再発・転移の基礎知識:まずは知ること 再発・転移はこう起きる、そしてこう対処する

監修●吉田和彦 東京慈恵会医科大学葛飾医療センター副院長
取材・文●「がんサポート」編集部
発行:2013年5月
更新:2019年11月

Q4 どのように見つければいい?

転移の有無は、定期的な検査(サーベイランス)で、症状が出る前にも発見可能です。大腸がんの場合、肝臓と肺に転移しやすいので、定期的なCTスキャン、超音波検査、腫瘍マーカーの測定等により、発見可能となります。

Q5 防ぐことはできるの?

■術後補助療法の位置づけHortobagyi GN and Buzdar AU:J Clin Oncol 4, 1727,1986

血液中にあるがん細胞を殺すことにより転移を〝予防〟することは困難です。一方で、すでに生じている細胞数の少ない(耐性を生じにくい)微小転移をコントロールすることはある程度可能と考えられています。

多くのがんで、手術や放射線治療後に抗がん薬やホルモン薬を用いて微小転移を根絶して、根治を目指す「術後補助療法」が行われています。

Q6 どうして治療が難しい?

■抗がん薬に抵抗性を持つがん細胞が増殖

転移が目に見えるほど大きくなった場合には、がん細胞の数も多様性も増し、すでに遺伝子の変化により様々な悪い性質も獲得しています。

最初に投与した抗がん薬が、あるがん細胞のグループに効果があって、一時的にがんが縮小あるいは消失しても、徐々に最初の薬に対する抵抗性(耐性)をもつ細胞のグループが増殖し、結果的に再燃してしまいます。その後に次々に異なる抗がん薬を用いても、同じように「イタチの追いかけっこ」が続き、最後は薬が尽きることになります。

Q7 遠隔転移の場合、どんな治療法があるの?

ガンマナイフによる治療も選択肢

遠隔再発した場合、根治することは困難なので、がんと共存し、高いQOL(生活の質)を維持しながら、延命を目指すことになります。

具体的には、抗がん薬あるいは(乳がんや前立腺がんにおいては)ホルモン薬による全身療法が基本となります。最近、抗がん薬の中でもがんに特異的に作用する分子標的薬が次々に登場しています。分子標的薬の多くは単剤での効果は限られて��り、殺細胞効果のある従来の抗がん薬と併用して使われることが多いのですが、効果が限られている場合も少なくありません。また、費用がかかることも問題です。

放射線療法は局所療法であるため、骨転移による痛み対する緩和的な治療、あるいは脳転移に対するガンマナイフによる治療等、適応は限定されます。

ガンマナイフ=放射線の1種であるガンマ線を1点に集中させ、ピンポイントで組織を攻撃する放射線治療装置

Q8 骨転移とはどのようなものですか?

■がんが転移しやすい骨

がんが進行すると、骨にも転移してその組織を破壊することがあります。骨に転移しやすいがんには乳がん、前立腺がんなどがあります。

がんは、「血行性転移」といって、がん細胞が原発巣から血管に入り込むと骨にも着床する可能性が生じます。脊椎や肋骨、骨盤などに多くみられます。

がん細胞が骨に転移すると、骨が弱くなって骨折(病的骨折)しやすくなるとともに、痛みが非常に強くなります。脊椎の圧迫骨折を生じた場合には、下半身の麻痺が生じることもあります。

治療の中心は痛みの緩和となります。麻薬を含む鎮痛薬の投与、放射線治療、さらにはビスホスホネート剤が有効です。ビスホスホネート剤は、痛みの緩和以外にも高カルシウム血症を予防する効果があります。

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