術後補助化学療法:病期Ⅱ・Ⅲで重要な術後の補助化学療法。効果や副作用を知って6カ月の治療完遂へ 大腸がん手術後の再発を予防するベストな治療法を選ぼう

監修●金澤旭宣 北野病院消化器センター消化器外科副部長
取材・文●柄川昭彦
発行:2013年6月
更新:2019年10月

病期Ⅱの一部は病期Ⅲと同様に治療

■図5 病期Ⅱのハイリスク群への効果(de Gramont et al., ASCO 2005)

FOLFOX療法とXELOX療法は効果は優れているが、5-FU+ロイコボリン療法に比べると、2療法に共通して併用する薬剤エルプラットによる末梢神経障害などの副作用が加わる。そのため、どのような患者さんが治療対象になるのかを、明確にしておく必要がある。

たとえば、5-FU+ロイコボリン療法とFOLFOX療法を比較した臨床試験の結果を見ると、病期Ⅲ(リンパ節転移はあるが遠隔転移はない)の患者さんでは、FOLFOX療法のほうが高い再発予防効果を示した。ところが、病期Ⅱ(腸壁のある程度深くまで浸潤しているがリンパ節転移も遠隔転移もない)の患者さんでは、どちらの治療でも差がないことがわかった。

そうすると、病期Ⅱなら5-FU+ロイコボリン療法で十分、ということになる。しかし、結果を細かく見ていくと、そうではなかった。

■図6 術後補助化学療法の対象病期Ⅲと、再発リスクの高い病期Ⅱの患者さんが、術後補助化学療法の対象となる

「病期Ⅱの患者さんの中から、再発を起こしやすいハイリスクの患者さんを選び出し、その人たちを対象に解析したデータがあるのです。すると、5-FU+ロイコボリン療法より、FOLFOX療法のほうが、治療後3年の間に再発する人を5.4%減らせる(図5)。つまり、再発予防効果が高い、という結果でした」

この結果からいえるのは、「たとえ病期Ⅱでも、ハイリスクの患者さんはFOLFOX療法やXELOX療法を行ったほうがよい」ということだ(図6)。

ここでいうハイリスク群とは、①腫瘍がほかの臓器や組織に浸潤している②腫瘍で腸閉塞が起きている③腫瘍で消化管に孔が空いている④がん細胞の悪性度が高い⑤腫瘍が血管に入り込んでいる⑥検索リンパ節個数10個未満――という6項目のうち1つ以上に該当する患者さんを指す。

実際、病期Ⅱのハイリスク群は、リンパ節転移がある病期Ⅲの一部の���ループよりも予後が悪いというデータもある。術後補助化学療法は再発予防として必須だ。

大腸がんの術後補助科学療法についてのMOSAIC試験のサブ解析でのカテゴリー

XELOX療法なら通院は3週に1回

病期Ⅲや病期Ⅱのハイリスク群の場合、FOLFOX療法とXELOX療法のどちらを選択すべきか。効果は同等なので、利便性や副作用が選択のポイントになる。まず、用いる薬剤の投与法の違いはどうか(図7、図8)。

■図7 代表的な術後補助化学療法の投与スケジュール
■図8 代表的な術後補助化学療法のメリット・デメリット

FOLFOX療法 XELOX療法
投与方法 点滴+ポンプを携帯する持続点滴 点滴+飲み薬
通院間隔 2週間ごと 3週間ごと
自己管理 皮下埋め込み型ポートからの抜針 服薬、副作用症状の確認
治療期間 6カ月 6カ月

FOLFOX療法は、ロイコボリン、エルプラットの2時間の点滴に、5-FUの注射、さらに5-FUの46時間の持続静注が加わる。これは、特殊な小型ポンプを携帯し、持続的に静脈内注射を行う。

XELOX療法では、エルプラットの点滴は同じだが、注射薬のロイコボリン、5-FUの代わりに、ゼローダが使われる。ゼローダは飲み薬だ。それがXELOX療法の大きな特徴になっている。

「FOLFOX療法ではポンプを付けて3日間にわたる持続静注を行います。そのため、鎖骨部の皮下にポンプの取り付け口であるポートを入れる手術も必要です。ポートがあると抗がん薬を点滴する際に静脈に注射針を刺す必要はなくなりますが、リスクもあります。ポート内やカテーテル周囲に微小な血の塊ができることがあり、それが感染や血栓の元になる可能性があるためです。

ポンプを身につけていることが気にならないという人もいますが、やはり気にする人が多いですね。寝返りを打つのも怖いというような人もおり、ポンプがあることがストレスになります。

また、持続点滴が終了したあとにはポートから点滴針を自分で抜く必要があります。高齢者などで、この作業が負担になる人、家族の介護が得られない人もいます。このような患者さんたちには、XELOX療法のほうが向いているでしょう」

XELOX療法では、飲み薬のゼローダを1サイクル(3週間)中、2週間にわたって1日に2回服用する。

FOLFOX療法とXELOX療法のもう1つの大きな違いは、通院回数だ。FOLFOX療法は2週に1回だが、XELOX療法は3週に1回でよい。

「術後補助化学療法を受けている患者さんは、普通の日常生活を送っている方がほとんどです。仕事をしている方もたくさんいます。そういう患者さんたちにとって、通院回数が2週に1回か3週に1回かは、大きな問題でしょう。6カ月の治療期間中の合計の通院回数はかなり違ってきます。なるべく仕事を休みたくないという理由で、XELOX療法を選択する人もいます」

利便性に関しては、XELOX療法のほうがメリットが高そうだ。ただし、XELOX療法を受けるためには、自分で服薬をきちんと管理できることが条件となる。

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