遠隔転移のもとは早期にあり。ならば、術後の補助療法を知って再発を防ごう 再発と補助療法の「なぜ?」に答えます!

監修●吉田和彦 東京慈恵会医科大学葛飾医療センター副院長 外科学講座教授
取材・文●「がんサポート」編集部
発行:2012年1月
更新:2020年3月

Q 各がんの補助療法にはどんなものがある?

[各がん種で推奨される補助療法]

補助療法には、治療法が確立していない(治療効果が明らかでない)ものも多い。抗がん剤が効きやすいがん、手術などが行える早期に発見されやすいがんの場合は、ガイドラインで推奨している治療法がある。推奨レベルの高い代表的な治療法を紹介する。

がん種 部位 治療・生物学的特性 治療法 投与量・期間 備考
食道がん 全身   フルオロウラシル+シスプラチン
併用化学療法
2コース
フルオロウラシル700mg/m2/日の5日間持続静注、シスプラチン70mg/m2/1日目投与
術後放射線療法は推奨されていない
術後化学放射線療法も推奨されていない
胃がん   術前
中等度進行がんで再発リスクが高い場合
化学療法   日常診療としては奨励されていない
術後

TS-1が使用できない場合

TS-1が標準

UFTの高用量投与

術後6週間以内に、TS-180mg /m2/日
を開始し、4週間投与2週間休薬を1コースとして1年間続けて行う
16カ月投与
 
肝がん         肝切除後の再発抑制のために効果があるとされる補助療法(インターフェロンα療法や肝動注化学療法)はあるが、推奨されているものはない
胆道がん         術後補助療法として推奨される化学療法はないが、以下の薬剤の臨床試験が求められている
ゲムシタビン
TS-1
膵がん 全身 術後 ゲムシタビン   レジメンは確立していないが、無再発生存期間が延長され、安全性も高い
大腸がん 局所 直腸がんの術前・術後 放射線療法 術後6~8週までに開始。1回1.8~2.0グレイ、週5回の通常分割照射法。総線量は、術前の場合40~50.4グレイ/20~28回。術後の場合50~50.4グレイ/25~28回 局所再発は低下するが、生存率の改善はもたらさない
フルオロウラシルとの化学放射線同時併用療法が標準的
全身 術後 化学療法 術後4~8週頃までに開始。投与期間6カ月が原則。 腫瘍完全切除術後3期大腸がん(結腸がん・直腸がん)に対して行われる。2期では再発リスクが高い場合に行われる場合もある
FOLFOX療法
(オキサリプラチン+フルオロウラシル+ホリナートカルシウム)
1日目2日目で急速静注・持続静注。12日間休薬。2週間サイクルで行う
カペシタビン療法  
テガフール・ウラシル配合剤+ホリナートカルシウム療法  
フルオロウラシル+ホリナートカルシウム療法 週1回投与、6週連続2週休薬、8週ごとに3サイクルを繰り返す
腎がん         補助療法とし確立した治療はまだない
膀胱がん 局所 経尿道的膀胱腫瘍切除術後 放射線療法 1回線量2グレイ、総線量60~66グレイが標準的 化学療法と併用されることもある
低リスク及び中リスク筋層非浸潤性膀胱がんの経尿道的膀胱腫瘍切除術後 抗がん剤即時注入療法 術後24時間以内、ドキソルビシンやミノマイシンを注入  
中リスク筋層非浸潤性膀胱がんの経尿道的膀胱腫瘍切除術後 維持療法 アンスラサイクリン系抗がん剤 中リスク群については、抗がん剤即時注入療法に続く維持療法が推奨されるが、維持投与のスケジュールについては、結論が得られていない
高リスク筋層非浸潤性膀胱がんの経尿道的膀胱腫瘍切除術後 BCG注入療法 1回80mg(日本株)、81mg(コンノート株)、週1回6~8週投与が一般的 注入レジメンについては結論が得られていない
高リスク筋層非浸潤性膀胱がん 抗がん剤即時注入療法後に、BCG維持注入療法 1年間  
全身 筋層浸潤がん2期3期の根治的膀胱全摘術前・後     術前・術後療法ともまだ有用性は確立していない
2期3期膀胱がんの経尿道的膀胱腫瘍切除術後 放射線療法 1回線量2グレイ、総線量60~66グレイが標準的 化学療法と併用するのがよいが至適なタイミングはまだ結論が出ていない
前立腺がん 局所 前立腺全摘除術後(リンパ節転移が認められず、pT3や切除断端陽性などの場合) 放射線療法 前立腺摘出部への中等量(45~54グレイ)程度の外照射。術後3カ月以内より開始 照射方法、線量、時期などについては一定の見解はない
全身 リンパ節転移のある切除術後 ホルモン療法    
根治療法(前立腺全摘術、根治的放射線療法後) ホルモン療法
抗アンドロゲン剤(ビカルタミドなど)
  海外の臨床試験では有効性を示されているが、国内ではまだ
子宮頸がん 局所 1b期、2期の広汎子宮全摘出術後     照射線量、投与量などについては、検討段階である
骨盤内リンパ節転移が認められない場合 放射線療法 外部照射、1日1回週5日、合計25~30回(約5~6週間) 再発高危険因子がある場合に行われる
全身 骨盤内リンパ節転移が認められる場合 化学療法(シスプラチン)+放射線同時療法 シスプラチンは、週1回で計5~6回、または、月1回で2~3回、静脈投与。放射線療法と同時に行われる  
子宮体がん 局所 中リスク・高リスク群 放射線療法 術後1~2カ月後に開始。全骨盤照射の場合、総線量45~50グレイ、総治療期間は、5週間程度  
初回手術でがんが取りきれなかった高リスク群 手術療法(腫瘍減量術)   腫瘍の減量により延命が期待できる
全身 中リスク・高リスク群 シスプラチン+ドキソルビシン併用療法(AP療法) シスプラチン50mg/m2、ドキソルビシン60mg/m2を、3週間ごとに8サイクル投与(8サイクル目はシスプラチンのみ投与)  
卵巣がん 全身 術後 パクリタキセル+カルボプラチン併用療法(TC療法、dose-dence TC療法) 週1回3~4週間ごと投与。dose-denceTC療法では、2剤のうちパクリタキセルのほうを毎週投与することで、再発防止効果、生存期間延長が報告されている 抗がん剤がよく効くがんなので、手術をした後に化学療法を追加するのが基本
ドセタキセル+カルボプラチン併用療法(DC療法)  
明細胞腺がん TC療法のほか、イリノテカン+シスプラチン併用療法(CPT-P療法)  
乳がん 局所 乳房温存手術後 放射線治療 全乳房照射50グレイ前後(一部で10グレイ程度の追加照射) できるだけ早期に開始  
乳房切除術後
腋窩リンパ節転移1個以上
放射線治療    
転移 閉経前ホルモン受容体陽性 タモキシフェン or
タモキシフェン+LH-RHアゴニスト
5年
タモキシフェン5年 LH-RHアゴニスト2~3年
 
