骨転移の治療をすることは溶骨の防止だけでなく、がんの進行も抑える 病状をコントロールして長く元気に過ごそう! 再発・転移の前立腺がん治療
抗がん剤治療で、1年後でも半数はがんの進行が停止
ホルモン治療で十分な治療効果が得られなくなったら、抗がん剤治療が行われます。
前立腺がんの治療に使われる抗がん剤はタキソテール(一般名ドセタキセル)です。この薬を使うことで、ホルモン治療が効かなくなった人のうち、3分の2はPSAが低下します。
副作用として、食欲不振や脱毛などが起こることがあります。しかし、副作用が特別強い抗がん剤ではなく、高齢の患者さんでも比較的安全に使うことができます。
抗がん剤治療を行うと、次のような効果が得られます。
半数の患者さんが、1年後でも病気の進行が止まっています。また、半数の患者さんが、2年半後でも生存しています。
抗がん剤治療によるPSAの低下の度合いと患者さんの生存の関係を調べたデータもあります。それによると、PSAが大幅に下がった人は、そうでない人に比べ、がんの進行が止まっている期間も長く、生存期間も長くなることがわかっています。
どのような人が、抗がん剤を長く続けられるかを調べたデータもあります。それによると、抗がん剤治療を始めるまでの治療期間が3年以上の人は、3年未満の人より長く治療できる可能性があります。
また、年齢が70歳未満の人は、70歳以上の人より、長く続けられることがわかっています。つまり、がんの進行が遅かった人や、あまり高齢でない人のほうが、抗がん剤がよく効くことが多いのです。
緩和治療で重要なのは骨転移に対する治療
緩和治療を始めるというと、医師に見捨てられたのだと思う患者さんが多いのですが、決してそうではありません。緩和治療をなるべく早くから始め、痛みを抑えたり、合併症を防いだりすることは、患者さんのQOLを高めるのに役立ちます。また、早い時期から緩和治療をきちんと行ったほうが、生存期間が延びるというデータも報告されています。
緩和治療の中心となるのは、骨転移に対する治療です。骨転移に対する治療薬として、ゾメタ(一般名ゾレドロン酸)が登場してきました。これはビスホスホネートという薬剤の一種で、骨粗鬆症の治療にも使われています。骨の破骨細胞の働きを抑えることで、骨転移の進行を抑える働きをします。
骨には破骨細胞という骨を壊す細胞があり、常に古い骨を溶かし、骨を新しくするのに役立っています。がん細胞は、この破骨細胞を働かせることで骨を壊し、自分が住みつくスペースを作り出すのです。そのため、転移したがんが増殖すると、どんどん骨は弱くなってしまいます。ゾメタは、破骨細胞の作用を妨害することで、がんが骨に住みつきにくくする働きをしています。

骨が減ってきている患者さんは、ビスホスホネートによる治療を受けることで、骨が増えて強くなることがわかっています。そのため、治療ガイドラインでは、このような患者さんに対するビスホスホネートの使用が、強く推奨されています。

また、ビスホスホネートを使うことで得られる効果は、骨折などが予防できる、骨が減るのを防げる、痛みが軽くなる、といったことだけではありません。新たな骨転移を予防できる可能性がありますし、がんの進行を抑える働きもあるのではないかと言われています。
ビスホスホネートによる治療で気をつけるべきことは、あごの骨が溶けるという副作用です。歯や口の中の衛生環境をよい状態に保ち、十分に注意しながら使用することが大切です。
骨転移の放射線治療には「照射」と「注射」がある
骨転移に対する放射線治療では、転移した部位に体の外から放射線を照射する治療が行われてきました。痛みを抑える優れた効果を持つ治療ですが、同じ部位には1回しか治療できないという欠点がありました。
そこで登場してきたのが、注射による放射線治療です。メタストロン(一般名スロトンチウム-89)という放射性物質を含む薬を注射すると、それが血流に乗って骨転移部に運ばれていきます。ストロンチウムはカルシウムと同じような働きをする物質なので、自然と骨に取り込まれるのです。
骨に入ったストロンチウムは、そこにすみついているがん細胞に放射線を照射します。この放射線治療により、骨の痛みが減った、痛み止めの薬を減らすことができた、という人がたくさんいます。
ここでは骨転移に対する緩和治療として、ビスホスホネートによる治療と放射線治療について解説しましたが、痛みをしっかり止めるためには薬物療法も重要です。
きちんと鎮痛薬を使用することで、QOLを向上させることができます。モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルなどの医療用麻薬も上手に使うとよいでしょう。
(構成/柄川昭彦)
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