肺がん治療の最新トピックス 手術から分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬まで
RET融合遺伝子陽性の肺がんに対する新しい分子標的薬が登場
非小細胞肺がんでは、がんの発生に関わっているドライバー遺伝子が何種類も見つかっており、そうした遺伝子を持つがんを治療するため、分子標的薬が次々と開発されてきた。2021年にも、新たな薬剤が承認されている(図3)。

「承認されたのは、RET融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんに対する治療薬であるレットヴィモ(一般名セルペルカチニブ)です。RET融合遺伝子は、EGFR遺伝子変異やALK融合遺伝子などと同じように、がんの発生や増殖などに関わっているドライバー遺伝子の1つです。その遺伝子からシグナルが送られて、がんの発生や増殖が活性化するのですが、レットヴィモはシグナルが送られるのを抑制することで治療効果を発揮します」(久保田さん)
レットヴィモの有効性と安全性を証明した臨床試験は、「LIBRETTO-001試験」である。RET融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんを対象に治療が行われ、奏効率が求められた。結果は、未治療例では70.5%の奏効率だった。完全奏効(CR)が2.3%、部分奏効(PR)が68.2%である。すでに治療歴がある既治療例の奏効率は56.9%。完全奏効が4.4%、部分奏効が52.5%だった。
「RET融合遺伝子陽性の肺がんは、非小細胞肺がんの2%程度です。決して多くはありませんが、陽性の患者さんにとっては、この薬が使えるかどうかは、大きな問題といえるでしょう」(久保田さん)(表4)

KRAS遺伝子変異陽性の肺がんに対する新薬は承認待ちの段階
KRAS遺伝子変異陽性の非小細胞肺がんに対する分子標的薬ルマケラス(一般名ソトラシブ)も、すでに「CODEBREAK100試験」の結果が出て、申請が行われ、承認待ちの段階にある。
この試験は、治療歴のある非小細胞肺がんを対象に行われた。その結果、全生存期間中央値は12.5カ月、奏効率は37.5%だった。
「KRAS遺伝子変異は、1980年代にはすでに発見されていたドライバー遺伝子です。ただ、それに対する治療薬がずっとなかったわけで、ようやく登場してきたという感じです。KRAS遺伝子変異陽性の肺がんは、日本では腺がんの10���程度を占めていて、EGFR遺伝子変異についで2番目に多くなっています。ただ、欧米人ではもっと多いことが知られています。また、喫煙者に多いのも特徴です」(久保田さん)
ルマケラスについて、アメリカのFDA(米国食品医薬品局)は2021年にすでに承認している。日本での承認が待たれているところである。
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