間質性肺疾患の合併に気をつければ、間質性肺炎は防げる 肺がんの分子標的薬はサードラインで使うのが標準的

監修:大江裕一郎 国立がんセンター中央病院特殊病棟部医長
取材・文:半沢裕子
発行:2008年6月
更新:2013年4月

抗がん剤に比べ副作用は一般的には軽いが、肺障害に注意

[イレッサの主な副作用]

副作用の種類 発現件数 発現率
発疹 568 17.10%
肝機能異常 369 11.11%
下痢 367 11.05%

イレッサが最初に承認されたとき、「夢の薬」と注目を浴びたのは、1つは副作用がそれまでの抗がん剤より軽いとされたためでした。抗がん剤とは副作用の種類が違うので、単純には比べられませんが、全体としてはやはり分子標的薬のほうが、患者さんにとって多少ラクなのではないかと思います。

肺がんの分子標的薬(イレッサ、タルセバ)の副作用として代表的なのは、まず、ニキビ様の吹き出物などの皮疹です。これも強く出て、つらい思いをする患者さんは少なくありませんが、皮膚科に相談して外用薬などを処方してもらうなど、できることはあります。

また、検査の数値が悪くなり、休薬することがあるのは肝障害。この場合は、逆に自覚症状がないときもあるので、注意が必要です。そのほか、下痢などが強めに出ることがあります。

しかし、最も気をつけなければいけないのは、先にも書いた間質性肺炎です。

正直なところ、通常の抗がん剤でも副作用で亡くなる方は1~2パーセントあり、間質性肺炎が起きることもあります。イレッサによる間質性肺炎は承認当時よりずっと減り、現在、このために亡くなる人はやはり2パーセントくらい。

つまり、副作用で命を落とす確率は、ほかの抗がん剤の場合と変わらないのですが、間質性肺炎は起きると半数近くは助からないので、患者さんの様子には十分気をつけることが必要です。

何より、もともと間質性肺疾患をもっている人は、間質性肺炎を起こす確率が高いので、そうした患者さんにはイレッサを使わないことです。実際に、医療現場で患者さんの既往症などに気をつけるようになって、イレッサによる間質性肺炎はかなり少なくなりました。

そのほか、男性のほうが確率が高いとか、タバコを吸っていた人は危険が高いといったこともいわれます。が、間質性肺疾患を合併している患者さんに気をつけることで、間質性肺炎はかなり防げるわけですから、過度に慎重にならず、医師の指示にしたがって服用していただければと思います。

[急性肺障害・間質性肺炎の発現因子]
図:急性肺障害・間質性肺炎の発現因子

そして、3~4週間使って何らかの効果が見られないときは、すぐに中止するべきだろうと思います。

というのは、先にも書きましたが、イレッサが効く場合、投薬後わりとすぐに効き始め、かなり劇的な効果が見られます。つまり、がんが小さくなるわけです。副作用が比較的軽く、しかも効果が上がるのですから、副作用に気をつけつつ、うまく使っていければベストだと思います。

なお、薬が効いているかどうかの判断は、レントゲン画像や腫瘍マーカーで行います。腫瘍マーカーが上がっただけでなく、レントゲンやCTの画像で悪くなったことを確認した段階で投薬中止にします。

[イレッサが著効した例]

写真:イレッサ投与前
写真:投与2カ月後


左はイレッサ投与前。右は投与2カ月後。
左の黒い部分が右の写真ではきれいになっている


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