尿失禁になってもあわてずに 体操や手術であきらめない
薬物療法について
症状がひどい場合には、薬物療法による対策も選択肢の一つになる。抗コリン薬という種類の頻尿治療薬は、膀胱を収縮させる副交感神経を抑え、膀胱の排尿筋を緩める作用がある。それにより尿が溜めやすくなり、尿道括約筋にかかる圧力が軽減化される。βアドレナリン作動薬は、尿道括約筋の収縮する力を強め、また、膀胱の排尿筋を緩める効果がある。最も新しいβ3アドレナリン受容体作動薬は、β3受容体に結合して、ノルアドレナリンによる膀胱の弛緩作用を増強し膀胱の排尿筋を緩め、尿失禁を軽減する。
人工尿道括約筋手術
重症の尿失禁対策として、米国で開発されたのが人工尿道括約筋の手術だ。日本では2012年4月に保険適用の治療法となった。膀胱や尿道に異常がないことが、手術の前提となる。
人工尿道括約筋は、カフ、圧力調整バルーン、コントロールポンプなどから構成されており、これらはチューブにより連結されている。尿道に巻きつけたカフには、外尿道括約筋のような働きをさせる。
そのメカニズムは、以下のようになる。

❶カフ内に生理食塩水を充満した状態にすると、尿道が締め付けられ、膀胱内に尿が留まっていく。
❷膀胱に尿が溜まって尿意を感じたら、陰嚢に埋め込まれたコントロールポンプのボタンを押すと、カフ内の生理食塩水がバルーンに抜けていき、尿道の圧が弱まって開き排尿できるようになる。
❸緩んで開いたカフは数分で自然に閉じる。
ただし、人工物を埋め込む手術なので、感染や故障、尿道損傷などにより人工括約筋を外さなければならないこともあり得る。
パンツをドライにする状況を目指す
手術後に尿失禁が残ってし
まったときの気持ちの持ち方について、木村さんは次のように話した。
「諦めないことです。骨盤底筋体操の日々の努力や薬物療法で、症状は改善できます。どうしてもだめな時には、人工括約筋手術もあります。
手術後カテーテルを抜去した直後には、すべての尿が漏れて全く尿を溜められない方もいらっしゃいます。自分で尿を溜めて排尿するという当たり前のことができなくなって、すごく悲観されます。いつも漏れのために膀胱が空っぽになっており、排尿実感が味わえない状態となっています。
まずは、尿を溜めてみましょう。尿失禁がたくさんある方でも仰向けに横になっているときには、膀胱にある程度尿を溜めることができます。しかし、起き上がる瞬間に腹圧がかかり、一気に尿が漏れてしまい���す。そこで、起き上がる時に『できるだけ漏らさないぞ』と可能な限り踏ん張って起きてみて下さい。
起きた瞬間に最初はすべて漏れてしまうかもしれませんが、何度も何度も毎日繰り返していくうちに徐々にその量が減って、逆に自分で出す尿の量が増えていくのが実感できるはずです。トイレに行くまでに全部漏れてしまう方は、最初はそばに尿瓶をおいてそれにして下さい。そこに尿を出せるようになったらトイレに行って出すようにしてみて下さい。
このようにして頑張って、少しでも排尿できることにより、『できた』という喜びが生まれます。失敗しても、次はもう少し頑張ろう、と思っていただきたい。次はもう少しトイレの近くまで行くぞ、もう少し量を増やすぞ、と。自分でおしっこを出すという目標を持って、手応えを感じながら頑張ることが大切です」

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