内視鏡手術の操作を、より精密に行うロボット手術も普及へ 根治も可能――打つ手の多い早期前立腺がん治療
ロボット手術が導入され始めた
手術にはいくつかの方法がありますが、「恥骨後式前立腺全摘除術」は従来から行われてきた開腹手術です。へその下から恥骨の上まで15~20センチメートル切開します。手術時間は3~4時間程度で、2週間程度の入院が必要になります。
いくつかの施設では、大きく開腹しない「腹腔鏡手術」も行われています。おなかに小さな孔をいくつか開け、そこから腹腔鏡や手術器具を入れ、前立腺を切除します。手術による痛みが軽く、開腹手術に比べて出血量が少なくてすむといわれています。ただ、開腹手術よりやや時間がかかり、技術的に難しいという問題があります。
この問題を解決し、アメリカを中心に広まっているのが「ロボット手術」です。内視鏡手術の操作を、容易に、かつ精密に行うことができるという特徴があります。3Dハイビジョンモニターで立体画像を見ながら、手術を行います。自分の手と同じように自由に鉗子を動かせ、3本の鉗子をほぼ同時に使うことができます。
アメリカでは、前立腺がん手術の4分の3以上が、すでにロボット手術になっています(08年データ)。それに対し、日本では、藤田保健衛生大学病院や名古屋大学医学部付属病院をはじめ、全国で10数カ所の限られた医療機関でしかこの医療機器はなく、これからの治療といえます。
放射線治療には2つの照射方法がある
放射線治療は手術に比べて体への負担が軽いため、何らかの理由で手術ができない人や、高齢の患者さんに向いています。照射方法には、体の外から照射する「外照射」と、体の内側から照射する「組織内照射」があります。外照射は従来から行われていた治療で、外来でできます。ただし、1カ月半~2カ月の通院が必要です。
治療中あるいは治療直後に起きる早期合併症には、皮膚の炎症、排尿時痛、排尿困難などがあります。大腸の近くなので、大腸の障害が現れることもあります。これらは、治療後数カ月でほとんどが自然に治ります。
治療後半年~数年で起こる晩期合併症もあり、尿道が狭くなる尿道狭窄や、直腸の潰瘍など��起こることもあります。
こうした副作用をなるべく軽減し、より効率よく前立腺に放射線を照射するため、重粒子線や陽子線を使った粒子線治療、IMRTやトモセラピーなどの強度変調放射線治療も行われています。
組織内照射は「小線源療法」とも呼ばれています。数ミリ程度の小さな線源を前立腺の中に70~80本入れ、そこから出る放射線でがんを死滅させます。3~4日間の入院が必要ですが、治療時間は1~2時間程度で、退院した翌日から普通の生活を送ることができます。
ホルモン治療は全身に効き高齢者の治療に最適
前立腺がんの増殖には男性ホルモンがかかわっているので、男性ホルモンの働きを抑え、がんの増殖を抑制するのがホルモン治療です。手術などと比べると、体への負担が非常に小さく、高齢者の治療に適しています。また、全身治療なので、進行がんの患者さんの第1選択の治療法となっています。
ホルモン治療には、2つの方法があります。1つは、男性ホルモンの分泌そのものを抑える方法です。男性ホルモンは精巣と副腎から分泌されています。そこで、手術で精巣を取ったり、注射で精巣からのホルモン分泌を抑えたりします。女性ホルモン薬を服用する方法もあります。
それでも副腎からの男性ホルモン分泌があります。そこでもう1つの方法として、副腎から分泌される男性ホルモンが、前立腺に作用するのをブロックする薬が使われることもあります。
前立腺がんの治療をすべて並べてみました。柱となるのは、手術、放射線治療、ホルモン治療の3つ。治療法の選択に当たっては、主治医とよく話し合うことをお勧めします。
治療法 | 主な特徴と適応 | 主な副作用 |
---|---|---|
手術 (前立腺全摘除術) |
|
|
放射線治療 |
|
|
ホルモン治療 |
|
|
西山 勉ら:臨床泌尿器科 ,57(7), 469-471, 2003
(構成/柄川昭彦)
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