再発しても根治を目指せる 食道がんに対する光線力学的療法 光線力学的療法の存在を知って、治療に臨もう!

監修●矢野友規 国立がん研究センター東病院消化管内視鏡科医長
取材・文●伊波達也
発行:2016年10月
更新:2020年2月


新しい薬剤が使えるようになり より患者の負担の少ない光線力学的療法へ

「レザフィリンと、新しいレーザー装置であるPDレーザを使っての治療では、従来の治療と比べて、患者さんへの負担はかなり軽減されます。例えば、従来の治療では、フォトフリンを静注してからレーザー照射をするまで48時間から72時間必要だったのに対し、レザフィリンの場合、静注後、4時間から6時間後にレーザー照射することができます。そして、患者さんにとって負担が大きかった治療後の遮光期間も2週間程度で済み、日光過敏症も10%未満になった点は、大きな違いといって良いでしょう」(表4)

表4 新しい光線力学的療法(従来の治療法との主な違い)

矢野さんたちは、京都大学医学部附属病院がん薬物治療科教授の武藤学さんたちとともに、12年より医師主導治験を実施。全国7施設で行われた治験では、がんが消失する完全奏効(CR)率が88.5%と、極めて高い結果となった。安全性についても、大きな合併症はなく、日光過敏症は1例も認められなかったという。

そして、その結果をもとに企業が承認申請し、15年にレザフィリンは食道がんに対しても適応追加となり、臨床現場でも保険診療で行えるようになった。現在は、治療を実施した患者の長期経過を追跡中だ(図5)。

図5 光線力学的療法の効果

「長期的に見てみないとわかりませんが、治験ではフォトフリンに比べても有効性は高いことが確認されました。たとえがんが再発したとしても、光線力学的療法を行うことで、根治する可能性があると言えます」

治療後2週間は遮光制限して 日光過敏症を防ぐ

光線力学的療法による具体的な治療の流れはこうだ(図6)。

図6 レザフィリンによる治療の大まかな流れ

前日に入院。そして、翌朝、レザフィリンを静注する。静注から4~6時間後に、内視鏡を見ながら患部にレーザーを照射する。もしレーザー照射が不十分と判断した場合には、翌日も追加照射を実施。そして治療後、基本的に3日間は絶食し、補液による栄養管理を行うことになる。

「レーザー照射することで、食道に炎症を引き起こしますので、大体3日間ほど食道痛があります。その間は食事を摂ることはできません。強い炎症がある時期に食事をすることで、患部が感染し、食道穿孔(しょくどうせんこう)を引き起こしてしまう可能性があるためです」

通常は、治療後2週間ほど入院。入院には通常の病室を使用するが、室内は少し暗めの500ルクス以下の明るさに保ちながら遮光制限し、日光過敏症の合併症に注意する。

「その間は、日中の外出は禁止で、長袖、長ズボンなどを着用してもらい、日光に当たるのを避けてもらいます。また、治療後3日間は、院内の移動の際にはサングラスをかけてもらっています。個人差もありますが、大体2週間の遮光期間が経てば、その後は夏なら帽子を被っていただくとか、長袖を着ていただく程度で大丈夫です」

光線力学的療法の存在を知って 治療に臨んで欲しい

今後について矢野さんは、「光線力学的療法という治療法があることをまずは知っていただきたい」と呼びかける。

「患者さんには、再発しても光線力学的療法という治療法があることを知ってもらいたいと思っています。適応が限られており、どんな患者さんでも行える治療法ではありませんが、光線力学的療法が使える可能性について、ぜひ主治医の先生に相談してもらいたいと思います。

また、再発したがんの場合、進行が早いため、見つかったときは光線力学的療法の適応だったのに、2~3カ月でがんが奥深くまで浸潤してしまい、適応から外れて治療できなくなってしまうケースもあります。再発を見つけた段階で、できるだけ早く専門の施設を紹介してもらい、光線力学的療法を検討するべきだと思います。これは、患者さんとともに、主治医の先生方にも十分に留意していただきたいお願いです」

たとえ再発しても、光線力学的療法という根治の可能性を見込める方法があることをしっかり認識して、治療に臨むことが重要だ。

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