術者がロボットに! 最先端型ミニマム創前立腺全摘手術
術者がロボットに!?
腹腔鏡手術やダヴィンチ手術に比べ、二酸化炭素ガスを使わず、1カ所の切開で後腹膜腔にアプローチするミニマム創内視鏡下手術には、前述したような利点がある。
そして、この手術法はさらに進化を続け、術者がヘッドマウントディスプレーなどを使用する最先端型ミニマム創内視鏡下手術となっている。
ヘッドマウントディスプレーは、内視鏡と連動させることもでき、術者が頭の向きを変えると、内視鏡も向きを変えることができる。
「もう少し左を見たければ、頭を左に向けます。すると、内視鏡が左に向きを変え、見たい部位が目の前に映し出されるのです」
また、内視鏡の拡大3D画像だけでなく、経直腸超音波画像や*MRI画像を並べて映し出すこともできる。それによって、がんや血管の位置などを正確に把握しながら、手術が行えるのだという。
ヘッドマウントディスプレーを装着していても、視野の下半分で、患者さんや手術室全体の様子を見ることができる。これも大きな機械をのぞき込むのではなく、コンパクト化した機械を装着したことで得られるメリットである。
さらに、多数のヘッドマウントディスプレーに同じ映像を映し出せるので、多数の医療者が同じ情報を共有しながら手術を進めることができる。1人で画面をのぞき込んで操作するダヴィンチ手術とは、この点も大きく違っている。
手術器具の進歩も著しい。小さな切開部位から手術を行うため、長い棒のついた器具を使用することになるが、できることが進歩している(図4)。


「例えば、血管を切断したとき、両側の血管が凝固して止血できる機器が開発されています。糸で結ばなくてもいいのです。こうした技術の開発で、小さな切開部位からでも、より安全に手術が行えるようになってきました」
長い棒の先についた器具は���ダヴィンチの多関節鉗子ほどの動きはないが、1平面状の回転は自由に可能である。しかし、高度で繊細な凝固能など、機能を格段に向上させることで、必要な操作はほぼ十分に行うことができるようになっているのである。
*MRI=核磁気共鳴画像法
腹腔鏡下小切開前立腺悪性腫瘍手術(最先端型ミニマム創)の入院費用を含めた医療費は90万円前後。患者さんの負担はその3割負担、また高額療養費制度を利用するとその上限となる
鉄人28号型か鉄腕アトム型か
「ダヴィンチはマスター・スレイブ型(主人・奴隷型)のロボットで、術者が離れたところでロボットを動かします。いわば鉄人28号型のロボットです。これに対し、私たちが行っているロボサージャン手術は、ヘッドマウントディスプレーを身に着けたり、高度に進化した器具を手に持ったりすることで、術者自身がロボット化して、手術を行うという概念です。言わば鉄腕アトム型なのです」
両者の違いは、触覚の有無となって現れる。例えば臓器を周囲の組織から分けるようなとき、器具を手に持って行えば、どのような抵抗があったのかを敏感に感じ取れる。人間の手の感触は極めて繊細なので、それを手術の安全につなげることができる。ダヴィンチの指は器用に動くが、残念ながら触覚は術者に伝わらないのである。
傷が小さく 術後の回復が早い
ミニマム創内視鏡下手術は切開する部位が小さいこともあり、手術を受けた患者さんの回復は早い。
「尿道を切ってつなぐので、1週間ほどは膀胱に管が入った状態になりますが、管を入れたまま退院することもできます。手術の翌日には100m以上歩けますし、3~4日後には仕事に復帰する人もいます」
手術痕も小さい。東京医科歯科大学附属病院では、ミニマム創内視鏡下手術で切開する大きさは通常、1円玉1~2個程度。前立腺全摘術では2個程度だが、それでも傷痕はほとんど目立たないという。
最先端型ミニマム創内視鏡下手術は国際的にも評価が高く、13年には、欧州泌尿器科学会(EAU)の手術ビデオライブラリーに腎や副腎の手術が収載された。
国内で、この侵襲的にも経済的にもミニマムな手術が広く行われるようになることを期待したい。
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