前立腺がんに多い骨転移。新薬登場にも期待 骨転移を遅らせる治療にはがんの進行を抑える効果も!
骨転移にもう1つ期待の新薬が登場!

[図6 ランマークの骨関連事象抑制効果]
そして、骨転移の進行を抑える治療として行われているのが、ビスホスホネートであるゾメタ(*)だ。高カルシウム血症や骨粗鬆症の治療薬として認可されたもので、2006年から前立腺がんの骨転移にも使えるようになった。
ゾメタは骨に取り込まれ、破骨細胞の働きを妨害する。結果、骨の破壊がとまる(図4)。
さらに、がん細胞は破壊された骨から出る物質によって増殖するので、骨の破壊がとまることによって「腫瘍の増殖を抑える効果もあるといわれます。人における治験はまだありませんが、タキソテールと併用すると、がん細胞がアポトーシス(細胞死)を起こす割合が3倍になるとの報告もあります。私たちの病院でも併用で治療を行いますが、なかにはがんが消えた症例もあります」(図5)
骨の状態を改善する薬はもう1つ、今年の春に健康保険で使えるようになる。骨芽細胞が破骨細胞に「分化せよ」と送るシグナル(RANKL)をブロックする、ランマーク(*)という薬だ(図6)。
「ランマークとゾメタとの比較試験がありますが、ランマークを使ったグループはゾメタを使ったグループより最初のSREが発現するまでの期間を8.2カ月も延長できたのです。
ゾメタはそもそも、何も投与しなかったプラセボ(偽薬)群と比べると、5.6カ月最初の骨関連事象が発現するまでの期間が延びたという報告がある。そのゾメタと比較してこれだけ延ばせるのですから、期待は大きいです」
ゾメタもランマークも、それなりに副作用はある。発熱、倦怠感、低カルシウム血症など。全体として、ランマークのほうが骨関連事象の出る確率は低いし、副作用も日本人はやや低いようです。

*ゾメタ=一般名ゾレドロン酸
*ランマーク=一般名デノスマブ
骨や体の状態を確認しながら治療を行うことが重要

骨転移への治療としてはこれらの薬に加え、メタストロン(一般名ストロンチウム-89)による治療がある。ストロンチウムというと、福島の原発事故で放出された物質と同名だが、あちらは90でまったく別物である。
メタストロンを注射すると、骨転移のある場所に集まり、そこで放射線を放出し、がん細胞を殺して痛みをとり除く(図7)。
「主な副作用は骨髄抑制(白血球、血小板などの血液細胞が減る症状)ですが、患者さんのなかには、いろいろな治療を経て骨髄にダメージを受けている人も多い。投与する人を検査などできちんと選別することが大事です」
これに限らず、骨転移の治療では、骨や体の状態を確認しながら治療を行うことが重要。
骨転移がある場合は早期にゾメタやランマークを使用すべきです。
遺伝子レベルの個別化医療を目指して
前立腺がんの治療薬は近い将来、新薬が続々登場する可能性があるが、
「1人の人間に発生するがん細胞は1種類ではなく、いろいろな性質の細胞がいます。今はがん細胞のもつ分子を特定し、攻撃する分子標的薬が花盛りですが、その人がどんながん細胞をもっているか遺伝子によって特定できれば、本当の意味でテーラーメイド(個別化医療)が実現すると思います。実際、腎がんの治療薬であるmTOR阻害剤と呼ばれる薬を前立腺がんで投与したら、PSAも下がったという報告が、この間の米国臨床腫瘍学会でもありました。そうしたテーラーメイド治療に、骨転移の治療もきちんと組み込み、骨関連事象を抑えれば、前立腺がんと共存し、寿命まで生きることも不可能ではないと思いますね」
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