れな臨床医が行うと、酢酸加工後の観察に時間がかかる、必要ない箇所まで組織を採取するなど、検査が長引くことも往々にしてあるそうです。
これからのコルポスコピー検査はAIが主流に?
専用ソフトウェアの開発に際し、医療機器プログラムを目指すことも考えたそうですが、「初めから医療機器プログラムとして保険適用を目指す場合、医薬品医療機器等法の承認を得る必要があります。それにはより多くの検証が必要で、裕に2~3年はかかると考えられました。そこで、まずは専用ソフトウェアを全国の多くの施設で使えるようにし、コルポ診断AIを全国に広める先駆けにすることを目指そうと思いました。また、保険承認に必要な膨大な検証を我々だけでやり遂げるのは難しいとも考えました」と植田さんは話します。
そこで、診断支援ツールとして世に送り出し、実際に使ってもらうことでコルポスコピー検査の質を担保していくと同時に、数多くのデータを集め、さらに研究を重ねて、2~3年後を目安に医療機器としての保険適用を目指すことにしたというのです。
「この製品を導入した施設にコルポ診断AIの質を高める研究に協力してもらい、その画像からAI解析精度をさらに進め、2~3年後を目処に医療機器プログラムとして認められる結果を出したいと思っています」
現在、京都大学医学部附属病院産科婦人科では、週に1度「コルポスコピー外来」を行っており、この専用ソフトウェアが導入されるとのこと。
最後に植田さんは、こう述べて話を締めました。
「大腸内視鏡AIが先行していますが、このAIソフトウェアも同じ流れです。今後、画像検査に関してはAI搭載が加速していくでしょう。とくにコルポ診のように熟練度を要する画像診断において高いクオリティを担保するためには、AIの力が必須になると思います」
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