がんとうまく付き合っていくためには生活習慣の改善が必要 あるって本当!? 前立腺がんで食べて良いもの、良くないもの
エビデンスが出始めた前立腺がんと食品の関係

そのほか、乳製品と前立腺がんの関連性についての研究報告もあります。
わが国の厚生労働省研究班の多目的コホート研究(以下厚労省研究/日本全国各地の住民を対象にした大規模な疫学調査)においても、乳製品をよく摂取するグループで前立腺がんになりやすいという結果が出ています。意外と知られていないですが、コップ1杯の牛乳の脂肪量は、ベーコン5枚分に相当するということです。
「前立腺がんでは、意識的に低脂肪乳を摂るとか、トランス脂肪酸を避けるといったことを心がけるべきでしょう」
トランス脂肪酸の危険性は、欧米では早くから指摘され、規制や使用禁止といった措置が取られていますが、わが国ではその対策が遅れています。
しかし、2010年の年末に、セブンイレブンがトランス脂肪酸を全廃するとの方針を表明するなど、各社でトランス脂肪酸に対する対策が進みつつあります。2011年の夏頃を目処にトランス脂肪酸使用の表示を義務化することを法整備するという動きもあるようです。
一方、オリーブオイルやEPA、DHAのような魚油のオメガ3系の油は、前立腺がんのリスクを軽減するといいます。
ヨーロッパの中でも、イタリアやスペインなどオリーブオイルを多用している国々は、前立腺がんの発症が比較的少ないのです。
また、前立腺がんの予防について海外で数々の報告があるのがトマト。トマトの摂取量が多いイタリア人は、前立腺がん予防において、優等生といえるかもしれません。
わが国の研究ではトマトに対する評価の報告はありませんが、「40歳以上になったら毎日の食生活の中にトマトジュースを取り入れることをお勧めしています」と堀江さんは話します。
本来の日本食に前立腺がんを防ぐ効果が
日本人の前立腺がんは、急増しているとはいうものの、まだ欧米に比べて発症率が低いのは、豆腐など大豆食品を多く摂るためだといわれています。大豆に含まれるイソフラボンが予防に貢献している���です。
大豆による前立腺がんの予防効果については、前述の厚労省研究でも「大豆製品・イソフラボンをよく摂取するグループで限局性前立腺がんのリスクが低下した」という結果が出ています。また多くの実験、研究結果を蓄積し、統計学的に意味のある結果を導き出すメタ解析でも、大豆摂取は前立腺がんの危険性を約30パーセント低減させると報告されています。
そのほか厚労省研究では、緑茶をよく飲むグループで進行前立腺がんのリスクが低下するという報告もあります。緑茶に含まれるカテキンはアポトーシス(がんの細胞自然死)を誘導し、前立腺がんのリスクを高める男性ホルモンであるテストステロンのレベルを低下させるということです。
野菜摂取の前立腺がん予防の有効性については、「野菜・果物と前立腺がんのリスク軽減とは関連性なし」という疫学調査の結果がありますが(厚労省研究)、がん全般・生活習慣病という観点で考えた場合には、緑黄色野菜を摂ることは予防として重要であることは、さまざまな研究結果から立証されています。
とくに前立腺がんでは、ブロッコリー、わさび、かぶ、大根などのアブラナ科の野菜で、PSAが下がり、予防効果があるという報告があります。
堀江さんのチームでは、カレーのスパイスであるウコンの黄色色素成分であるクルクミンと大豆イソフラボンの同時摂取で、PSAの数値が5割ほど減少し、排尿もしやすくなったという研究結果も報告しています。
クルクミン+大豆イソフラボン(サプリメント)摂取 | ||||
患者さんの特徴とPSA値 | ||||
---|---|---|---|---|
サプリメント | 年齢 | PSA値 | PSA値 | |
摂取開始前 | 6カ月後 | |||
PSA<10 | サプリメント (28人) | 74 (61~86) | 6.1±1.9 | 5.9±2.6 |
プラセボ (32人) | 72 (50~82) | 5.2±2.2 | 4.8±2.2 | |
PSA>10 | サプリメント (15人) | 73 (59~82) | 18.8±12.4 | 10.2±6.2 |
プラセボ (10人) | 74 (71~84) | 17.0±8.4 | 14.2±7.2 |
生活習慣の変化もがんに影響
食生活と共に、前立腺がんとの関わりが強いといわれているのが肥満です。
わが国の調査(厚労省研究)では、「肥満指数(BMI)と身長は、前立腺がん発症のリスクと関連しないが、進行がんではリスクが少し上昇する」という結果が報告されています。
メタボリックシンドロームや生活習慣病の人が、前立腺がんのみならずがんになりやすいという点は、数多くの研究報告や臨床の現場において周知の事実ですので、きちんと認識しておくべきでしょう。
アメリカでは食事のみならず、生活習慣の変化ががんに及ぼす影響を調べた調査があります。
循環器専門医のディーン・オーニッシュ博士が、がん患者さんに緑黄色野菜と魚中心の食生活、1日30分のウォーキングを週6日行う有酸素運動、ストレスをなるべくためないように心がけた生活を12カ月続けてもらったところ、がんの進行を遅らせることができた、という報告をしています。
がん全般に目を向けてみましょう。がんは遺伝子異常で発症する病気です。この遺伝子異常を起こさせる原因は〝体を錆びさせる〟といわれる「活性酸素」です。生活習慣病や老化にも関わり、加齢臭の原因ともいわれる余分な活性酸素を体のなかに蓄積させると、がん発症の危険性を高めることになります。
活性酸素は、仕事のストレスなどで緊張状態が続き、交感神経が優位な状態や、タバコや紫外線といった外部からの刺激、肥満などによって蓄積されるため、その原因の1つひとつを除去していくことが大切なのです。
PSAを上げないライフスタイルを
リラックスした状態、副交感神経が優位になるためには、笑う、人と楽しく前向きなコミュニケーションをとる、好きな音楽を聴いたり、好きな映画を見たりする、お気に入りのものに触れる、温泉に入る、といったことを行ったり、適度な有酸素運動を行うと良いといわれています。
また、活性酸素の除去には緑黄色野菜や果物の摂取が有効だといわれています。野菜中心の食生活は、危険因子である肥満も軽減してくれるはずです。そして禁煙はいうまでもなく重要です。
現在、堀江さんのチームでは、「ライフスタイルの変化がPSA値を下げる」「ライフスタイルの改善が前立腺がんの成長を抑制する」ということを念頭におき、患者に生活習慣の改善を指導するプログラムも始めているということです。
他のがんと比べて、生存率の高いがんとして知られている、前立腺がん。だからこそ生命をおびやかすような状況を防ぎ、QOL(生活の質)を維持した生活を目指すことが大切です。そのためには、生活習慣病予防が前立腺がん予防および再発予防になることをきちんと認識し、食生活とともに生活習慣に留意した毎日を送ることが大事といえるでしょう。

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