間質性肺疾患の合併に気をつければ、間質性肺炎は防げる 肺がんの分子標的薬はサードラインで使うのが標準的
抗がん剤に比べ副作用は一般的には軽いが、肺障害に注意
副作用の種類 | 発現件数 | 発現率 |
---|---|---|
発疹 | 568 | 17.10% |
肝機能異常 | 369 | 11.11% |
下痢 | 367 | 11.05% |
イレッサが最初に承認されたとき、「夢の薬」と注目を浴びたのは、1つは副作用がそれまでの抗がん剤より軽いとされたためでした。抗がん剤とは副作用の種類が違うので、単純には比べられませんが、全体としてはやはり分子標的薬のほうが、患者さんにとって多少ラクなのではないかと思います。
肺がんの分子標的薬(イレッサ、タルセバ)の副作用として代表的なのは、まず、ニキビ様の吹き出物などの皮疹です。これも強く出て、つらい思いをする患者さんは少なくありませんが、皮膚科に相談して外用薬などを処方してもらうなど、できることはあります。
また、検査の数値が悪くなり、休薬することがあるのは肝障害。この場合は、逆に自覚症状がないときもあるので、注意が必要です。そのほか、下痢などが強めに出ることがあります。
しかし、最も気をつけなければいけないのは、先にも書いた間質性肺炎です。
正直なところ、通常の抗がん剤でも副作用で亡くなる方は1~2パーセントあり、間質性肺炎が起きることもあります。イレッサによる間質性肺炎は承認当時よりずっと減り、現在、このために亡くなる人はやはり2パーセントくらい。
つまり、副作用で命を落とす確率は、ほかの抗がん剤の場合と変わらないのですが、間質性肺炎は起きると半数近くは助からないので、患者さんの様子には十分気をつけることが必要です。
何より、もともと間質性肺疾患をもっている人は、間質性肺炎を起こす確率が高いので、そうした患者さんにはイレッサを使わないことです。実際に、医療現場で患者さんの既往症などに気をつけるようになって、イレッサによる間質性肺炎はかなり少なくなりました。
そのほか、男性のほうが確率が高いとか、タバコを吸っていた人は危険が高いといったこともいわれます。が、間質性肺疾患を合併している患者さんに気をつけることで、間質性肺炎はかなり防げるわけですから、過度に慎重にならず、医師の指示にしたがって服用していただければと思います。

そして、3~4週間使って何らかの効果が見られないときは、すぐに中止するべきだろうと思います。
というのは、先にも書きましたが、イレッサが効く場合、投薬後わりとすぐに効き始め、かなり劇的な効果が見られます。つまり、がんが小さくなるわけです。副作用が比較的軽く、しかも効果が上がるのですから、副作用に気をつけつつ、うまく使っていければベストだと思います。
なお、薬が効いているかどうかの判断は、レントゲン画像や腫瘍マーカーで行います。腫瘍マーカーが上がっただけでなく、レントゲンやCTの画像で悪くなったことを確認した段階で投薬中止にします。


左はイレッサ投与前。右は投与2カ月後。
左の黒い部分が右の写真ではきれいになっている
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