早めに治療すればQOLだけでなく、予後まで良くなる 前立腺がんの骨転移は「早期発見・早期治療」が肝心

監修:上村博司 横浜市立大学大学院医学研究科泌尿器病態学准教授
取材・文:柄川昭彦
発行:2012年9月
更新:2013年4月

ゾメタによる治療で生存期間も延長

[図4 ゾレドロン酸の効果](無増悪生存率)
図4 ゾレドロン酸の効果(無増悪生存率)

Uemura H, et al. int. J. Clin. Oncol, 2012

[図5 ゾレドロン酸の抗腫瘍効果]
図5 ゾレドロン酸の抗腫瘍効果

ゾレドロン酸の抗腫瘍作用には直接的な作用と間接的な作用がある

この研究の対象となったのは、前立腺がんですでに骨転移があり、ホルモン療法を受けている患者さんである。38人には、ホルモン療法の初期治療からゾメタを併用する治療を行った。

対照群は、同じ状況でホルモン療法だけを行った患者さん65人である。過去にこのような治療を受けた人のデータを集めた。

「この研究ではゾメタを2年間投与することになっていて、まだ投与中のため、最終結果は出ていません。ただ、中間報告の段階ではありますが、増悪までの期間(無増悪生存期間)を延ばすというデータが出ていて、これは統計学的に有意差がありました(図4)。最終的には生存期間を延長するかどうかを問題にしていますが、よい結果が得られるのではないかと思います」

骨転移があったら、なるべく早期に治療を開始するほうがいい。それによって、QOLの低下を防げるのはもちろん、予後を延長することにもつながるわけだ。

「基礎研究では、ゾメタに抗腫瘍効果があることを示すデータが、以前から出ていました。ただ、臨床ではなかなか証明できなかったのですが、私たちの研究結果から、やはり抗腫瘍効果があったのだと言えそうです」(図5)

患者さんも参加するボーンマネージメント

[図6 ボーンマネージメントとは?]
図6 ボーンマネージメントとは?

がん骨転移治療─ビスホスホネート治療によるBone management─
先端医学社

前立腺がんの治療では、ただがんを対象にするのではなく、同時に骨の健康を保つことを考えていく必要がある。そのことが、「ボーンマネージメント」(骨の管理)という言���とともに、医療者側には徐々に浸透してきたという(図6、7)。

「日本ではホルモン療法が長期に行われるので、骨の健康にはとくに注意する必要があります。ホルモン療法を行うと、ほぼ例外なく骨が弱くなるので、骨転移を早く見つけ、ゾメタなどによる治療を早く開始する必要があります」

現在、ゾメタによる治療は、骨転移の診断がついた時点から始めることが勧められている(図8)。痛みが出る前からゾメタを使い、痛みが出たら、鎮痛薬による治療や放射線による治療を行い、骨折や麻痺が起きたら整形外科的処置を受けるのである。

「患者さんも、骨の健康を守ることが、QOL向上や予後の延長につながることを、知っておくべきです。その上で、自分の骨を守るために、運動することや、食事でカルシウムを取ることを心がけてほしいですね」

[図8 骨関連事象の治療のタイミング]
図8 骨関連事象の治療のタイミング

眞鍋淳,癌の臨床vol.58(1),2012
痛みなどの症状が出る前に骨転移を発見することが大切。早期からゾレドロン酸などの薬物治療を行うことでQOLはもちろん、予後も大きく変わる

特別な運動は必要なく、散歩でも十分な効果が得られる。1日1時間(あるいは1万歩)が目安である。食事では、カルシウムの豊富な乳製品や大豆製品を含むバランスのよい食事を心がけるとよい。前立腺がんの患者さんにとって、ボーンマネージメントは、よりよく生きることにつながっている。

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[図7 前立腺がんに対する治療の流れ]
図7 前立腺がんに対する治療の流れ


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