小社主催前立腺がん市民公開講座パネルディスカッション 前立腺がんの治療は、打つ手が多く、あきらめないことが肝心!

総合司会:窪田吉信 横浜市立大学大学院医学研究科泌尿器病態学教授
パネリスト:上村博司 横浜市立大学大学院医学研究科泌尿器病態学准教授
佐藤威文 北里大学医学部泌尿器科講師
豊田博慈 前立腺がん患者
藤枝紫郎 前立腺がん患者
発行:2009年2月
更新:2013年4月

放射線治療は初回が大事QOL上、2回は無理

写真:熱心に聴講する会場一杯のがん患者さんとその家族の人たち
熱心に聴講する会場一杯のがん患者さんとその家族の人たち

窪田 次は放射線治療ですが、小線源療法とIMRTを比較して、有利・不利はどうでしょうか。

上村 いちばんの違いは、小線源療法は3泊4日~4泊5日と、短期間で済む点です。IMRTは毎日2グレイずつ、2カ月の通院治療になります。

窪田 重粒子線治療を受けたいが、その前に放射線治療ができるのか、という質問があります。豊田さんは重粒子線治療を受けておられますが、何か条件はありましたか。

豊田 私の場合、リュープリン(一般名リュープロレリン)の注射をして半年以内に重粒子線治療をする、という条件でした。その順番を逆にすると、治療後にPSA値が下がっても、それがリュープリンのためか、重粒子線治療のためか、よくわからないからだということです。X線治療を行ったあとに重粒子線治療はできません。というのは、X線を当てると、その部分にケロイド状の影響が出ます。そこにまた重粒子線を当てると、ケロイドを倍加させる危険性があるからだと思います。

窪田 放射線治療をやるからには、初回が重要です。X線治療をやったあとでは、重粒子線治療は受けられないと思います。現在の放射線治療は、できるだけ正常組��に影響を及ぼさないように工夫されています。しかし、まだ周囲の膀胱、直腸に少しはかかります。そこにもう1度かけると、大変なことになりますから、放射線を当てるのは、原則、1回と考えて良いでしょう。

ホルモン療法は継続したほうが延命効果がある

写真:会場からの質問に答える上村さん(左)と佐藤さん
会場からの質問に答える上村さん(左)と佐藤さん

窪田 次に、現在ホルモン療法の治療中で、PSA値は0コンマ以下だが、転移の心配はないのでしょうか。

佐藤 ホルモン療法は全身に効きますから、転移があったとしても、PSA値を下げます。ですから、ホルモン療法のあと、PSA値が下がったからといって、転移はないと判断することはできません。ホルモン療法に入る前のPSA値が10以下で、グリソンスコアが低いがんなどでは、骨シンチを省く施設もありますから、治療に入る前のPSA値は参考になります。

窪田 次に、2006年8月にPSA値が14.03 となり、ゾラデックス(一般名ゴセレリン酢酸塩)、カソデックス(一般名ビカルタミド)の治療を開始し、翌年6月にはPSA値は0.008になった。現在も0.008ですが、この治療はどのくらいの期間、続けるものですか。

上村 PSA値が下がってきて安定すると、この辺で薬をやめたいと言われる患者さんが、結構いらっしゃいますが、私は基本的には今の治療を継続していただきます。海外の調査でも、PSAを下げている薬を継続したほうが延命効果がある、という結果が出ています。ただ、副作用が強いときは、休み休み投与する間欠療法にします。

窪田 ホルモン療法はものすごく効きますが、途中でやめるとPSA値が上がる可能性があります。注意深い観察が必要ですね。
こういう質問があります。ホルモン療法をしていますが、突然汗が顔や頭から噴き出してきます。止める方法はありませんか。

上村 のぼせに関しては、私は漢方薬や抗うつ剤に近い薬を出しています。ただ、これは完全ではなく、効く方と効かない方がいます。効かない方には、のぼせを我慢してもらっています。人によっては数年で減弱してきます。

