胃がん手術後の後遺症と対策 なぜ後遺症は起こる? 不快な症状を緩和する方法は?
逆流性食道炎
食後や就寝中に、苦い液や酸っぱい液が食道に上がってきて、胸焼けを起こしたり、のどや胸に焼け火箸をあてられたような痛みを感じたりします。これは、手術によって胃の入り口(噴門)や出口(幽門)の逆流防止機能が損なわれ、酸性の胃液やきわめて刺激の強いアルカリ性の十二指腸液(胆汁や膵液)が逆流するために起こる症状です。食道粘膜に炎症、浮腫、潰瘍を起こすこともあります。
胃全摘や噴門側胃切除の術後に多く、幽門側胃切除でも、ビルロート2法で再建した場合に多くみられます。
対策
就寝時の逆流予防には、枕などを使って上半身を20度くらい高くして寝るとよいでしょう。
逆流が起きたときは、粘膜を保護し、胃酸を中和するアルロイドGなどの薬剤を飲みます。胃酸が主体の逆流なら、H2ブロッカー、プロトンポンプ阻害剤、制酸薬も効果的。アルカリ性の逆流には、膵タンパク分解酵素阻害剤などを服用します。
リンゴを食べると粘膜保護作用のあるペクチンの働きで胸焼けがおさまるという人、ヨーグルトや豆乳をとると落ち着くという人もいます。
薬剤を使っても長期間強い症状が続く場合、再手術をして再建法を変更する方法もあります。アルカリ性の逆流の場合、ビルロート1法から、胆汁や膵液が逆流しないように工夫されたルーワイ法に変更した結果、症状が消えた例もあります。
つかえ
食道と残胃または腸をつないだ吻合部や食道の炎症部などに、食べ物がつかえることがあります。
対策
最初の1口目を食べるとき、よくかんでから少しずつ飲み込んでみてください。最初に、とろろや納豆、オクラなど粘り気のあるものを食べる、梅干やかんきつ類など酸味のあるものを食べて唾液の分泌を促すなどの工夫で、つかえを緩和させるのもよい方法です。
1度つかえると、水を飲んでもつかえたものの上に重なるだけですから、降りていくまで我慢しましょう。上半身をそらすとラクになるという方もいます。
症状がひどいときは、吻合部狭窄といって、つなぎ目が極端に細くなっていることがあるので、医師に相談し、バルーンによる拡張や食道胃弁形成術などの再手術を検討します。
やせ、体重減少、栄養障害、貧血
胃の手術後は、食べてもなかなか太れない人が多いもの。これは、胃で消化されない食べ物が、���で栄養が吸収されずに素通りしてしまうためです。
対策
腸で吸収されやすい市販の栄養補助食品や、ある程度消化された状態に調整されているエンシュア・リキッドなどの「高カロリー流動栄養剤」を医師に処方してもらい、食事の合間にとるとよいでしょう(下表参照)。
筋肉の萎縮を防ぐために、散歩などの軽い運動をすることも大切です。筋肉を鍛えると、あらゆる面でプラスの相乗効果が現れてきます。
胃の手術後は、ビタミンB12、鉄、カルシウムなどの吸収力もダウンし、貧血や骨障害の原因になります。貧血を予防する鉄は、レバーやほうれんそうなどに多く含まれていますが、鉄瓶や鉄のフライパンを使うことでも摂取できます。胃全摘の場合、ビタミンB12はほとんど吸収できなくなるので、体内の蓄積がなくなる術後4、5年目以降、不足していれば注射で補う必要があります。
カルシウムは小魚や乳製品で補給しましょう。牛乳で下痢する人はヨーグルトを試してみるのもよいでしょう。
食事がとれない方や、栄養障害がひどい方は、「経管経腸栄養」の項を参照してください。
製品名 | 会社名 | |
---|---|---|
市販製品 | アイソカル・ジェリーPCF | ノバルティスニュートリション |
エネプラス | キッセイ薬品工業 | |
カロリーメイト | 大塚製薬 | |
グルセルナ | アボットジャパン | |
ジャネフ濃厚流動食 | キユーピー | |
テルミール | テルモ | |
メディエフアミノプラス | 味の素ファルマ | |
処方薬 | エンシュアリキッド | 明治乳業-アボットジャパン、大日本製薬 |
クリニミール | エーザイ | |
ラコール | イーエヌ大塚製薬-大塚製薬 |
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