早期がんは小線源部分治療で 前立腺が温存できる!

監修●齋藤一隆 東京医科歯科大学大学院腎泌尿器外科学講師
取材・文●伊波達也
発行:2014年2月
更新:2014年5月

MRIと生検法で がんを正確に把握

表4 部分治療適格症例選択基準(東京医科歯科大学泌尿器科)

それでは、実際に部分治療の対象になるのは、どのような病態なのだろう。

「前立腺の片側にがんが限局していて、病期がT1またはT2a、PSA値が20 未満、グリソン・スコアが7以下、生検によるがんの長さが1㎝未満であれば治療対象となります」(表4)

診断には、MRIによる画像診断と立体多カ所生検法による組織診断が用いられる。立体多カ所生検法は、部分治療のためにがんの状態を特に正確に把握できるよう、同科で取り入れている方法だ。

世界標準の生検法では、直腸を通じて12カ所から組織を採取するのだが、同科の手法は、直腸からの6カ所と会陰からの8カ所の計14カ所から組織を採取する。そうすると、前立腺がんの好発部位である尖部の組織を採取しやすいのだという。この方法とMRIを組み合わせることで、治療が必要ながんが前立腺の片側にとどまっていることを、95%の精度で診断できるということだ。

検査の結果が、部分治療の対象になる患者さんには、あくまでも臨床研究の段階の治療であることをまず説明している。

「エビデンス(科学的根拠)が確立した標準治療には、手術による全摘や放射線全照射(小線源療法も含む)があること、また無治療で経過観察をする選択肢もあることについて一通り説明します。その上で、部分治療を希望するという方に実施するようにしています」

同科では、治療のプロトコル(方法)を確立して、2010年より部分治療を開始した(表5)。現在までに、約20人が治療を受けている。小線源療法自体は標準治療であるため、同治療にも保険が適用される。

表5 前立腺部分治療のプロトコル

一方、治療ができない場合もある。尿道からアプローチして前立腺の手術を受けたことのある人、心臓などに重度の合併症があり腰椎麻酔ができない人の場合だ。前立腺が大き過ぎる人(40 ㏄)にはホルモン療法を行い、大きさを縮小させて治療を行う。

「現在、欧米で行われる部分療法には、凍結療法(クライオセラピー)や高密度焦点式超音波療法(HIFU)などがあります。しかし日本では保険が効かないので、普及していません。標準治療でできる範囲の治療法で、それらに代わるものはないかと��え、小線源による部分治療を当科の木原和徳教授を中心に発案したのです。

前立腺がんは、がんの広がりを特定するのがなかなか難しいのです。そのため手術による局所療法は難しいです。根治性を損なわずに臓器を温存し、できるだけ機能が維持される治療が、患者さんのためになると考えています」

表6 経過観察の内容

現在まで実施した20症例についての経過を見ると、排尿障害などの合併症が軽減している傾向にあるという。

今後は、「さらに症例を蓄積し、長期経過も評価していきたい」と、齋藤さんは話す(表6)。

「長期経過についての良好な成績を私たちが提示できれば、小線源療法による部分治療が評価され、治療を導入する施設が増えていくのではないかと思います。また、今後は、前立腺の片側での治療より、さらに治療範囲を限局しての治療に挑んでいければと考えています」

局所再発についても 部分治療を実施

同科ではさらに、放射線照射後に前立腺内で局所再発した患者さんにも、小線源による部分治療を計画している。

「MRIで見つかった再発病変を生検してがんを特定できたときに、部分治療を行います。ただし、放射線照射後の再発には慎重な治療が必要です。照射が過剰になると合併症がひどくなる可能性があります。

再発症例では、根治よりも、がんの制御を治療の目標とすることもあります。そこには、再発症例で標準治療となるホルモン療法を、できるだけ先送りにすることも視野に入ってきます」

ホルモン療法が長期間にわたると、合併症として骨粗鬆症、骨折、糖尿病、心血管疾患、認知機能低下などが出てQOLに大きな影響を及ぼしかねない。できるだけ、治療を避けるか、短くするか、先延ばしにすることが求められるのだ。

根治性と機能温存のバランスを考えて

齋藤さんも述べていたように、小線源部分治療の長期的な効果が証明されれば、将来かなり期待できる治療となりそうだ。

昨今、前立腺がんの治療においては、ロボット手術が脚光を浴び、同治療を選択する人が増えている。低侵襲で、かつ細密な操作性によって手術合併症の軽減にも貢献している治療法だ。ただし、前立腺を摘出する手術であることは認識しておくべきだろう。

他にも陽子線治療、重粒子線治療といった粒子線治療も前立腺がんに適応となる新しい治療法が登場している。治療選択肢が次々と増える前立腺がんにおいて、特に若い人が罹患した場合には、治療効果を第一に据えるとしても、男性としての機能温存をいかに実現できるかを考慮した治療選択は必要だ。

それぞれの治療法のメリット・デメリットについての情報を入手して、根治性と機能温存のバランスをよく考えた上で、治療を選ぶことが大切になる。

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