肺がん手術のセルフケア 術後のつらさを軽減する方法がある! 手術が決まったらすぐ始めよう 術前の呼吸訓練で合併症を防ぎ、より早い回復を
傷があってもシャワーOK。入院中のお風呂はどうか?

入院中のお風呂はどうか?
「術前はお風呂に入ってもらいますが、術後は、下半身については1日目からシャワーができます。上半身は硬膜外カテーテルが入っているので、それが抜けたあと全身のシャワーが可能になります」
洗髪は洗髪台でできる。
シャワーを浴びても傷口は大丈夫なのか?
「開胸創(皮膚切開部)は、現在ほとんどが埋没法といって、吸収糸(溶ける糸)を使って縫う方法が用いられ、抜糸がいらなくなっています(図9)。胸腔ドレーンを抜いたあとの創はナイロン糸で縫われているため抜糸が必要ですが、それでもお風呂やシャワーで洗っても心配ありません。怖いと感じる方には防水の絆創膏を張ったりしますが、本当は必要ないんです」
痛みを抑える対処法
入院中、やはり気になるのは手術後の痛みだ。
「胸腔ドレーンが入っている間は、ドレーンの刺激によって痛みが生じるので、入っている側の腕はあまり大きく動かさないほうがいいと思います。あとは痛みを我慢せず、痛み止めの薬をうまく活用するといいですね」
また、痛くて痰が出しにくいときは、傷口の部分に服の上から枕やクッションなどを当てて押さえて咳払いをするといい。こうすると、圧迫によって痛みを和らげながら行える。
夜中に痛みを我慢できないときは、「ナースコールを押して看護師を呼んでください」と山本さん。
「『遅い時間に悪い』と遠慮する人もいるようですが、コールに応えるのが看護師の仕事。たとえ痛み止めの薬を飲んでいても、効果が持続する時間は限られているのだから、薬の効果がなくなって痛くなったら遠慮しないで呼んでほしい」
このように、山本さんは話す。
退院後の日常生活は?

退院は原則として、術後8日目。退院後はどのような生活を送ったらいいのか?
「手術がゴールではないので、家に帰ってからは、元の普通の生活に戻るための努力をしていただきたいです」
このように山本さんはアドバイスする。
退院してからも痛みやかゆみ、違和感などは残り、退院後の1カ月程度、また長い人では半年以上続くことがある。痛みはとくに冬の寒いときや、無理な姿勢をとったり、急な動きをしたときに強く感じやすい。
いつもより強い痛みを覚えたら、退院後に処方される痛み止めの内服薬を1錠追加して飲むか、痛いところを温かいタオルで温めたり、入浴して体全体を温め血行を促すといい。もちろん、退院時に処方された痛み止めは、痛みがなければ飲む必要はない。
また、「今までに感じたことのないような痛みを覚えたら、とにかく病院に電話してほしい」と伝えている。
呼吸機能の回復には、一定の時間がかかる。
「切除した分の肺機能は元には戻らないため、残された肺機能による生活に慣れることが大事。慣れることによって普通の生活を取り戻していきます。普段から散歩していた人が、『歩いていてそんなに苦しくなくなった』と感じるようになるのは、退院後3カ月ぐらいといわれています。『今日はここまで』『疲れたら休む』というのでかまいません。体を動かすことを継続していただきたいです」
退院後は、「喫煙以外にしてはいけないことはとくにない」と、山本さん。もちろん、激しい運動はよくないが、手術した側の腕や肩を動かす軽い運動は回復に効果的だ(図10)。
化学・放射線治療には良質の栄養を
術後に化学療法や放射線療法を受ける場合、患者さんが気を付けたいこととして山本さんは次の2つを挙げる。1つは「肺炎にならないようにすること」、もう1つは「規則正しい食生活を送ること」だ。
「抗がん薬の副作用に、吐き気がありますが、現在は良い吐き気止めがあるので、我慢をせずに伝えてください。吐き気があるときには、無理に食べようとはせず、症状が落ち着いているときに、しっかりと栄養を摂るようにすることが、副作用や感染症にも対処しやすい体を作ることにつながります。体に必要な栄養素を含んだ良質でバランスのよい食事をとっていただきたいです」
このように、山本さんはアドバイスする。
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