小社主催・市民公開講座パネルディスカッション あきらめないで。前立腺がんはどんな状態でも治療法はある!
放射線治療後の症状はいつ起きたかが問題

白木 放射線治療についてですが、治療後何年くらい再発がなければ完治といえるのか、という質問です。
丸山 手術を含め、完治ということはないと私は思っています。とくに放射線治療の場合、前立腺が残っているので、20年、30年経過するうちに、PSAが上がってくるのではないかと思います。しかし、たとえPSAが上がったとしても、そこからいくらでも治療を行うことができます。したがって、何10年も先のことを考える必要はなく、自分のがんに合った治療法を選択するのがいいと思います。
白木 小線源療法を受けた方からの質問です。頻尿やお通じが近いということで悩んでいるが、これを解消する方法はないでしょうか、とのおたずねです。
吉野 この症状が、治療後のどの時期に現れているのかが問題です。放射線治療を受けた後、こうした症状は必ずといっていいほど出ますが、治療後1~3カ月をピークに、自然に治っていきます。したがって、治療後間もない時期だったら、ちょっと我慢していればいいでしょう。ところが、治療後1~2年でこのような症状が出てきたのであれば、放射線治療による晩期症状の可能性があります。尿道が細くなっているのではないか、直腸に炎症が起きているのではないかということを考えなければなりません。症状が現れたのが、治療後のどの時期かによって、対応はかなり違ってきます。
ホルモン治療はどうなったら終了か

白木 ホルモン治療を始めてから、PSAがずっと下がっているのだが、治療はいつまで続けたらいいのでしょうか、という質問があります。
丸山 外来でもこの質問をよく受けます。PSAが低い値で落ち着いている方には、5年を過ぎたあたりから、少し中断してみましょうか、という提案をしています。薬をやめてもPSAが上がってこない人もいますが、1~2割はまた徐々に上がってきます。ただ、このような人も、再び薬を始めれば、また元のように下がっていきます。副作用もありますし、金銭的にも安い薬ではないので、5年たってPSAが低い値で落ち着いている場合には、やめることを考えてみていいと思います。
白木 ホルモン治療でうつ状態になる人がいます。それを改善するいい方法はありませんか、という質問です。
吉野 ホルモン治療を受けていて、元気がない、気分がすぐれない、頭が痛い、といった症状がある場合、本当にそれがホルモン治療の影響かどうかを調べておく必要があります。本当のうつ病が隠れていることもあるからです。薬の影響かどうかを調べるためには、状態の落ち着いている時期に薬をやめてみるのも1つの手ですね。それによってホルモンバランスが少し変わり、うつ状態が改善する場合があります。PSAが変動しないこともありますが、上がってきた場合には、ホルモン治療を再開します。PSAが落ち着いていれば、このようにして様子を見るのがいいと思います。
手術後5年以上たってのPSA上昇はあわてない
白木 次は再発や転移に関する質問です。手術をしたが、その後、PSAが上がってきました。今は、ホルモン治療をしてみてはと言われていますが、どうしたらいいでしょうか、という質問です。
吉野 時間の要素を入れて考える必要があるだろうと思います。手術後、PSAがどこまで下がったか、手術をしたときのがんの悪性度やPSAはどのくらいだったか、ということを考える必要があります。悪性度の低いおとなしいがんで、PSAが0.1を超えるまでに5年以上かかったものに関しては、まだ何もしなくていいだろうと思います。
PSAがゆっくりと時間をかけて上がってきたものに関しては、数値が上がったからすぐに治療が必要というわけではありません。ただし、手術後2年以内に上がってきた場合には、注意が必要です。どこかに再発の病巣が隠れている可能性がかなり高いといえます。
白木 今の例は手術後の上昇ですが、放射線治療後にPSAが少し上がってきた場合、どう判断したらいいでしょうか。
丸山 放射線治療では、PSAはゼロにはなりませんし、治療後1~2年は、再発ではないのに数値だけが少し上がることがあります。何もしなくても下がってくるのがほとんどで、PSAが上がってくるのはごくまれです。放射線治療後は、数値が少し上がったからといって、追加の検査をしたり、治療を開始したりするのではなく、少し様子を見ていていいと思います。
骨転移がある人は転倒に注意する

白木 骨転移を起こす患者さんが多くいますが、骨転移が起きたら、生活でどんなことに注意すべきですか、という質問です。
吉野 ホルモン治療などで骨塩量が下がっているところに転移が起きた場合には、転倒に注意する必要があります。ただし、外出するなということではなく、適度に体を動かすことは必要です。転倒して骨折してしまうと、折れた骨はなかなかくっつきません。年をとってからの骨折は、どんながんよりも余命を短くするというデータもあります。まず骨折しない生活を心がけることが大切です。治療ではビスホスホネート製剤が使われますが、患者さんにできることで最も重要なのは、転倒などによる骨折を防ぐことです。
白木 前立腺がんでは、どのような病態でも、どのような病期でも、やるべき治療があります。治療を選択したり、主治医と相談したりするとき、この市民講座で学んだ知識が役立ってくれればよいと思っています。
(構成/柄川昭彦)
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