がんと診断されたら栄養療法を治療と一緒に開始すると効果的 進行・再発大腸がんでも生存期間の延長が期待できる栄養療法とは
驚くほど簡単な栄養療法
では患者の栄養状態をmGPSで分類し、栄養療法を計画的に行ないたい場合、実際にどんな方法が考えられるのだろうか。
内田さんによると、驚くほど簡便な栄養療法がすでに普及しつつあるという。
それはオメガ3系脂肪酸(オメガ3)を大量に含有する薬剤を投与する方法だ。α-リノレン酸、EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)があり、医療施設によっては健康食品を用いるところもあるそうだ。α-リノレン酸はアマニ油、ヒマシ油などに、EPA・DHAはイワシなどの青魚に多く含まれている。サプリメントの種類も多い。
「オメガ3系脂肪酸は強力な抗酸化物質で、炎症を鎮める作用があります。これを服用あるいは摂取することにより、体内で亢進している炎症反応を鎮め、悪液質を緩和し、その結果として低栄養状態の改善を目指します。我々は保険適用になっている薬剤をまず第1の選択肢としていますが、ご希望によりラコールやフレイルなどの食品を使います」
内田さんはそれにプラスして漢方の人参養栄湯(にんじんようえいとう)を処方することもある。また理学療法士と協力して積極的な運動を勧めるようにしている。悪液質で低栄養になってげっそりやせ細ったサルコペニア(筋肉量の低下)の改善が期待できるという。
「がんの栄養状態の評価に基づいた栄養療法はまだ確立されていませんが、研究の蓄積によって、すべてのがん種ごとに、個々の患者に応じた栄養療法がいずれ確立されるはずです。私たちは化学療法を実施する進行・再発大腸がんの患者さんにおいて、栄養療法の意義を検討しましたが、それから言えることはどの患者さんもなるべく早く、できればがんの診断が下ったときから栄養療法を開始するほうがよい、という感触を持っています」
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