佐藤 副作用を抑えるために薬を飲むと、またその追加した薬剤による副作用に悩まされることもあり、堂々巡りになってしまいます。ですから、ホットフラッシュは普通に出るものだと、ゆったり構えて受け入れれば、気持ちも楽になるのではないでしょうか。

骨転移に対する治療はビスホスホネート

写真:闘病体験を語る藤枝さん(左)と豊田さん
闘病体験を語る藤枝さん(左)と豊田さん

窪田 再発・再燃しても、先ほど佐藤先生から詳しくお話しいただきましたように、基本的にはあわてないことが大切ですが、骨転移のある方の質問です。ホルモン療法をやってからすでに1年3カ月になっていますが、カソデックスの効果はなくなり、今オダイン(一般名フルタミド)を使用中です。今後の治療法は?

佐藤 どれが正しいというわけではありませんが、ステロイド、エストラムスチン(一般名)といった薬を使って病気をコントロールでき、進行を抑えることができます。そのあとにはタキサン系の抗がん剤を使います。PSAの値や臨床的な症状を見ながら、切り替えのタイミングを見極めていくことになります。

窪田 初期の頃のホルモン療法が効かなくなっても、交替療法(ホルモン療法の薬剤を替える)によってコントロールできますし、そのあとにも次のホルモン剤や、制がん剤など、いろいろな効果がある治療法があるということです。
次に、2007年7月に前立腺がんと診断され、骨シンチで胸椎と坐骨に転移が認められました。現在、ホルモン療法で平静を保っていますが、骨に対する治療は何もしなくていいのでしょうか。

佐藤 基本的に、がんに対する治療はホルモン療法が主になります。ただ、ホルモン療法による骨粗鬆症の問題が1つあります。もう1つ、骨転移そのものに対する治療法としては、ゾメタ(一般名ゾレドロン酸)という薬剤を使う方法があります。

窪田 使えるものは上手く使っていくということですね。次に、2007年8月に前立腺がんと診断され、骨にも転移していると言われました。現在ホルモン療法を行っていますが、PSA値は344です。仕事を続けており、家族も心配しています。どうしたらいいのでしょうか。

上村 タキソテール(一般名ドセタキセル)というタキサン系の抗がん剤が、つい最近、保険適用になりましたので、急いでその治療を始めるべきだと思います。タキソテールは、白血球の減少、脱毛などの副作用がありますが、他薬に比べ副作用が少ないのが特長です。また、外来通院による治療が可能です。1回3~4週間隔で続けますが、仕事をしながら通えます。それに、ビスホスホネート剤のゾメタの注射で骨転移を抑えていけば、現状での理想的な治療ができると思います。

窪田 次に、2004年12月に前立腺がん骨転移を告知されました。現在、ホルモン療法と、一部抗がん剤治療を受けています。仕事もしており、今後がんとどう付き合っていけばいいのでしょうか。

佐藤 PSA値のコントロールができているのであれば、お仕事をしながら、現状を維持していくことが大事です。それから、骨転移については、骨の状況がどうなのか、たとえば骨密度が急激に下がっていないか、有害な事象が起きていないかなどに注意を払う必要があります。

窪田 がんとの付き合い方について、藤枝さんはいかがですか。

藤枝 現在、私はホルモン療法だけですが、担当医の先生からはゾメタの投与を勧められています。ただ、保険適用とは言っても、4週間で1.2万円ほどの出費増になりますから、リタイア組としては複雑な思いです。しかし、自分自身の体のことですから2009年度からリュープリンとの併用をお願いする予定です。また、前立腺がんと付き合う上で、骨のケアが大切だと思い、最近は片足1.3キログラムの靴を履いて鍛えています。

窪田 前立腺がんは初期治療が大事です。前立腺がんの治療には、次の手、次の手がたくさんあり、新たな治療法も研究されています。決してあきらめないでいただきたいと思います。

(構成/江口 敏)


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