大腸がんの基礎知識 大腸がんってどんな病気? 大腸がんは早期発見すれば9割が治る!

監修●石黒めぐみ 東京医科歯科大学大学院応用腫瘍学講座准教授
取材・文●「がんサポート」編集部
発行:2015年7月
更新:2019年7月


Q6 大腸がんの生存率は?

大腸がんは、他の主要ながんと比べて比較的治りやすいがんです。5年生存率では、早期がんならば9割以上です。がんの治りやすさは発見のしやすさや、がんの〝性格〟の違いが影響します。大腸がんは、効果の証明された検診があり、かつ、比較的性格がいいがんであると言えます。

Q7 ステージごとの治療法は?

早期がんのうち、粘膜下層の浅いところまでに留まっている場合には、内視鏡で切り取る治療をします。切除したがんを顕微鏡で調べて、がんの深さや顔つきによっては、追加で手術が勧められる場合もあります。

ステージⅡ、Ⅲでは、がんの部分を含む腸管と、転移の可能性のある範囲のリンパ節を切除します。リンパ節転移があった場合には、手術後に半年間の補助化学療法(追加の抗がん薬治療)を行うのが国際的な標準治療です。

転移があるステージⅣでも、肝臓や肺などに転移したがんが手術で取り切れるならば、積極的に切除手術をします。手術で取り切れない場合には化学療法や放射線療法が行われます。

■大腸がんの標準的な治療方針

Q8 内視鏡治療とはどういうもの?

肛門から挿入した内視鏡でがんを切り取る治療法です。手術と違って、体に傷がつきませんし、痛みもありません。日帰りや2~3日の短期入院で可能です。内視鏡治療には、茎のある形のがんを切除する「ポリペクトミー」、平たい形のがんを切除する「内視鏡的粘膜切除術(EMR)」、「内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)」の3つがあります。ESDは新しい内視鏡治療の技術で2012年に保険適用になりましたが、高い技術が必要なため、現在は一部の専門施設でのみ行われています。

Q9 大腸がんと大腸ポリープの違いは?

定義の上では、粘膜が盛り上がっているものをすべて「ポリープ」と呼びます。その中に良性のポリープと悪性のポリープ(がん)があるわけです。良性のポリープの中には、がん化しないものと、がん化するものがあります。後者の代表的なものが腺腫で、大きくなる過程で遺伝子変異が加わり、がん化すると考えられています。腺腫を経ずにいきなりがんになる経路もあります。

Q10 手術はどのように行われる?

大腸がんの手術の基本は、腸管の切除とリンパ節の郭清です。がんのある腸管部分を、安全域をとって切除するとともに、近くのリンパ節にも転移している可能性があるので、リンパ節を含む腸間膜を扇形に切り取ります。���のあとに、腸管と腸管をつなぎ合わせて(吻合)、便の通り道を作り直します。

手術には開腹手術と腹腔鏡下手術があります。お腹の中で行うことは同じですが、腹腔鏡下手術ではお腹に穴を開けて手術器具を入れるので、開腹手術に比べて傷が小さいため、痛みが少なく、回復も早いというメリットがあります。一方で高い技術が必要で、手術時間も長い傾向があります。

直腸がんの手術は、肛門を残す手術と残さない手術の大きく2つに分かれます。何よりもがんを取り切ることが優先されますが、術後の仕事や生活スタイルにも影響することなので、主治医とよく話し合うことが大切です。

■大腸がんの手術の基本

Q11 転移・再発しやすい部位は? 転移・再発がんの治療法は?

大腸がんが一番転移・再発しやすい臓器は肝臓、次いで肺です。脳や骨などに起こることもあります。

転移・再発の場合、手術で取り切れる場合には、積極的に手術を行います。切除が不可能な場合は化学療法を中心とした治療になります。患者さんの全身状態でそれも難しい場合は対症療法になります。化学療法は、2~3種類の抗がん薬の組合せに、分子標的薬を併用する治療法が一般的です。

大腸がんの化学療法は飛躍的に進歩しており、がんを小さくして手術で取れるようになるケースもあります。完全に治すことができない場合でも、元気に生活できる期間を伸ばすことが期待できます。

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