ホルモン療法不応の前立腺がん 薬の使い方に工夫、新たな治療薬も続々と

監修●森山正敏 横浜市立市民病院泌尿器科科長
取材・文●町口 充
発行:2014年2月
更新:2014年5月

副作用は使い方で低減

タキソテール使用時に、問題となるのが副作用。

「注意すべき点は白血球減少などの骨髄抑制です。ほかにも末梢神経障害や呼吸機能障害、消化器障害など。高齢者の場合、副作用が心配なので抗がん薬治療は止めて、ほかの治療法を選択することもあります」

横浜市立市民病院では、このような副作用対策として、低用量のタキソテールを用いた治療を行っている。

国内の多くの施設では、海外の臨床試験結果に基づいて1回の投与に75㎎(体表面積1㎡あたり)の高用量を使用しているが、同院では20㎎の低用量で治療効果を上げているという。

「低用量でも非常によく効いています。高齢者でも使え、骨髄抑制や末梢神経障害、呼吸機能障害は皆無ではないものの、ほとんどありません。そのためすべての患者さんを外来で治療しています」

タキソテールが効かなくなったら

図5 去勢抵抗性前立腺がんに対するザイティガの効果(全生存率)

de Bono JS, et al. N Engl J Med 364:1995,2011.

図6 去勢抵抗性前立腺がんに対するMDV3100の効果(全生存率)

Scher HI, et al. N Engl J Med 2012. DOI:10.1056/NEJMoa1207506

図7 去勢抵抗性前立腺がんに対する主な新薬(国内未承認)

*17α-hydroxylaseと17・20-lyaseを阻害 **=17・20-lyaseを阻害 AVE0005=別名アフリベルセプト Yervoy=一般名イピリムマブ スプリセル=一般名ダサチニブ

現在、去勢抵抗性前立腺がんに対して、国内で使用が認められているのはタキソテールのみ。しかし、このタキソテールもやがて効かなくなることがわかっている。そこで期待されるのが新薬だ。12年6月に、国内でも承認されたゴナックス(Gn-RHアンタゴニスト)は、LH-RHアゴニストと同様に、テストステロンの放出を早期に低下させることにより、がん増殖を抑制する作用を持つ治療薬。

海外では、タキソテールの次の薬としてすでに使われているものがある。その1つがザイティガという酵素阻害薬。アンドロゲン生成に関係する酵素を阻害して、前立腺がんの進行を抑える働きがある。

海外で行われた第Ⅲ相試験の結果では、タキソテールを使って病勢が進行した患者さんの生存期間を延長させたことが証明され、欧米ではすでに承認されている。日本でも13年7月に承認申請が行われており、結果が待たれる(図5)。

第2世代の抗アンドロゲン薬と呼ばれるMDV3100にも期待がもたれている。同薬はカソデックスよりも優れた効果を示し、カソデックスが効かなくなったがんにも効果があるといわれている。海外で行われた第Ⅲ相試験結果では、タキソテールの治療歴のある進行去勢抵抗性前立腺がんで全生存期間(OS)の改善を示し、米国ではすでに承認ずみ(図6)。日本でも、国内で実施した第Ⅰ相、第Ⅱ相試験の結果をもとに、13年5月に承認申請が行われた。

TAK-700というザイティガと似た作用を持つ薬も登場している。これもアンドロゲン生成に必須の酵素を阻害する薬だ。現在、転移性の去勢抵抗性前立腺がんの患者さんを対象に、日本も参加して第Ⅲ相国際共同試験が行われており、結果が待たれる。

また、タキソテールの次の薬としてジェブタナも期待されている。第Ⅲ相の国際試験や日本での第Ⅰ相試験の結果をもとに、13年7月、国内承認申請が行われている。このように、登場が間近の新規薬剤が目白押しといえる。さらに、米国ではプロベンジという樹状細胞ワクチンを用いた免疫療法が承認され、分子標的薬カボザンチニブの適応拡大なども検討されている(図7)。

ゴナックス=一般名デガレリクス酢酸塩 Gn-RHアンタゴニスト:Gonadotropin releasing hormone antagonist(性腺刺激ホルモン放出ホルモン拮抗薬) ザイティガ=一般名酢酸アビラテロン(国内未承認) MDV3100/イクスタンジ=一般名エンザルタミド(2014/3 承認) TAK-700=一般名 orteronel(国内未承認) プロベンジ=一般名シプリューセル-T(国内未承認) ジェブタナ=一般名カバジタキセル(国内未承認) カボザンチニブ(一般名)=COMETRIQ(TKI系分子標的薬)(国内未承認)

骨コントロールは必須

ところで、前立腺がん治療では骨のコントロールも重要になる。前立腺がんで、転移の8割以上を占めるのが骨で、ホルモン療法の副作用として現れやすいのが骨粗鬆症だ。

「骨がもろくなって折れやすく、骨折すれば歩けなくなり、QOL(生活の質)が低下して、生存期間を縮めることにもつながってしまいます」

骨転移の場合には、ゾメタやランマークが使われる。

ランマークは、去勢抵抗性の転移性前立腺患者さんを対象とした第Ⅲ相試験で、骨転移を遅らせる効果があるとの結果が出ている。ただし、副作用として顎骨壊死が報告されており、治療前に必ず口腔外科で虫歯などの治療が必要となる。

去勢抵抗性前立腺がんに対する今後の展望について、森山さんは次のように語っている。

「これから次々と新薬が登場しますが、同時に薬の選択、使い方など新たな課題も出てきます。しかしそれは、これまで諦めていたものが、新薬が使えることで希望が持てるようになったことを意味します。今後の治療に期待してほしいと思います」

ゾメタ=一般名ゾレドロン酸水和物 ランマーク=一般名デノスマブ(※ ランマークは「骨病変治療薬」、同成分の商品名プラリアは「骨粗鬆症治療薬」)

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