これだけは知っておきたい・大腸がん編 肛門は90%温存できる。が、確実な切除が肝要
結腸がんでは術後の療法と再発後の治療について聞く
一方、結腸がんの中でもリンパ節転移が認められた場合は、医師に確認したほうがいい事柄があります。術後の補助療法としてどんな治療が受けられるかということと、肝臓に転移した場合、その病院でどんな治療が受けられるかということです。結腸がんでリンパ節転移がある場合、あとで肝臓に転移する確率がわりと高いのです。
肝臓に転移した場合でも、まだ切除(外科療法)が第1選択であり、実際に切除が可能なケースが多いのですが、これも病院による差はかなり大きいと思います。その施設における「その後」について確認しておくことは、やはり大事だと思います。
けれども、転移がなく、「根治手術です」と言われたら、直腸がんにしても結腸がんにしても、その後のことをあまり心配せず、通常の生活に戻られるといいでしょう。再発・転移していないことを確認するために、定期的な検査だけは欠かさないでほしいのですが、もし再発が見つかった場合でも、前記のように手術が可能なケースは増えていますし、化学療法の種類も増えているので、できることはたくさんあります。
大腸がんの場合、少し離れたリンパ節への転移が認められる3b期の患者さんに対し、何もしなくても生存率は50パーセントに達しています。3b期であっても、必ずしも悲観する必要はないのです。今後は、「補助療法」でなく「治療」としての化学療法も増えてくることでしょう。それくらい、治る可能性の高いがんなのですから、治療には積極的に取り組んでほしいと思います。
油断は禁物だが、緊急事態でもあわてないこと
ただ、「治るがん」と聞くと、油断する人も出てくるでしょうから、あえて一言。大腸がんはほかのがんに比べて進行が遅いというイメージがありますが、すべてのがんの進行がゆっくりしているわけではありません。思いがけなく、足の速いがんもあります。1年前には何でもなかったのに、1年後には相当ひどいがんだったというケースも少なくありません。検診で引っかかったり、セカンドオピニオンを求めたりするときはあまり時間をかけず、猶予期間はせいぜい2週間と考えてください。
また、そうした足の速いがんだったり、症状に気づかなかっ���ケースでは、腸閉塞で緊急入院してがんに気づくこともあります。そんなときは選択も何もなく、がんも切るしかないとお考えになると思います。が、実は「納得してがん治療を受ける方法」はあるのです。がんの部位を切除しないで一時的に人工肛門をつけてもらうのです。
人工肛門というと「1度つけたら一生」というイメージがあるようですが、実際にはほとんどのケースで自然肛門に戻せます。ですから、腸閉塞という一刻も争う症状のときは、とにかく人工肛門によって安全を確保し、同時に、納得の行くがん治療への可能性を残すことを考えてください。
最初にお話ししたように、下部直腸がんでは納得できる病院・医師を選ぶことが大切ですから、「がんも一緒に切りました」という成り行きのほうが心配です。
その意味では、人工肛門になることをおそれず、一時的な人工肛門をうまく利用して、ぜひ納得の行く治療を受けてほしいと思います。
診断・治療に関し、医師にぜひ質問したいことがら
診断について
- 私のがんはどんながんですか。名称とできた場所、大きさを教えてください。
- それはどんな性質のがんですか。
- 今はどのくらいの進行度ですか。
- これからどうような検査を受けることになりますか?
- 転移はしていませんか。しているとしたら、どこにどんな転移がありますか。
直腸がんの場合に、病院・医師の姿勢を確認するために(本文参照)
- この病院の直腸がん患者の何%が永久人工肛門になりましたか。
- この病院では直腸がん手術において、自律神経温存手術を実施していますか。
- 側方リンパ節転移があったら、手術のとき、どう対処していますか。
- この病院の直腸がん患者の局所再発率を教えてください。
- この病院では局所再発を減らすための補助療法を行っていますか。
治療について
治療計画のこと
- これから、どんな治療を行うことになりますか。全体のスケジュールを教えてください。
手術を受ける場合
- 手術でがんはとれますか。全部取れますか。それとも、部分しかとれませんか。
- (直腸がん)永久人工肛門をつけることになりますか。避けられますか。
- (直腸がん)避けられない場合、理由をくわしく教えてください。
- 術前、術後に抗がん剤や放射線の治療は必要ですか。
手術を勧められなかった場合
- 手術ができない理由を教えてください。
- どんな治療を行いますか。抗がん剤ですか。放射線ですか。併用ですか。
- 抗がん剤はどんな薬をどのくらいの期間、どんな形で投与されますか。
- どんな副作用がありますか。
- 放射線治療はどのくらいの期間、どのくらいの量(線量)を受けることになりますか。
- どんな副作用がありますか。
治療後について
- 治療が一段落したら、そのあとはどうしたらいいですか。
- 私のような状態では、再発・転移の可能性は高いですか。
- 再発・転移が見つかった場合、この病院で対応してもらえますか。
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