手術、肝動脈塞栓術、化学療法……、ベストな治療を選びたい! あきらめないで闘い続ける再発肝がんの治療
局所穿刺療法はラジオ波焼灼療法が主流

局所穿刺療法は皮膚の表面から長い針を刺してがんに直接ダメージを与える方法だ。「ラジオ波焼灼療法」「マイクロ波凝固療法」「エタノール注入療法」などがある。中心となるのは、ラジオ波焼灼療法。再発肝がんにおいても、よく行われる治療法である。
この治療法では、超音波でがんの位置を確認して電極つきの針を差し込み、針先から照射させるラジオ波という熱でがんを焼き殺す(図6)。がんの数が3個以下、大きさが3㎝以内で肝機能が比較的保たれている症例が適応になる。
治療は数日の入院で可能であり、繰り返し実施できるのも長所だが、がんが肝表面や腸管、あるいは肝内主要脈管に近接している場合には、行えないこともある。
「手術とラジオ波の両方が適応の場合、どちらを選べばいいのかについては、現在、初発例についての臨床試験が行われています」
肝動脈塞栓術は代表的な治療法の1つ

[図8 切除不能肝がんに対する肝動脈化学塞栓術の効果]
「肝動脈に栓をしてがん細胞が栄養を取り込むルートを遮断し、死滅に追い込むのが肝動脈塞栓術です」
適応になるのは切除不能でラジオ波など局所穿刺療法もできない場合。従来から広く普及しており、現状では再発症例の6~7割近くで選択されているという。
足の付け根の太い��管からカテーテルという細い管を腫瘍の直前まで入れていき、塞栓物質(ゼラチンスポンジ)を注入し、動脈を塞栓するという方法である(図7)。最近では、油性造影剤に抗がん剤を混ぜて行う肝動脈化学塞栓術という方法が一般的だ。
「肝動脈化学塞栓術は、3㎝以上の大きながんや個数が多い症例でも実施できます」(図8)
肝動注化学療法と全身化学療法
肝機能がある程度悪化しており、前述の手術やラジオ波焼灼療法、肝動脈化学塞栓術などが行えない場合などに行われるのが、肝動注化学療法という治療だ。
肝動注化学療法は、肝動脈にカテーテルを入れて直接抗がん剤を注入する薬物療法。使う薬剤は5-FU(*)やアイエーコール(*)だ。高濃度・高用量の抗がん剤を局所に投与できるメリットがある。
「肝動脈塞栓術は、抗がん剤を入れた後に肝動脈にふたをしたような状態にするので、がんの周りの正常細胞も死んでしまいます。肝動注化学療法は、そのような治療すら危険が伴うような、より肝機能が悪い患者さんに対して行う治療です。肝動注化学療法は、効果を証明するデータに乏しいのですが、劇的に効く患者さんの例も報告されています。切除不能の巨大ながんがアイエーコールの肝動注化学療法によって縮小し、手術にもっていくことができたという症例も経験しています」
*5-FU=一般名フルオロウラシル
*アイエーコール=一般名シスプラチン
新たに選択肢になった抗がん剤ネクサバール
また、有効な抗がん剤がなかった肝がんで、初めて明らかな延命効果が示されたのが、ネクサバール(*)である。2009年に切除不能の再発肝がん、肺・骨などの肝臓以外に転移がある場合、また肝動脈塞栓術が無効になった患者さんに対して適応となった。
「肺や骨などの肝外転移がある場合には、ネクサバールを使用します。また、同じ部位で肝動脈化学塞栓術を2回実施して、効き目がない場合にもネクサバールの使用を考慮します。肝がん治療は、再発を早期に発見できれば、それだけ選択肢が豊富にある。外科だけでなく放射線科や消化器内科などとも連携しながら、治療を進めることが望ましい。患者さんにはそのような集学的治療が行える施設での治療をおすすめします」
こう野見さんは訴える。
*ネクサバール=一般名ソラフェニブ
同じカテゴリーの最新記事
- 免疫チェックポイント阻害薬の2剤併用療法が登場 肝細胞がんの最新動向と薬物療法最前線
- 肝がんだけでなく肺・腎臓・骨のがんも保険治療できる 体への負担が少なく抗腫瘍効果が高いラジオ波焼灼術
- 高齢の肝細胞がん患者さんに朗報! 陽子線治療の有効性が示された
- 手術やラジオ波治療ができなくてもあきらめない 難治性の肝細胞がんに対するナノナイフ治療(IRE)
- 高い治療効果が期待できる 切除不能・進行肝細胞がんの最新化学療法
- ラジオ波の利点はがんをくり抜き、何度でも 再発進行肝細胞がんと転移性肝がんの治療にもラジオ波焼灼療法が有望
- 治療選択の拡がりが期待される 肝細胞がんの1次治療に、約9年ぶりに新薬登場!
- 進行肝がんに対するネクサバールのマネジメント
- 手術ができれば根治も!肝内胆管がんの治療法