つらいリンパ浮腫は気づいたらすぐ理学療法を

卵巣がんの後遺症で最もつらいのは、リンパ浮腫だろうと思います。リンパ管は内臓の表面にクモの糸のように張り巡らされ、ところどころに大豆状のかたまりがありますが、このかたまりがリンパ節です。がんはリンパ管に入ってほかの臓器へ転移していくことが多いため、手術のときリンパ節とリンパ管を切除します。

切除しても、通常はほかのリンパ管がバイパスになり循環をカバーするのですが、人によってはリンパ液の流れがとどこおって下部（足）にたまり、パンパンにふくれ上がってしまいます。これをリンパ浮腫と呼びます。私の患者さんでも、リンパ節郭清を行なった方の1～2割の方に見られますが、その多くは術後1年以内に発症されています。

放っておくと皮膚が固くなり、感染症（蜂窩識炎）になって高熱を出したりします。ひと昔前は、医師に相談しても「仕方がない。がまんを」といわれることが多かったのですが、感染症は抗生剤ですぐ治りますし、何よりマッサージや理学療法がたいへん効果的です。気づいたら一刻も早く、専門医などに相談されたらよいと思います（「リンパ浮腫の改善は正しい知識と標準治療で」参照）。

また、卵巣をふたつとも取ってしまうと、女性ホルモンが急に分泌されなくなり、更年期とよく似た不快症状に悩まされることがあります。それを避けるためには、前述のように卵巣温存治療を選択するのもひとつの方法です。が、症状が出たらためらわず医師に相談し、ホルモン補充療法を受けることも検討してください。

「若さを保つ」ホルモン補充療法は、最近、がんの発症と関連がある等の報告が出て、一気にブームが沈静化しました。けれども、卵巣摘出後の急激な更年期症状をやわらげるためには、やはり効果のある治療法だと思います。短期間限定で、医師と相談しながら行なうのであれば、私は問題ないのではないかと考えています。

医師もネットも活用して、治療後も快適に過ごす

生殖器のがんだけに、ひと知れず悩みを抱え込んでしまう患者さんは予想以上に多いはずです。しかし、リンパ浮腫のように、放っておくとQOLが著しく損なわれる一方、早めに手当てをすると症状が劇的に改善することもあります。本来の日常生活を続けるためにも、どうぞ医師や医療機関をフルに利用してください。

とにかく、強調したいことはひとつ。基本的に「術後にやってはいけない行為」はないということです。重い���のをもっても性交をしても、まったく問題ありません。むしろ、気をつけなければいけないのは、「もう性交はできない」というように思い込んでしまうことだと思います。

婦人科がんはどうしても、性に関するデリケートな問題に直面させられます。しかし、繰り返しになりますが、女性らしさは生殖器だけにあるのではなく、女性の心身全体にわたるものです。術後はなかなかそう考えられない方も多いかと思います。その点、まわりの方々が上手に温かく見守ることが、患者さんのQOLに何より大切だと思います。

診断・治療に関し、医師にぜひ質問したいことがら