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これだけは知っておきたい!! 肺がんの基礎知識

監修:後藤功一 国立がんセンター東病院呼吸器科医師
取材・文:半沢裕子
発行:2005年6月
更新:2013年4月

治療が一段落したら、何もしないでいいのか

抗がん剤に関してもうひとつ言いたいのは、決まった期間の投与を受けたら、治療としては一段落ということです。

患者さん(家族)は再発の不安と闘っています。ですから、「はい、これで治療は終わりです」と言われると、「もっと続けてほしい」「ほかに何かできることはないか」と考えるのは当然と言えるでしょう。たとえば、イレッサという薬ががんの再発予防に効くと言われた時期がありました。その後、後遺症で亡くなる方が出たため、一時薬の承認が取り消されそうになり、患者団体が抗議を行なったこともありました。今でも、「イレッサが飲みたい」と相談されることは少なくありません。

イレッサ自体は効果的な抗がん剤ですから、武器の少ない肺がんとの闘いにおいて大切な薬です。でも、再発を抑えると証明されてはいませんし、やはり副作用があります。どんな人にも勧められるものではありません。

そもそも、最初の抗がん剤投与がだいたい4コースとされているのも、それで治療効果としては最大と確認されているからです。長く続けても副作用ばかり強くなり、治療効果がさらにあがることはありません。

ですから、どんな段階でも抗がん剤が一段落したら、あきらかな再発が確認されるまで治療行為をしないほうがいいと私は考えています。現在まで再発を抑えることが証明された薬はありません。もちろん、経過観察は必要ですから、定期的に医師にかかることは絶対に必要です。

対症療法も重要な治療法のひとつです

がんの治療にはさまざまな副作用がともないます。まず、手術後には息切れや傷の痛みがあります。抗がん剤による副作用は薬の種類や身体状態によって異なりますが、吐き気、食欲不振、口内炎、全身倦怠感、手足のしびれ、脱毛、それに白血球の減少や貧血、肝機能障害なども起こります。ごくまれに予期しない副作用が出て、命にかかわることもあります。

意外と知られていないのは、放射線の副作用です。肺がんの治療では胸部に続けて放射線を当てるため、一種の火傷が生じ、食道炎、皮膚炎、肺臓炎などが起こることがあります。しかも、放射線の副作用はあとから出ることが少なくないので、治療後の経過観察には注意が必要です。

こうした副作用に対しては、積極的に対症療法を受けることをお勧めします。痛みがあるときは痛みどめ、便秘なら下剤というように、症状を和らげる薬を処方するよう、遠慮なく医師に求めてください。

そもそも、あえて言わせていただけば、根治のむずかしい肺がんの患者さんは、診断を受けた最初から対症療法を活用し、いわゆるQOL(クオリティ・オ��・ライフ)の維持を考えていただきたいのです。

その意味では、4期や「進展期」の患者さん(家族)は、副作用をともなう抗がん剤を開始する時点から平行して痛みやつらい症状を和らげる緩和ケア療法も治療の大きな部分であることをよく認識していただきたいと思います。

いずれにしてもぜひ知っていただきたいのは、緩和ケアは今日たいへん進んでいて、痛みもほかの身体症状もかなりコントロールできるということです。そうした症状を我慢するのは美徳でも何でもなく、不必要なストレスを体に与えるだけと割り切ってください。

新しい効果的な抗がん剤もいくつか承認され、臨床試験の進んでいるものも少なくありません。肺がんにも希望のもてる要素は、少しずつ増えています。

それでも、対症療法を活用し、がんと共存して、できるだけ健康的な普通の生活を送ること。これが肺がんと最も上手につきあう方法ではないかと、私自身は考えています。

診断・治療に関し、医師にぜひ質問したいことがら

●診断について
  • 私のがんはどんながんですか。名称とできた場所、大きさを教えてください。
  • それはどんな性質のがんですか。
  • 今はどのくらいの進行度ですか。
  • 進行の早いがんではありませんか。
  • 転移はしていませんか。しているとしたら、どこにどんな転移が ありますか。
  • 治療を急ぎますか、少し時間がありますか。
●治療について
◇治療計画のこと
  • これから、どんな治療を行なうことになりますか。全体のスケジュールを教えてください。
  • その治療計画が一段落したら、そのあとはどうしたらいいですか。
◇手術を受ける場合
  • 手術でがんはとれますか。
  • がんは全部取れますか。それとも、部分しかとれませんか。
  • 術前、術後に抗がん剤治療は必要ですか。
  • 抗がん剤治療が必要なら、どんな薬をどのくらいの期間、どんな形で投与されますか。
    薬の名称や商品名も教えてください。
  • 抗がん剤にはどんな副作用がありますか。
  • 副作用を減らすために、どんなことをしたらいいですか。
  • 抗がん剤によって期待できる治療効果は、どの程度ですか。
  • 術後、および抗がん剤治療のときに気をつけることは何ですか。
  • 新しく臨床試験が行なわれているような抗がん剤はありませんか。
◇手術を受けない場合
  • 手術ができない理由は何ですか。
  • 手術以外にどんな治療をすることになりますか。
  • 抗がん剤はどんな薬をどのくらいの期間、どんな形で投与されますか。
    薬の名称や商品名も教えてください。
  • 抗がん剤には、どんな副作用がありますか。
  • 副作用を減らすために、どんなことをしたらいいですか。
  • 抗がん剤によって期待できる治療効果は、どの程度ですか。
  • 抗がん剤治療のときに気をつけることは何ですか。
  • 新しく臨床試験が行なわれているような抗がん剤はありませんか。
  • 放射線治療は併用しますか。
  • 放射線治療はどのくらいの期間、どのくらいの線量を受けることになりますか。
  • 放射線治療には、どんな副作用がありますか。
  • 放射線によって別なところにがんができる可能性はないのですか。
  • 放射線の副作用を減らすために、どんなことをしたらいいですか。
◇再発・転移について
  • 再発・転移が見つかったら、そのあとはどんな治療が可能ですか。
  • 治療はいつまで続けることが可能ですか。
  • 痛みや苦しさなどのつらい症状を和らげる方法はありますか。


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