閉経後ホルモン受容体陽性 アロマターゼ阻害薬
タモキシフェン2~3年→アロマターゼ阻害薬
5年
計5年
 
再発リスクが低い場合 タモキシフェン or トレミフェン どちらも5年ずつ  
腋窩リンパ節転移陽性 タモキシフェン5年→アロマターゼ阻害薬 計5年以上(至適投与期間は不明)  
HER2陽性 化学療法+トラスツズマブ 化学療法はアンスラサイクリン系+タキサン系 トラスツズマブ単独は臨床試験で
ER(エストロゲン受容体)陽性・HER2陰性 リスクに応じて化学療法 閉経前:タモキシフェン 1日1~2回 5年間 (治療中に閉経が来たらアロマターゼ阻害薬に変更)

閉経後:アロマターゼ阻害薬 1日1回 5年間

悪性度が高い場合、抗がん剤を追加
TC療法(ドセタキセル+シクロホスファミド)3週毎4サイクル

 
原発 再発リスクが低い、高齢者、脱毛拒否の場合 CMF CMF(シクロホスファミド100㎎/m2 内服1~14日 4週毎6サイクルメトトレキサート40mg/m2 静注 1、8日目に投与 フルオロウラシル600㎎/m2 静注 1、8日目に投与)  
タキサン系薬剤単剤 ドセタキセル(3週毎静注 1サイクル21日間に1日投与)パクリタキセル(毎週静注 1サイクル7日に1日投与)  
原発 リンパ節転移陽性 アンスラサイクリンにタキサン(順次or同時併用) パクリタキセルは毎週投与
ドセタキセルは3週毎投与
 
肺がん 全身 術後病期1b、2、3a期の非小細胞がん術後 シスプラチンを含む併用化学療法    
シスプラチン+ビノレルビン
シスプラチン+ビンデシン
シスプラチン80mg/m2を1週目に投与、ビノレルビン25mg/m2を1週目と2週目に投与。4週間で1サイクルを4サイクル行う  
1b期の非小細胞がん デガフール・ウ��シル配合剤(UFT)  
根治的胸部放射線治療が可能な局所進行非小細胞肺がん(3期) シスプラチンを含む化学放射線療法 化学療法はMVP療法(シスプラチン、ビンデシン、マイトマイシン併用)
限局型小細胞肺がんの場合 化学療法と胸部放射線療法の併用 化学療法はシスプラチンとエトポシドの併用。早期同時併用が推奨される
皮膚がん 全身 メラノーマ(悪性黒色腫)3期術後 ダカルバジン+ニムスチン塩酸塩+ビンクリスチン硫酸塩+インターフェロンβ(DAVFeron療法) Feron療法は、インターフェロンβ300万単位/日を原発巣術創部皮内へ10日間連日局注 インターフェロンαは無病生存期間は延長するが、生存率への効果は確証されていない
高再発リスク有棘細胞がん術後 放射線療法 1回線量1.8~2.0グレイ、総線量50~70グレイ  
(表作成は「がんサポート」編集部責任)


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