「効果の高い薬」を長く続けたい 進行腎がんの分子標的治療 リスクの高低や未治療かどうかetc.、治療薬はこう選択する!
再燃した場合にはインライタが使える
がんが再燃した場合は、以前にどのような治療を行ったかによって、薬を使い分けることになる。
◆免疫療法薬を使用した場合
スーテント、ネクサバール、インライタが推奨されている。
「どれもチロシンキナーゼ阻害薬です。インライタは新しい薬で、現在のところ、再燃がんにだけ使用が認められています。今後の臨床試験の結果によっては、1次治療でも使えるようになる可能性があります」
◆チロシンキナーゼ阻害薬を使用した場合
インライタ、または、mTOR阻害薬のアフィニトールが推奨されている。
「どちらがいいか、臨床試験のデータはありませんが、インライタのほうが治療効果は高いのではないかと言われています。アフィニトールは効果も副作用もマイルドです」
◆mTOR阻害薬を使用した場合
推奨される治療薬はなく、主治医と相談して効果や副作用を考慮のうえ使用する薬剤を決めることになる。新規薬剤などの臨床試験に参加するという手もある。
分子標的薬の副作用はタイプによって異なる
分子標的薬の副作用は、薬のタイプによってまったく異なっている。
チロシンキナーゼ阻害薬で問題となるのは、高血圧、手足症候群(手足の皮膚がガサガサになったり赤くなって痛みが出たりする)、下痢、血小板減少などだ。
mTOR阻害薬では、口内炎、高血糖、高脂血症、間質性肺炎などが現れる。
「間質性肺炎は命にかかわることもある重篤な疾患ですが、mTOR阻害薬の副作用で現れる間質性肺炎は、重症にはならないことが多いです。私たちの経験では、薬を中止し、ステロイド薬で2週間ほど治療すると治ることが多いです」
薬物療法は、これらの副作用に注意し、患者さんのQOL(生活の質)をなるべく低下させないようにしながら進められる。ただ、副作用が軽ければよいわけではなく、1次治療で効果の高い薬を使用することも大切である。
「東京女子医科大学のデータでは、1次治療後に2次治療に進めなかった人が、薬物療法を受けた人の約6割を占めています。2次治療に進めた人が約4割。3次治療まで行けたのは7%に過ぎません。患者さんの年齢や全身状態などにもよりますが、可能なら、最初に効果の高い治療をしっかり行うことが大切です」
具体的には、1次治療にスーテント、2次治療にインライタ、3次治療にアフィニトール、といった治療が最も��く行われているという(図4、図5)。


投与スケジュールを変えて長く使う方法
スーテントはチロシンキナーゼ阻害薬特有の副作用が比較的強く出るが、治療効果が高い。できることなら、この薬を1次治療に選択し、なるべく長く使い続けることが望ましい。しかし、副作用のために、長く使うのが難しい場合も多く、この点が課題となっている。
「スーテントの用量は体の大きな欧米人も日本人も50㎎で、4週間投薬・2週間休薬のスケジュールが標準とされています。しかし、日本人の場合、この投与量とスケジュールで治療すると、ほとんどの人が副作用で治療を断念することになってしまうのです。そこで、長く治療を続けるために、65歳以上の人は投与量を37・5㎎に減量してみました。また、投与スケジュールを2週投薬・1週休薬に変え、どのような結果が出るかを調べてみたのです」
その結果、副作用は、手足症候群も血小板減少症も軽度ですみ、QOLを維持したまま治療を継続できた(図6)。

また、治療成績も、標準スケジュールで治療した場合と差がなかった。投与量に関しても、50㎎と37・5㎎で、治療成績に差がなかったのである。
「現時点で最も治療効果が高いと考えられている薬がスーテントです。いかに長く薬を継続できるかが治療の要です。この減量という方法のように、治療効果を低下させずに、副作用を軽減できる工夫は、非常に意味があることだと思います」
スーテントをうまく使いこなすことが、薬物療法の成果に大きくかかわっている。注目すべき使用法と言えるだろう。
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