「がんサポート」創刊4周年記念シンポジウム パネルディスカッション「再発・転移を生きる」詳細報告

総合司会:渡辺 亨 浜松オンコロジーセンター長
パネリスト:
山口俊晴 癌研有明病院消化器センター長・消化器外科部長・院長補佐
山本信之 静岡県立静岡がんセンター呼吸器内科部長
鈴木厚子 肺がん患者、元看護師
発行:2008年1月
更新:2019年7月

初期スキルスはレントゲンで見つかることも

質問
スキルス胃がんになって悔やんでいます。スキルスをいち早く発見する方法はありませんでしょうか。(女性、39歳)

山口 日本でスキルス胃がんの早期発見の診断体系はまだちゃんとできていません。親が若年でスキルスになっているなど、リスクの高い人はしかるべき施設で検査を受けるようにしたほうがよいでしょう。
最近カナダ在住の40歳前の日本人女性が受診しました。彼女は母親を若いときにスキルスで亡くしていることから、カナダで毎年内視鏡検査を受けており今年も「異常なし」と言われたばかりだったのです。ところが、たまたま日本でレントゲン検査を受けると、「あやしい所見がある」と言われて、カナダで担当医にもう1度検査を要求した結果、「これは進行がんでもう手遅れだ」と言われました。
そこで、慌てて日本に帰ってきたわけですが、調べてみるとそれほど進んでいなくて、手術できたのです。日本でならスキルスの初期は、意外と内視鏡よりもレントゲンで見つかることがあります。

渡辺 スキルスは語源が「硬くなる」という意味です。レントゲンで見るほうが、胃が硬くなって胃袋があまり広がらなくなる様子がとらえられる場合があるということですね。

腫瘍マーカーの絶対値はあまり意味がない

質問
腫瘍マーカーの変動が非常に気になります。卵巣がんでは再発はどの程度を基準としているのでしょうか?(女性、46歳)

[腫瘍マーカー]

絶対値では判断できない。
CA125は、良性の卵巣疾患、腹水などで上昇する。

[腫瘍マーカーの使い方]

●がんの診断には使用しない
●がんの再発には使用しない
●抗がん剤の効果を判定するには信頼できる指標


渡辺 前立腺がんならPSA(前立腺特異抗原)が、「4以上は異常値で、10を超えたらがんが疑われる」というふうに数値に基準がありますが、卵巣がんでよく用いられるCA125という腫瘍マーカーは、いくつになったら安心とか心配という絶対値では判断できません。このマーカーは良性の卵巣疾患や、ほかの病気で腹水がある場合などにも反応するので、消化器系がんのCEAとか、肺がんのSCCなどと同様、比較的役立つマーカーではあります。
しかし、CA125は、卵巣がんの早期診断や、再発の判定には使用できません。卵巣がんの中にはCA125が高くならない特殊なタイプもあります。
一方、卵巣がんで再発が明らかになっていて抗がん剤治療を行う場合、その効果を判定する上でCA125は信頼できる指標となります。ただ腫瘍マーカーの数値にばかりとらわれて、それだけで一喜一憂することは意味がありません。

山本 小細胞肺がんなどの場合、抗がん剤が効くときにマーカーが上がることがあります。がん細胞が壊されて、がんの中のタンパク質が血液中に放出されるためです。ですから腫瘍マーカーが上がったからといって必ずしも悪化したといえない場合もあるわけです。

腫瘍マーカーに神経質になる必要はない

質問
腫瘍マーカーが少し上がるだけで不安があるのですが。(女性、45歳)

渡辺 腫瘍マーカーの数字の変化について、あまり神経質になる必要がないケースが多いと思います。たとえば同じ日に同じ検体を複数取って比較しても、数字がブレることがあるのです。あまり腫瘍マーカーに揺れ動かされるということなら、いっそ採血をやめたほうがいい場合もあります。

山口 腫瘍マーカーの正常値というのは、もともと5パーセントの人がそれから外れています。あまり神経質になることはないでしょう。もう1つ、タバコを吸っている人、とくにヘビースモーカーはCEAの値が高く出ることがありますが、そういう人はタバコをやめると下がるのでわかります。またヘビースモーカーでなくても慢性の肺気腫を持っている人などはずっと高いままという人もいます。そのときだけの数値の高さではなく、経過を見て判断することが大切です。

骨転移は骨シンチでチェック

質問
骨転移が恐いのですが、どのような症状が出たら疑われるでしょうか。確実な検査法はないでしょうか?(男性、58歳)

[骨転移の症状と検査]

症状

痛み、骨折、高カルシウム血症

検査

骨シンチ、MRI、PET、CT、レントゲン写真
ICTP(Ⅰ型コラーゲンC末端テロペプチド)


渡辺 骨転移は肺がんや腎臓がんなどに多く、男性なら前立腺がん、女性では乳がんによく見られます。症状として顕著なのは、転移した部分の痛みであり、骨盤に転移すれば腰痛と感じるわけです。また転移した部分が骨折をきたすこともあります。さらに血液の中に骨のカルシウムが溶け出て高カルシウム血症になって、便秘になったりムカムカしたりすることが起こる場合もあります。
骨転移の検査法としていちばん用いられるのが骨シンチで、このほかMRI、PET、CT、単純レントゲンなどの画像診断も有用です。またICTP(血清1型コラーゲンC末端テロペプチド)といって、腫瘍マーカーのように血液成分で骨転移が診断できるマーカーもあります。

山本 PETについていうと、骨シンチは全身が撮れますが、PETでは節約するため全身を撮れない場合があります。しかし、PETのほうが骨シンチより鋭敏なので、たとえば抗がん剤が効いて骨転移が縮小しているのをとらえられるところが強みです。


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