副作用の管理が重要。化学療法は「日常生活を取り戻すためのもの」だから 高齢者の大腸がん化学療法はどのように行われるの?
どのように薬剤が選ばれるか
① | FOLFOX(5-FU+ロイコボリン(*)+エルプラット)+アバスチン |
② | XELOX(ゼローダ+エルプラット)+アバスチン |
③ | FOLFIRI(5-FU+ロイコボリン+カンプト/トポテシン)+アバスチン |
④ | FOLFOX+アービタックスまたはベクティビックス |
⑤ | FOLFIRI+アービタックスまたはベクティビックス |
⑥ | 5-FU+ロイコボリン+アバスチン |
★ | ロイコボリンは抗がん剤の働きを良くする助剤。3剤併用療法が難しい患者さんには、⑥の治療を行ってみて、効果がありその後の体調がよかったら、もう1剤多い①~⑤の治療法にチャレンジする |
「79歳までの元気な患者さんは、高齢者ではない若い患者さんと同じ、FOLFOX(5-FU+ロイコボリン+エルプラット)+アバスチンか、FOLFIRI(5-FU+ロイコボリン+カンプト/トポテシン)+アバスチンが第1選択です。臓器疾患のある高齢者や80歳以上の方には、5-FU+ロイコボリン+アバスチンの2剤や、ゼローダ単独の治療を勧めます」
FOLFOXやFOLFIRIは、高齢者の化学療法でも第1選択としてよく使われるが、これには理由がある。
「FOLFOXに含まれるエルプラット、FOLFIRIに含まれるカンプトまたはトポテシンについては、70歳未満と70歳以上の患者さんをを比べた研究で、70歳以上でも治療に加えると、『70歳未満の方と同じようにがん抑制効果の上乗せ効果がある』という海外の報告があるのです」
ただし、副作用は70歳以上の方で血液毒性や消化器毒性が増すと報告されている。
加齢で腎臓や肝臓の機能が衰えた高齢者に、若い人より副作用が強めに出る可能性があることには気をつけなければならないが、「70歳以上でも有効性が増すというエビデンスがあるので、高齢者でも効果を第一にした治療が行われているのです」
*ロイコボリン=一般名ホリナートカルシウム
抗がん剤治療は「日常生活を維持していくために行う」

高齢の患者さんには副作用を怖がって、「入院して治療を受けたい」という人もいる。
だが、「入院はお勧めしませ ん」と山﨑さん。
「副作用は、抗がん剤投与の1週間後や、2、3回目の投与の後に出るかもしれず、数日の入院ではわかりません。それに病院のベッドからときどき家に帰るというような生活は、治療の趣旨に合わないのです。化学療法は、病院や自宅で患者さんがベッドで寝ている時間を増やすための治療ではありません。その目的は、患者さんの日常生活を可能な限り維持していくこと。自宅での生活を維持し、仕事でも散歩でも旅行でもいい、好きなことをする時間をなるべく長く持っていただくために、行うのです。それが治療の目的なのです」
だから、QOLが顕著に悪くなる場合、山﨑さんは患者さんに、抗がん剤治療を「やめましょう」と言っている。
身動きもせずつらさに耐える状態の患者さんをみて、治療をこれ以上続けるべきでないと判断したら、理由を伝え、中止を勧める。
ただその場合も、他の選択肢となる治療の情報はすべて患者さんに伝える。その上で、患者さんに最終判断をしてもらう。
ただ、中にはそれでも化学療法を続けたいと、病院を移る患者さんもいるのだそうだ。
副作用は我慢しないで相談を
「化学療法は絶対に受けるべき、受けたら続けるべき、ではありません」と山﨑さん。
しかし1度始めたら続けなければいけないと思いこむ患者さんは多く、つらい症状も黙って我慢しがちだ。
「我慢するのがいい患者」ではない。この誤解が「化学療法がいやで病院に行かない」患者さんをつくる。
「治療が合わなかったらすぐ言ってください。我慢はせずに相談してください。相談さえしてくれれば、抗がん剤の量も減らせるし、副作用に対処する薬も増やせます。つらくて『薬の量を減らしても化学療法はいやだ』と思ったら、『やっぱりやめたい』でもいいのです。副作用だけが強い場合には、当然化学療法をやめるという選択もあります。これは、心に留めておいていただきたいと思います」
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