大規模追跡調査で10年生存率90%の好成績 前立腺がんの小線源療法の現在
有効性と副作用から治療法を選択する
小線源療法の有効性については、前に紹介した長期治療成績により、かなり良好であることがわかります。ただ、有効性に関しては、手術療法でも良好な成績が得られています。治療法を選択するには、副作用についても考慮する必要がありそうです。
小線源療法は小さな線源を前立腺に入れたままにするため、それによる副作用を気にする人が少なくありません。しかし、とくに問題はないようです。
「シード線源は前立腺に入れたままになりますが、線源から出る放射線量は徐々に弱まっていきます。約2カ月で放射線量は半分になり、1年経つとほぼゼロになります。また、治療直後であっても周囲の人が放射線の被曝を受けるようなことはないので、日常生活で制限されることはとくにありません。強いて言えば、幼児を膝の上に抱いたりするのは、線源と幼児の距離が近くなってしまうので、治療後2カ月くらいまでは、避けたほうがよいとされています」(画像4)

手術療法と比較した場合、小線源療法が優れているのは治療期間が短いことに加え、副作用の少なさです。切開しないので体への侵襲が少ないのはもちろんですが、性機能障害や尿失禁などの障害が起きにくいのも、小線源療法が選択される大きな要因になっています。
「性機能の温存に関して、欧米人に比べて日本人はあまり気にしない人が多いのですが、小線源療法は性機能を温存しやすいのが特徴です。手術前とまったく変わらないというわけではなく、若干は落ちるものの、かなり保たれることが多いのです。手術療法もロボット支援手術が行われるようになって、機能を温存しやすくなっているのは事実です。ただ、手術では前立腺と一緒に精嚢(せいのう)も摘出するため、射精はできなくなります。手術後の尿失禁も、ロボット支援手術になって軽くはなっていますが、起こりうる合併症です。その点、小線源療法ですと、尿失禁が起こることはあまりありません」
ただ、排尿への影響がないわけではありません。もともと尿が出にくいなどの排尿障害がある患者さんの場合、小線源療法を行うと、症状が増悪することがあります。治療法の選択に当たっては、治療前の排尿状態は重要で、それが悪い場合には、小線源療法は勧められない場合もあります。
「他にも、小線源療法の副作用としては、放射線による尿道炎や膀胱炎があります。前立腺のすぐ背側には直腸があるため、直腸炎が起きることもあります。このように、手術療法とはまったく異なる副作用が起こる場合があるのです。そういったことをよく知ったうえで、自分にとっては何が重要なのかを考え、治療法を選択するとよいでしょう。治療前に、治療方法を十分に検討することが大切です」
どのような治療の選択肢があり、それぞれどのような特徴があるのかをよく理解し、自分にとって何が重要なのかをよく考えたうえで、治療法を選択するようにしたいものです。
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