手術と効果は同等。副作用に対する考え方がポイントに 前立腺がん治療に新たな選択肢 ホルモン療法を併用したIMRT治療とは?

監修:中田渡 大阪府立成人病センター泌尿器科診療主任
取材・文:増山育子
発行:2012年5月
更新:2013年4月

ホルモン療法+IMRTの実際

[図6 IMRTを用いた前立腺がんのリスク別治療方針]

  NCCN分類      IMRT : 74グレイ(高リスクには78グレイ)  
  低リスク : T1-T2 and グリソンスコア 2-6 and PSA<10  
  ホルモン療法併用なし  
  中リスク : T1-T2 or グリソンスコア 7 or PSA 10-20  
  照射前ホルモン療法 6~12ヵ月、
照射中ホルモン療法2カ月、照射後ホルモン療法なし
 
  高リスク : T3a or グリソンスコア 8-10 or PSA≧20  
  照射前ホルモン療法 6~12ヵ月、
照射中ホルモン療法2カ月、照射後ホルモン療法2年
 

ホルモン療法併用IMRTの治療の適応となるのは中リスクおよび高リスクの患者さん(図6)。患者さんがIMRTを受けると決めたら、まず6~12カ月間ホルモン療法を行い、その後、IMRTを実施。1回あたり2グレイで、中リスクの患者さんには総線量74グレイ、高リスクの患者さんには総線量78グレイになるまで連日照射する。74グレイでは37回、78グレイでは39回となり、およそ2カ月間にわたる長丁場だ。

「2カ月間の通院となると、そのあいだに体調が悪いとか風邪をひいて寝込んだということも出てきます。放射線治療は、基本的に連日照射することでがん細胞のDNAを損傷させ、やっつける治療です。時間をあけてしまうと、せっかく弱らせたがん細胞が、また修復されてしまい、治療効果が低下してしまう可能性があります。ですから、毎日通っていただけるよう、治療中はなるべく家で養生して、風邪などひかないようにしてくださいと患者さんにはお伝えしています」

1回につき2グレイを39回も行うことになると、患者さんは毎日通院しなければならず、通うのにも大変だ。そこで、現在1回につき3グレイの照射を21回行い、合計63グレイで終えてみるという臨床試験が米国では進行中だ。

「論文では短期間での照射でも、副作用にあまり違いがなさそうだという報告が出ていました。長期成績がわかるのはまだ先になりますが、将来的には回数を減らせるかもしれません」

仕事をしていると2カ月間の通院がネックとなり、手術を選ぶ患者さんもいる。これについて中田さんは「ホルモン療法を併用した放射線治療と手術では、10年生存率は変わらない」と指摘する。

「手術の利点は摘出した部位のがん細胞をすべてなくしてしまえることです。一方、放射線治療は、がん細胞のDNAを損傷させて殺す治療であり、放射線治療単独でがん細胞を全て死滅できないことも十分考えられます。そのためホルモン療法を併用することで、がん細胞をゼロにする可能性を高めているのです」

効果の点では、手術と、ホルモン療法を併用したIMRTの治療も変わらないと考えられているのである。

治療の副作用は?

では、副作用の点ではどうだろう。手術のデメリットとしては、尿漏れ、直腸損傷といった術中の合併症などがあげられる。その頻度はというと、100人に1人は1年たっても尿漏れが続き、直腸損傷は200~300例に1件程度発生するとされている。

「手術をすると、当初は必ず尿漏れが起こってしまいます。ただし尿漏れについては、術後1年くらいたつと、99%なくなります。一方、放射線治療の場合、最初は排尿困難・排尿違和感が有意に増えます。ですので、治療後の排尿に関しては、どちらがいいとは言えません」

他にも放射線治療で問題になるのは、膀胱や直腸からの出血だ。場合によっては、通院が必要になる人もいるが、その割合は100人に1人くらいだという。

[表7 IMRTによる有害事象(グレード2以上)]

  合計 グレード2 グレード3
急性期
障害
頻尿
排尿困難
下痢
3.9%
1.0%
1.9%
3.9%
1.0%
1.9%
 
晩期障害 直腸出血
血尿
7.8%
3.9%
6.8%
3.9%
1.0%
IMRTを治療に取り入れることで、直腸出血などの割合は減った

「以前の3次元原体照射では血尿・血便を引き起こすケースが多かったのですが、IMRTになった今はそれほどありません。合併症は明らかに軽くなっています」(表7)

とはいえ中田さんは、IMRTで出血を起こすのを数例経験しており、治療にあたっては慎重だ。現在大阪府立成人病センターでは、放射線治療をする前に、直腸内視鏡による検査をして、リスクがないか調べた上で治療を行っている。

性機能を重視する方には放射線治療を

性機能の温存を望み、「手術よりは放射線治療で」という患者さんも増えてきている。

「手術をしたら勃起神経を温存しても性機能は落ちてしまうので、性機能を重視する患者さんにはホルモン療法を併用しない放射線治療をお勧めしています。ただし、放射線治療なら性機能が必ずしも保てるかというと、そうとも限りません。神経の損傷がないかといえばそうではなく、やはり前立腺のそばを走る勃起神経に放射線は当たってしまいます。また、ホルモンを併用しないため治療効果も落ちてしまいます」と中田さん。

「性機能に関していえば、2~3年たつと勃起神経を温存した手術と放射線治療の違いはなくなってくるのですが、急場どうしても困るという患者さんは単独の放射線治療を選ぶことになります。性機能の下がり方が、手術はあるときを境に急に下がりますが、放射線治療のほうはゆっくりと下がります。性機能が、がくっと下がれば精神的にも落ち込みますが、ゆっくり下がっていくと、受け入れやすいというのがあるようです。

悪性度が高い場合は別ですが、前立腺がんの場合1、2カ月悩んでもその間に急に進行するということはあまり考えられませんから、じっくり考えてご自分が納得できる治療方法を選ぶことが大事だと思います」

ホルモン+IMRT治療の長期成績が待たれる

現在、長期成績としてホルモン療法にIMRTを併用した治療の効果は、世界的にもまだ確立されていない。ただし、長期的に見ても手術と匹敵する効果が期待されている。

「10~15年くらいの経過を見た多施設の長期成績が出てくるのを待ちたいですね」

患者さんの選択肢がさらに増えることを期待したい。


1 2

同じカテゴリーの最新記事