進化する腹膜播種の化学療法 腹膜播種に対する3つの腹腔内投与療法が先進医療に
SOX療法にパクリタキセルを増量して併用
2つ目が、「TS-1/*オキサリプラチン+パクリタキセル腹腔内投与併用療法」だ。昨年(2014年)2月に先進医療となった。
研究者らは、進行・再発胃がんの標準治療であるTS-1+シスプラチン併用療法の次の標準治療候補となっているTS-1+オキサリプラチン併用療法(SOX療法)に着目し、パクリタキセル腹腔内投与との併用療法を考案した。
先進医療第Ⅱ相試験はTS-1の経口投与とオキサリプラチンの経静脈投与とパクリタキセルの腹腔内投与の併用で、服用法は21日を1コースとし、TS-1を14日間内服した後、7日間休薬する。併せて、第1日目にオキサリプラチンを経静脈投与し、第1日目と第8日目にパクリタキセルを腹腔内に投与する。このサイクルを、がんの進行が確認されたり、副作用により継続困難となったり、がんが縮小して手術が可能になるまで続ける。
10年から行われた第Ⅰ相試験では、12例を登録し、パクリタキセルの投与量を20㎎/㎡から40㎎/㎡まで増量したところ、2コース終了時までに用量制限毒性が出なかったため、推奨投与量を40㎎/㎡と決定した。第Ⅰ相試験の結果は、9割で腹膜播種の顕著な縮小が確認され、全例で腹腔洗浄細胞診が陰性化した。
それを受けての先進医療第Ⅱ相臨床試験は14年から16年まで行われ、20施設、50例の登録を予定しており、主要評価項目は1年生存率、副次的評価項目は奏効率、腹腔洗浄細胞診陰性化率、安全性とされている。症例登録は今年1月に完了した(図2)。

*オキサリプラチン=商品名エルプラット
生存期間延長のため、より強力な全身化学療法を併用
さらに、今年3月に先進医療に承認されたばかりの療法もある。「*カペシタビン/シスプラチン+*ドセタキセル腹腔内投与併用療法」だ。「TS-1+パクリタキセル経静脈・腹腔内併用療法」では腹膜播種が制御される一方で、原発巣や他臓器転移が進行することがあるため、この新療法ではさらなる生存期間延長のためにより強力な全���化学療法を腹腔内投与と併用することが企図されている。
第Ⅰ相試験(用量設定試験)では、12例が登録され、シスプラチンの用量を60㎎/㎡から80㎎/㎡まで増量したが、用量制限毒性は1例でグレード3の食欲不振があったが、80㎎/㎡と決定された。6コース治療後に2次審査腹腔鏡を行ったところ、4例で腹膜播種の顕著な縮小があった。
先進医療第Ⅱ相試験は今年4月に登録の一般募集が始まったばかり。34施設が参加し、登録症例数は50例を予定している。服用法は、21日を1コースとして、カペシタビン2,000㎎/㎡を14日間内服し、7日間休薬する。併せて第1日目にシスプラチン80㎎/㎡を経静脈投与し、第1日目と第8日目にドセタキセル10㎎/㎡を腹腔内投与する。がんが進行するか、副作用により継続困難となるか、奏効が確認されて手術が決定されるか、まで反復する。
主要評価項目は1年全生存率、副次的評価項目は奏効率、腹腔洗浄細胞診陰性化率と安全性。
展開を続ける腹膜播種の治療法だが、各種進行中の試験結果や総合的な解析結果(評価)が注目されている。
*カペシタビン=商品名ゼローダ *ドセタキセル=商品名タキソテール
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