転移がなく、腫瘍が3センチ以下なら5年生存率は80パーセントのデータも 体への負担が軽く、繰り返し治療できる肺がんラジオ波治療
ここ2~3年で5年以上の生存者が増加
これまでの経験やデータから、ラジオ波治療は、「がんの大きさが2~3センチまででリンパ節転移がなく、片肺に3個、両肺の場合は合わせて5~6個までがよい適応」と金澤さんは語っています。基本的には、肺野部、つまり肺の末梢にできたがんが対象です。
肺門部にできたがんは、太い血管や心臓に近いので、加温しても血流で冷え、十分温度が上がりません。そのため、再発の危険が大きいのです。たとえば、血管や心臓に接していないがんと接しているがんの再発率を比較すると、その差は歴然としています。「半年ぐらいは同じなのですが、その後血管や心臓に接した肺がんは、再発率が上昇し、10カ月後にはほとんどの人が再発しています」。心臓や血管に接していない肺がんは、再発がほとんど増えないのに、です。

78歳、男性。扁平上皮がん(32ミリ)
透析中で、冠動脈ステント後
遠隔地の病院で単純CTのみで経過観察
転移性の肺がんでは、「転移が肺以外になく、数が少ないほど成績はいいです。化学療法で肺だけにがんが残った人にもラジオ波治療を行っています」と金澤さん。
このようにラジオ波による肺がん治療もだいぶデータが集積され、「現在の焼灼方法ならば十分に長期生存が期待できます。ここ2~3年で5年以上の生存者がどんどん出てきます」という状況です。最近では、他病院から紹介されて来る患者さんも多くなりましたが、それでも専門家からの評価はまだ低いといいます。

10数施設で使用確認試験の調査へ
そこで、現在金澤さんが代表となり「使用確認試験���(厚生労働省)が行われています。肺がんのラジオ波治療を行っている10数施設で、治療による再発率や合併症の出現率などを3年間にわたって調査する予定です。「すでに、ヨーロッパでは2つほどデータが出ていますが、局所制御率は80パーセントぐらいでここと似た結果。外科手術とも極めて近い成績です」と金澤さん。
今のところ、肺がんのラジオ波治療には保険はききませんが、ラジオ波治療は体にメスを入れずに局所麻酔でできる治療法。体へのダメージが少ないので、入院期間も短くてすみます。同じ治療成績ならば、精神的にも肉体的にも患者さんには手術より負担が軽い治療法です。より多くのデータが集積され、1番よい形で臨床に生かされることを望みたいものです。

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