できるだけQOLを落とさず長期の治療を 新薬の登場も!ホルモン療法が効かなくなった前立腺がんの最新治療

監修:島居徹 筑波大学医学医療系教授・茨城県地域臨床教育センター長
取材・文:柄川昭彦
発行:2012年5月
更新:2013年4月

好中球減少が起きているときは外出を控える

タキソテールとプレドニゾロンの併用療法で、最も注意すべき副作用は、白血球の一種である好中球の減少である。抵抗力が低下し、細菌感染などが起こる心配がある。

[図5 海外、日本の報告におけるドセタキセルによる好中球減少の割合]

試験名 Ide, et al
(75mg/㎡)
国内第2相
(70mg/㎡)
TAX327
(75mg/㎡)
人 数 20 43 335
好中球減少
(G3<)
85% 93.0% 32%
発熱性 10% 16.3% 3%
出典:Ide H, et al JJCO 40:79, 2010
日本人はとくに好中球減少の副作用がでやすいので注意が必要

「臨床試験のデータを見ると、好中球減少が起きるのは、海外では3分の1程度の人ですが、日本人では8割ほど。日本人にとってとくに注意すべき副作用です。ただ、好中球が下がる人は多いのですが、下がっている期間が短いという特徴があり、筑波大学のデータでは注意すべき期間は3日弱でしたので、その期間を慎重に過ごせば、大事に至らずにすみます」

1~2サイクル経験するうちに、好中球減少が起きるかどうか、起きるとしたら何日目くらいか、といったことがわかってくる。それがわかれば、危険な時期に外出を控えたりすることで、感染症を予防することが可能だ(図5)。

[図6 ドセタキセルによる主な副作用と出やすい時期]
図6 ドセタキセルによる主な副作用と出やすい時期

注意が必要なのは好中球の減少と間質性肺炎。副作用が出たら医師と相談することが大切

末梢神経障害や味覚障害なども問題になることがある。長く続けることで現れてくることが多い副作用である。末梢���経障害のしびれなどは、6サイクル前後で現れることが多い(図6)。

「箸や茶碗を持つのに支障があるとか、脚がしびれてうまく歩けないなど、日常生活に支障をきたすような場合は、休薬する必要があります」

もう1つ重要な副作用は間質性肺炎である。添付文書によれば、4.7%に現れることになっている。決して稀な副作用ではない。

「毎回、投与前に胸部X線撮影と酸素飽和度をチェックしています。タキソテールの治療を開始する前に、胸部のCTを撮っておくことも意味があります」

タキソテールが効いている場合、この治療をいつまで続けるかが問題になる。20サイクルも30サイクルも続けるのが理想かといえば、必ずしもそうではないという。

「海外の臨床試験も、国内の臨床試験も10サイクルで治療を終了しています。効いているとやめにくいのは事実ですが、10サイクル終了後は休薬し、また悪くなり始めたら治療を再開する『間欠療法』という方法もあります。ただ治療を再開したとき再び薬が効くのか、という不安はあります。海外では、当初効果があり、休薬後に治療を再開した7割程度の人に効果があったという報告があります。休薬、再開の是非は今後検討課題だと思います」

タキソテールの治療に関しては、継続するのがいいのか、間欠療法がいいのか、まだ結論は出ていない。ただ、去勢抵抗性前立腺がんの治療は、できるだけQOLを低下させずに、長く薬物治療を続けることが重要である。タキソテールをどのように使うかも、そうした前提のもとで考えることが大切であろう。

期待される薬の登場も

[図7 カバジタキセルの効果(生存率)]
図7 カバジタキセルの効果(生存率)

海外の臨床試験ではドセタキセル治療後の去勢抵抗性前立腺がんの治療にカバジタキセルが有効であったという報告がでている

海外で承認されていながら、国内では使えない薬もある。

「1つはカバジタキセル(一般名)というタキソテールと同じタキサン系抗がん剤です(図7)。タキソテールが効かなくなった場合の治療薬として期待されています。もう1つは、ホルモン療法薬のアビラテロン(一般名)で、副腎由来のアンドロゲンの合成を阻害する薬です。海外の試験では、どちらの薬も、タキソテールが効かなくなった患者さんに、約4割の奏効率でした」

他にも、いくつかのホルモン療法の薬の臨床試験が進行しているという。その結果に期待したいものだ。


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