「スクリーニング」、「確定診断」、「病期診断」の3ステップで判断する 知っていますか? 前立腺がんの検査・診断

監修:中村昌史 静岡県立静岡がんセンター泌尿器科副医長
取材・文:池内加寿子
発行:2012年9月
更新:2013年4月

2.前立腺生検で確定診断

ここまでのスクリーニング検査でがんが強く疑われた場合は、前立腺生検に進み、この段階で初めて前立腺がんの診断が確定する。

「PSA値が4以上で、直腸診及び経直腸的超音波診断でも異常がみられたり、家族歴がある場合は前立腺生検をお勧めします。3つ揃っていなくても、PSA値が4以上で、70歳以下で若く、重大な病気がない場合は、生検を考慮します。一方PSA値が4~10のグレーゾーンで80歳以上であれば、PSAを定期的に測定しながら経過観察するのも1つの方法です」

前立腺がんは、他のがんと違って、比較的進行が遅いがんも多く、例えば心筋梗塞などの重篤な病気があれば、そちらの治療を優先させたり、80歳以上の高齢の患者さんでは、無理に体に負担のかかる生検を行わずに、PSAの推移を経過観察するというのも1つの手となる。

● 前立腺生検
[図3 前立腺がんの生検]
図3 前立腺がんの生検

がんと確定診断するために不可欠な検査。直腸の前壁または会陰から針を刺し、前立腺の微小な組織を10カ所ほど採取する。顕微鏡を使って、この組織を検査して、がんがどうかを確認する

「前立腺生検は、直腸エコーのガイドに沿って前立腺に生検針を刺し、直径1㎜、長さ2㎝程度の組織を採取して、顕微鏡でがんの有無を調べる検査です。直腸から針を刺す経直腸的生検と、会陰から針を刺す経会陰的生検の2つの方法があります。どちらの生検にするか、また、生検の本数や麻酔の仕方、外来で検査をするか入院でするかも病院によって異なります。当施設では、基本は1泊2日の入院をしていただき、硬膜外麻酔下の経直腸生検で8~10本生検を行っています。生検自体の所要時間は30分程度です」(図3)

前立腺生検では、細菌が前立腺に入って炎症を起こすのを避けるため、あらかじめ抗菌剤が投与される。

生検の本数は、前立腺がんの病巣が特定できないことが多く、検出率向上のため、前立腺全体からまんべんなく採取する8本以上が主流で、12~16本採取する病院もある。生検後、通常は1~2週間でがんの有無が確定する。

「生検後は、精液に血が混じ���たり血尿が数週間続いたりすることがありますが、うすいピンク色程度ならさほど心配ありません。トマトジュースのような色の血尿がみられたら、止血が必要になります。生検後は前立腺がむくみやすくなるので、飲酒、刺激物の摂取や熱い風呂に入ったり自転車に長時間乗って会陰を圧迫するのは避けてください」

● グリソンスコア
[図4 グリソンスコア]
図4 グリソンスコア

患者さんから取ったがん細胞のうち、最も多いがん細胞のパターンを5段階で評価して、悪性度を判定する。その後、2番目に多いがん細胞のパターンを再び5段階で評価し、両方の数値を足して、グリソンスコアを決定する

「病理検査でがんの有無を調べるとき、同時にがんの悪性度をグリソンスコアという数値にして、治療法選択や今後の予測の目安にします」

グリソンスコアとは、国際的な悪性度の指標で、がんのパターンを悪性度の高いものから低いものまで5段階に分けて点数をつけ、もっとも多いパターンと、次に多いパターンの点数を合計したスコアで、悪性度を判定する。スコアが5~6なら低悪性、7なら中等度悪性、8~10なら高悪性となる(図4)

3.画像検査で病期診断

[図5 前立腺がんと診断されてからの検査]
(骨シンチグラフィ、CT、MRI検査)

図5 前立腺がんと診断されてからの検査(骨シンチグラフィ、CT、MRI検査)

がんがどこまで広がっているのか、リンパ節や他の臓器に転移しているのかをCTやMRI検査、骨シンチグラフィなどの画像検査で調べる
注:進行がんでは、さらに肺、肝臓などへの転移の有無について検査する

出典:静岡がんセンター『前立腺がんの診断と治療の戦略』より

「がんがあることが確定したら、次はがんがどこまで広がっているのか、他の臓器に転移しているのかをCTやMRI()、骨シンチグラフィなどの画像検査で調べて、治療法選択の材料にします」(図5)

MRI=核磁気共鳴画像法

● CT・MRI・骨シンチグラフィ
[図6 骨シンチグラフィ](前立腺がん骨転移症例)

図6 骨シンチグラフィ(前立腺がん骨転移症例)

黒い部分が骨に転移しているところ

CT検査では前立腺内部の様子は分からないが、がんが他の臓器やリンパ節等に転移がないかを調べるために有用だ。一方、MRI検査では、がんが前立腺の外に飛び出しているかや、どこにありそうかを調べるのに有用である。

とくにMRI検査の拡散強調画像という検査法では、がんが前立腺内部のどこに局在しているか、比較的正確な情報が得られる。

「がんが前立腺のどの位置にあるかがわかるので、より正確な病期診断が期待できます。また、前立腺全摘除術時に神経温存をする場合や、小線源療法、ロボット手術などの適応を決定する場合にもがんの位置が正確に把握できるので、役立ちます」

骨シンチグラフィは、骨に取り込まれやすい放射性同位物質を注射して造影する検査。骨転移している場合、その場所がスポットで示される(図6)。

4.診断と治療法決定

こうしたさまざまな検査の結果を踏まえ、がんの病期、診断時のPSA値、悪性度などを考慮した上でリスク分類し、今後の治療方針が決まる。

「低リスク群なら病巣が小さくおとなしいタイプなので、経過観察も含めたさまざまな治療方法が選択できます。高リスクなら病巣が大きく悪性度も高いので、手術やホルモン療法と放射線療法などを組み合わせた治療が必要です。転移がある場合は、ホルモン療法を行います」

なお、治療後も、PSA値を定期的に測定することで、がんの再発や進行を知る手がかりになる。


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