前立腺がんになってもあわてない――治療法、その選択肢と選択方法とは これだけは知っておきたい! 前立腺がんの基礎知識

監修:赤倉功一郎 東京厚生年金病院泌尿器科部長
取材・文:半沢裕子
発行:2009年2月
更新:2013年4月

病期や悪性度だけでなく、ライフスタイルも選択要素

このように、とにかく治療法の選択肢が多いのが、前立腺がんです。患者さんはもちろん、医師も迷うことがあります。また、医師はどうしても自分が精通している治療を行いたいので、セカンドオピニオンを聞きに行っても、最初の医師と同じ治療を推奨されることは少なく、患者さんの迷いは深まるばかりかもしれません。

では、どうすればいいかというと、セカンドオピニオンを聞いたうえで、信頼関係の築ける医師と相談し、副作用や後遺症を我慢できる治療法、自分の生活にあった治療法を選択することだろうと思います。

たとえば、ある患者さんはIMRTの治療を勧められましたが、「長期間休んだら、会社がつぶれる」というので、2泊3日の入院ですむ密封小線源治療を選択されました。平均余命を考えて、体を痛めたり麻酔をしたりしないですむ「待機療法」を選ぶ方もいるでしょうし、「いやいや。私はどうしても100歳まで生きたいから、前立腺の全摘手術を受ける」という人もいるでしょう。

前立腺がんの治療法については、知れば知るほど迷うのが事実だろうと思います。それでも、患者さんも勉強をし、ご自分に最もあった治療法を選び、納得のいく治療を受けていただきたいと思います。

[各治療法の特徴]

治療法 主な特徴と適応 主な副作用
手術療法
(前立腺全摘除術)
●早期であれば、根治の可能性が最も高い
●限局がんでは、第1選択として用いられる
●他の治療に比べ、身体的な負担が大きい
●尿漏れ
●勃起障害 など
放射線療法
(外照射法)
●身体的な負担が少なく、外来で治療できる
●年齢を問わず治療が行える
●根治的治療の他に、症状緩和を目的に使われることもある
●排尿痛、���便困難
●尿道狭窄
●勃起障害 など
ホルモン療法 ●前立腺がんの進行を抑える治療法
●進行期の患者さんが中心
●手術や放射線療法と併用できる
●性機能障害
●筋力低下
●腹部脂肪の増加 など
参考資料・勝岡洋ら:日本臨床増刊号(前立腺疾患の臨床)、60,211-217,2002
西山勉ら:臨床泌尿器科,57(7),469-471,2003


腫瘍マーカーPSAは、前立腺がんになった人だけでなく、健康診断としても意味がある!

前立腺にがんができたり、炎症を起こしたりすると血液中に漏れ出す前立腺特異抗原(PSA)は、前立腺がんを見つける腫瘍マーカーとして、検診に取り入れられてきた。

しかし2008年、厚生労働省の研究班は「PSA検査が前立腺がんによる死亡率を下げるという証拠はない」との理由で、公共費用を投じての対策型検診(集団検診)は推奨しないとするガイドラインを発表した。

これに対して、死亡率減少は証明できていないが、初期に無症状である前立腺がんを、集団検診は早期に発見できるため、結果として進行がんを減少させている――との判断から、日本泌尿器科学会は「50歳以上の男性に定期的なPSA検診を勧める」とする独自のガイドラインを発表した。

PSAは感度のいい腫瘍マーカーで、多数行えばグレーゾーンの人も多数出る。結果として、無駄な検査や治療が増える――というのが厚労省の研究班の姿勢だ。これに対して、「検査結果により、積極的な治療も待機療法も選択することができる」とするのが、いわば学会の姿勢。患者さんの立場に立つと、学会のガイドラインのほうが、前立腺がんで苦しむ人を減らす役に立つのでは、と思われる。

ただし、議論が行われているのは、あくまでも健康な人の健診の話。「前立腺がんが確認された人にとって、PSAはこれ以上ないというくらい有用な腫瘍マーカー」(赤倉さん)とのことだ。きちんと定期的に検査を受け、PSA値の動きに応じて、必要な対策をとりたい。


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