前立腺がんの基礎知識:1人ひとりに合った治療法を! これだけは知っておきたい! 前立腺がんの基礎知識
Q10 ホルモン療法って何?
ホルモン療法は男性ホルモン(アンドロゲン)をシャットアウトする治療法です。前立腺がんが男性ホルモンの刺激で増殖するためですが、前立腺がんの患者さんはほぼ100%がアンドロゲン・レセプター(男性ホルモンに反応する受容体)をもつので、基本的によく効きます。かつては睾丸を両方とる去勢術も行われました。去勢は効果が大きく、今日も患者さんの希望で行うこともありますが、現在では多くの場合ホルモン薬による治療です。
ただし、ホルモン療法は根治をめざす治療ではありません。単独でホルモン療法が行われるのは、進行がんや転移のある場合です(高齢な患者さんに行われることもある)。また、抗がん薬は今のところ、ホルモン療法の効果がなくなったときなどに使われます。
Q11 根治するためにはどうしたらいいの?
前立腺がんで根治をめざす場合には、手術か放射線治療のどちらかを行います。奏効率にはほぼ差がないので、病状と患者さんの希望で選択します。たとえば、仕事が忙しく、治療時間がとれない方は、2泊3日程度の入院で終了する小線源療法がいいかもしれません。放射線外照射は7週間毎日通わなければなりませんが、痛みも傷もありません。他に治療の後遺症も検討します(Q12参照)。また、手術を選択すると、再発時に放射線治療を行える可能性がありますが、放射線治療後に手術を行うことは難しくなります。そうした点も考慮するといいでしょう。
Q12 治療の後遺症や副作用は?
残念ながら、治療には副作用や後遺症がつきものです。手術では尿失禁や勃起障害、放射線治療では直腸出血や排便痛、排尿痛などがでることがあります。ですから、性機能を残したい、職場で排尿障害が起きると困るなど、避けたい後遺症や副作用を主治医に伝えましょう。進行具合にもよりますが、それによって、治療法の選択も変わってくることも考えられます。
手術では骨盤内のリンパ節を一緒に切除するため、リンパ浮腫のリスクもあります。リンパ浮腫とはリンパの流れがとどこおり、ひどい場合は足がゾウのように腫れる症状ですが、一番の対処法は「予防すること」です。傷をつくらない、マッサージを行���、弾性ストッキングを装着するなど具体的な方法はいくつかありますが、今はリンパ浮腫の指導が保険診療ですので、手術後には看護師などから説明があります。それにしたがって上手にケアし、発症させないことが大事です。
Q13 転移、再発したがんの治療は?
発見されたときリンパ節や別の臓器に転移がある場合は、ホルモン療法を行います。手術や放射線治療を併用することもあります。
根治をめざす治療ではないと知り、ショックを受ける患者さんもいますが、前立腺がんはホルモン療法がよく効きます。ホルモン療法で何年も元気に過ごされる方もいます。
治療が効かなくなり、がんが再発した場合は、受けてきた治療によってその後の治療が違ってきます。手術のあとなら放射線治療、ホルモン療法(併用もふくむ)を検討します。
放射線治療だと手術ができないことが多いので、ホルモン療法を行います。ホルモン療法が効かなくなったときは、別のホルモン薬に替えるか、抗がん薬治療を行うのが一般的です。使われる抗がん薬は主にタキソテール*です。
ホルモン療法は根治をめざす治療ではないので、「再発」ではなく「再燃」という。
*タキソテール=一般名ドセタキセル
Q14 骨転移したときの治療は?

がん細胞が骨に転移すると、痛み、骨折、麻痺などの症状が出ます。その進行を抑え、骨の状態をよくする治療を行います。ホルモン療法を受けたことのない患者さんには、ホルモン療法を行います。男性ホルモンの影響の強い前立腺がんでは、転移でできた骨病巣も、男性ホルモンを絶つことで劇的に小さくなることがあります。ホルモン療法が効かなくなった患者さんは、放射線治療や化学療法(薬物療法)を行います。痛みなどのコントロールに効果があります。
放射線治療は、痛いところに外側から放射線をあてる外照射も行いますが、放射性物質のストロンチウムを点滴注射することもあります。ストロンチウムは代謝の盛んな骨に集まる性質のため骨転移部に集中し、放射線を出して痛みを抑えます。
薬物療法としては骨吸収阻害剤のゾメタ*などを点滴します。最近は類似の効果の薬(ランマーク*)も保険で使えるようになったので、副作用や患者さんの体調などにより使い分けるといいでしょう。
*ゾメタ=一般名ゾレドロン酸 *ランマーク=一般名デノスマブ
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