ADT+タキソテール+ザイティガ併用療法が有効! ホルモン感受性前立腺がんの生存期間を延ばした新しい薬物療法

監修●上村博司 横浜市立大学附属市民総合医療センター泌尿器・腎移植科部長(診療教授)
取材・文●柄川昭彦
発行:2021年12月
更新:2021年12月


新しい併用療法の臨床試験がいくつも進められている

「PEACE-1試験」の結果が注目されているが、現在進行中で結果が待たれている臨床試験がいくつもあるという。その中で、2022年にも結果が出ると見られているのが「ARASENS試験」である。

転移のあるホルモン感受性前立腺がんの患者さんを対象にして、「ADT+タキソテール+ニュベクオ(一般名ダロルタミド)併用群」の有効性と安全性を、「ADT+タキソテール併用群」と比較する臨床試験である。

「ANASENS試験はPEACE-1試験とよく似た臨床試験で、いい結果が出るのではないかと期待されています。国際的な試験で、日本も参加しています。ニュベクオは、イクスタンジ(一般名エンザルタミド)やアーリーダ(一般名アパルタミド)と同じようなアンドロゲン受容体阻害薬です」(上村さん)

前立腺がんの治療薬は、2014年以降、さまざまなタイプの薬剤が登場してきている(図4)。

新規ホルモン薬としては、ザイティガのようなアンドロゲン合成阻害薬もあれば、イクスタンジ、アーリーダ、ニュベクオのような抗アンドロゲン薬もある。細胞傷害性抗がん薬のタキソテールもある。さらに放射線治療薬もあれば、DNA修復遺伝子を阻害するPARP阻害薬も登場してきている。

これらの薬剤の組み合わせた治療や、さらには前立腺がんの治療薬としてはまだ使われていない免疫チェックポイント阻害薬と組み合わせた治療についても、多くの臨床試験が進行中だという。

「免疫チェックポイント阻害薬と新規ホルモン薬との組み合わせや、免疫チェックポイント阻害薬と細胞傷害性抗がん薬との組み合わせなどの臨床試験は、すでに国内でも行われています。PARP阻害薬と新規ホルモン薬の臨床試験も、海外ではすでに行われています。それから、PSMA(前立腺特異的膜抗原)を標的としたルテチウムを使用する治療についても、国内で臨床試験が始まります。結果が出るまでには数年単位の時間がかかりますが、期待できる治療薬と考えられています」(上村さん)

前立腺がんの薬物療法は多くの治療薬が登場し、それらを組み合わせることで、これまで以上の効果が確認されるようになってい��。しばらくはそうした報告が続きそうである。

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