再発してもあきらめる必要はない。次々に出現する新しい抗がん剤治療の手 再発大腸がんの最新化学療法

監修:大津敦 国立がん研究センター東病院消化器内科部長
取材・文:菊池憲一
発行:2006年6月
更新:2014年1月

腫瘍に変化がないときは休薬する法

FOLFOX 4によって、数パーセントほどは腫瘍が消えるという。腫瘍が消えた状態が2~3カ月続いたらいったん治療をやめることもある。

また、FOLFOX 4で腫瘍を小さくさせてから手術を行うこともある。

「FOLFOX 4で腫瘍を縮小させて、手術が可能となるのは全体の10パーセントほどです。肝転移だけなら20~30パーセントは手術ができるようになるとの報告もあります」(大津さん)

副作用への対応も大切だ。個人差はあるが、FOLFOX 4を始めるとすぐにしびれなどの副作用が現われる。いったん消えても、治療を継続しているうちに、その副作用が強くなることもある。そこで、腫瘍の大きさが変わらない状態のときには、しびれの原因となるエルプラットだけ一時的に休んで5-FUとアイソボリンを併用し、腫瘍が悪化してきたらエルプラットを再び加えるという治療も行われ始めた。「副作用を軽くできて、その治療効果は変わらないという報告があります」と大津さん。

ただし、FOLFOX 4は基本的には継続して行う。

FOLFOX 6は、FOLFOX 4の1日目だけの簡便な治療法だ。2日目の5-FUの急速静注の代わりに持続点滴での5-FU投与量が多くなる。外来通院が1日だけとなり、患者の負担が軽くなる。

[FOLFOX 4の副作用発現率]

毒性 グレード1 グレード2 グレード3 グレード4
No. No. No. No.
白血球数 16 52% 9 29% 2 6% 0 0%
好中球数 8 26% 7 23% 5 16% 0 0%
血小板数 11 35% 7 23% 0 0% 0 0%
悪心 16 52% 5 16% 1 3% 0 0%
嘔吐 6 19% 4 13% 1 3% 0 0%
下痢 7 23% 1 3% 1 3% 0 0%
神経毒性 22 71% 3 10% 0 0% 0 0%

注目される欧米での大規模比較試験

FOLFOX 4または6の治療が効かなくなったらFOLFIRIにチェンジする。エルプラットの代わりにカンプト(またはトポテシン)150~180ミリグラム(同)を用いる治療法だ。「FOLFOXとFOLFIRIの組み合わせ、交代療法によって、2年近い生存期間中央値が報告されています」(大津さん)

第3選択の化学療法として日本で保険適用となっているのは、UFT(一般名テガフール・ウラシル=経口剤)とロイコボリン(一般名ホリナートカルシウム=経口剤)の併用療法、TS-1(一般名テガフール・ギメラシル・オテラシル=経口剤)単独療法の2つだが、残念ながら、この第3選択にはあまり大きな期待は持てないようだ。

「UFTもTS-1も5-FUと同じ系列の抗がん剤だけに、5-FUが効かなくなった後では、その治療効果はあまり期待できないです」と大津さんは言う。

海外ではゼローダ(一般名カペシタビン=経口剤)が広く使われている。体内に入ってから肝臓などで代謝されて5-FUに変わるように工夫された薬剤で、その作用はTS-1とよく似ている。また、その治療効果もTS-1単独療法とほぼ同じ。日本人の場合、TS-1のほうが下痢などの副作用の頻度が少ないため、保険適用になっているようだ。

現在、ゼローダは、エルプラット(前出)と併用したXELOX(ゼロックス)療法で注目されている。「欧米ではFOLFOX 4とXELOX、それぞれに後述する分子標的治療薬のアバスチン(一般名べバシズマブ)を加えた4つのグループによる大規模な比較試験が進行中です。今年の暮れ頃に、その臨床試験の成績が発表されると思います。非常に注目しています。今後の再発大腸がんの化学療法の方向性を変える可能性もあります」と大津さん。

FOLFIRIの投与方法]
図:FOLFIRIの投与方法

[FOLFIRIの副作用発現率]

毒性 グレード1 グレード2 グレード3 グレード4
No. No. No. No.
白血球数 7 40% 4 35% 10 15% 1 1%
好中球数 19 8% 12 18% 2 32% 3%
血小板数 6 9% 0 0% 0 0% 0 0%
食欲不振 25 37% 0 9% 4 6% 0 0%
悪心 8 41% 19 8% 3 4% 0 0%
嘔吐 9 13% 9 13% 7 10% 0 0%
下痢 15 2% 8 12% 5 7% 0 0%


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