ホルモン療法は前立腺がんの中心的な治療法 MAB療法は治療効果が高く、前立腺がんの進行を遅らせる
効果がなくなったときもまだ治療法はある
前立腺がんのホルモン療法を続けていくと、治療効果がなくなることがあります。これをホルモン抵抗性といいます。
前立腺がんの細胞には、ホルモンに依存して増殖するタイプと、ホルモンに依存しないタイプがあります。ホルモン療法を行うと、ホルモン依存性細胞が減ることでがんは小さくなります。ところが、ホルモン非依存性細胞がわずかに残り、それが増殖してくるのです。そのため、この増殖したがんには、ホルモン療法が効かないのです。
また、最初から量の多いがんは、抵抗性が現れやすい傾向があります。その反面、最初からがんの量が少ない場合は、抵抗性が起こらないことが多いようです。ホルモン抵抗性に対する治療法が、いろいろ開発されています。
抗アンドロゲン剤中止療法
MAB療法を続けてきて抵抗性が現れたときに行う治療法で、抗アンドロゲン薬だけ中止します。抗アンドロゲン薬は、がん細胞のアンドロゲン受容体に働きかけることで、アンドロゲンが作用しないようにする薬。ところが、がん細胞の受容体が変化することによって、抗アンドロゲン薬が、がんを増殖させていることが考えられます。そこで、アンドロゲン薬を中止することで、がんが弱らせるようにします。
間欠的アンドロゲン除去療法
これはホルモン抵抗性が起きないようにする工夫です。ホルモン療法を継続して行うのではなく、ある程度PSAが下がったら、そこで治療を中断します。そして、しばらくしてPSAが上がってきたら、治療をスタートします。
がんが大きくなったら治療するということを、何度も繰り返していくのです。
この治療法は、経済的に優れ、副作用の軽減にもつながるといわれています。ただし、まだ研究段階の治療法です。
ステロイド治療
ホルモン療法が効かなくなると、貧血、疲労、痛みといったがん特有の症状が現れ、患者のQOL(生活の質)は低下します。これらの症状は、がんが大きくなったことで起きるのではなく、がんによる炎症が原因だと考えられるようになってきました。そこで、これら炎症を抑えるために、ステロイド薬による治療が行われることがあります。
ステロイド治療を行う���、PSA値が75パーセント以上減少する人が、全体の51パーセントを占めます。その場合、有効期間は10カ月間でした。50パーセント以上減少する人は全体の62パーセントに当たり、有効期間は9カ月間です。50パーセント以下だが減少が見られたのは、全体の24パーセントで、有効期間は3カ月間。無効の人は14パーセントでした。
症例(図8)
平成11年に、他院でMAB療法を始めた患者さんです。平成16年に当院を受診したときには、PSAが100を超える状態でした。まず、抗アンドロゲン除去療法を行ったところ、よい結果が現れました。ところが、翌年にはPSAが上がり始めたため、平成17年から女性ホルモン薬のエストラサイトを使った治療を始めましたが、効果がありませんでした。その結果から、これはホルモン療法に抵抗性のあるがんであると判断し、ステロイド薬のデカドロンによる治療を開始しました。
この治療が非常に効果的でした。この患者さんは、その後、ステロイド薬以外に抗がん剤なども使い、治療を続けています。現在でも元気で、とくに問題なく日常生活を送っています。

ホルモン療法は、体への負担が小さく、効果の高い優れた治療法です。継続した場合に起きる抵抗性が大きな問題でしたが、それに対する治療法も次々と開発されています。
(構成/柄川昭彦)
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