痰を伴わない咳や息切れ、発熱などが出たら、すぐに医師に相談しよう 時には命にかかわる「間質性肺炎」。早期の自覚症状を知っておこう
発症リスクが高い人はその薬剤は使わないように
では、間質性肺炎は予防できるのでしょうか。また、万一罹患した場合は、どのように発見し治療されるのでしょうか。
まず予防については、発症のメカニズムがわからない以上、効果的な予防方法はないとのこと。とはいえ、ハイリスク要因をもつ人は、その薬剤を使わないことが、第1の予防となります。
ハイリスクな人とは、たとえばイレッサの場合、全身状態がよくない人。
「薬害問題のあと、製薬会社が行った市場調査によると、全身状態を示すパフォーマンス・ステータスが2以上の人。つまり、歩行や身の回りのことはできるが、介助の必要なときがあり、軽い労働でもむずかしい、といった身体状態がより悪い人に、発症の頻度が高いとされています」
●全身状態の悪い人 ●過去に間質性肺炎と診断された人 ●肺に線維化など、炎症の素地がある人 ●喫煙歴のある人 |
そのほか、男性、過去に間質性肺炎を患ったことがある、喫煙歴がある、などがハイリスク因子とされています(図4)。
風邪などの感染症が引き金になることもあるので、外出を控えめにする、出かけるときはマスクをするなども、患者さんにできる予防法となります。
軽い息切れも軽視せず医師に必ず相談を
次に、発見と治療。すべての病気と同じく、大切なのは早く発見し、早く治療を行うことですが、早いうちに発見する最善の方法は、痰を伴わない咳や息切れ、時に発熱など、前述した自覚症状に患者さん自身が気づくことです。

「『ちょっと動いただけで息が切れる』など、いつもと違うときは、すぐに主治医に相談します。医師も注意して話を聞いていますが、軽い咳や息切れだと、患者さんが『風邪かもしれない』、『年だから』など、軽く考えてしまうことがあります(図5)。
医師が聴診器で特徴的な音(断続性ラ音)を捉えて診断することもありますが、この音が聞こえるのはかなり症状が進んでから。やはり早く発見するには、患者さん自身が普段から気をつけることです。
また、病状によって横になっている時間が多い人の場合は日常的に体を動かすことが少なく、息切れなどの早期症状に気づきにくいことがあります。そのため、周囲の人の注意が必要となります」
診断は動脈血中の酸素飽和度(ガス交換ができているかどうか)や、レントゲン、CTなどの画像でも行います。もちろん、肺の拡散能(酸素が肺の中に拡散する能力)や肺活量も、呼吸状態を評価する基本的な検査で、診断の目安となります。
どのタイプの間質性肺炎かを正確に判断するには、肺の細胞組織をとって生検を行う必要がありますが、これは必ずしも行われません。患者さんの負担が重いうえに、「特効薬がなく、どんなタイプの間質性肺炎でも、できることはほぼ同じ」だからです。
間質性肺炎を起こした薬は2度と使えないけれども
では、間質性肺炎とわかったら、どのような治療を行うのでしょうか。
「薬剤によって病気が起きているのだから、まず薬剤をやめます。症状が改善しない場合は、少量のステロイドを投与します。症状が重いときは、ステロイド・パルス療法という治療を行います。これは1000ミリグラムのソル・メドロール(*)を3日間投与するという方法です。間質性肺炎の場合、急に重い症状が出る(急性増悪)と生命にかかわるので、積極的に治療を行います」(図6)
症状が落ちついても、1度間質性肺炎を引き起こした薬は、その患者さんには2度と使いません。
「確認のための再投与も、やってはいけないことです」
抗がん剤治療で重篤な副作用が出て投薬が中止される──となると、患者さんは不安や焦あせりを強く感じるのではないでしょうか。
それでも大田さんは言います。
「今は抗がん剤も種類が多く、別な薬でトライすることは可能です。とくに、抗がん剤の効き方は個人差が大きく、劇的に効く人もある。また、あきらめずに何らかの治療を続けているほうが、たとえ生存期間は同じでも、体調よく穏やかに時間を過ごすことができるようになるかと思います。使えない薬剤ができてしまったとしても失望せず、いいと思う治療法を選択し、前向きに治療を続けていただきたいと思います」

*ソル・メドロール=一般名メチルプレドニゾロン
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