前立腺がんの新リスク分類とその評価 予後良好な中間リスク群ではPSA監視療法も

監修●萬 篤憲 国立病院機構東京医療センター放射線科医長
取材・文●「がんサポート」編集部
発行:2017年1月
更新:2017年1月


予後良好な中間リスクまでならば治療成績はよい

萬さんは今回の調査結果について、「米国で報告されたものとほぼ同じ数字が出ました。新しいガイドラインのリスク分類はよく出来ています。少し治療が遅れても予後良好中間リスクまでなら生存率は高いし、再発率も少ない。中間リスクの中でも、GS3+4と4+3の間では再発率の差は小さいのですが、転移率の差が生じます。6つのリスクグループごとに明らかな差が出ているので、中間リスクを2分割したことは納得できます」と述べた。

さらに、「超低リスクはほぼ完璧に治ります。低リスクは全生存率で1~2%落ちますが、これは超低リスクに対して積極的監視療法をしていてリスクが上がって来たものも含めて、1~2%の取りこぼしがあっても治るということです。治療選択には、再発しても長期生存しているならいいだろうという考え方もあるので、いろいろな指標で見ておいた方がいいと思います」と解説する。

積極的監視療法(PSA監視療法)については、「米国よりも欧州で早く広がっています。イギリス、ドイツなどは低リスクだと6~7割は監視療法になります。米国は5割を超えてきたところです。低リスクに分類された場合の治療がそちらに流れていますが、日本では監視療法は行われてはいるものの、研究ベースのものが多いのが実情です。普段の臨床に導入するのはなかなか難しい。PSA検査のほかに定期的に生検を繰り返すのですが、治療を先延ばしにして、かつ遅らせ過ぎないようにしています」と医療現場について話す。

「海外では低リスクなら監視療法ができ、中間リスクは選択次第で監視療法を取ることもできます。しかし、少しでも遅れると中間リスクは命取りになる人がいるので、医師としてはできれば選択したくないという場合が多いと思います。さらに高リスクには監視療法の選択肢はありません。どのリスクに対しても、日本ではホルモン療法が多いのが特徴です。低中リスクには何もしなくても長期生存し、PSA値が上がっても10年間生存する人たちがいます」と述べる。

リスク分類が適切に行われることで、治療選択もより適切になることが期待されている。

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