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これだけは知っておきたい――胃がん編 早期がん、治療の主流は縮小手術。進行がんでも治癒を望める

監修●山口俊晴 癌研有明病院消化器外科部長
取材・文●半沢裕子
発行:2005年7月
更新:2019年8月

胃がん手術の主流は機能を残す縮小手術

大きくて内視鏡ではとれない、リンパ節に転移があるといったケースでは、開腹による胃の切除術を行います。手術で大切なのは、まず場所です。たとえば、胃の中ほどより上に病巣がある場合、胃を残して食道とつないでも、患者さんがしばしば苦痛を訴えるので、胃を全部取ることが少なくありません。

それでも、胃がんの手術でぜひ知っておきたいのは、「今日、早期胃がん手術の主流は縮小手術」ということです。縮小とは、ちょっぴりしか取らないという意味ではありません。リンパ節を広範に取らない、神経や胃の出口を取らずに残す(幽門温存術)など、できる限り機能を損なわず、体へのダメージが少ないように手術を行うことです。病巣の位置などのため内視鏡で取れず、手術するときも、行われるのは縮小手術です。こうしたケースでは病巣さえ取れば治りますから、病巣ぎりぎりの大きさで切除します。

縮小手術を行う目的は、言うまでもなく後遺症を減らすことです。神経を残すと下痢などの症状が起こりにくく、胃の出口を残すとダンピング症候群が起こらなくなります。ダンピング症候群とは、胃の袋部分がなくなり、食べ物が一気に腸に流れ込むために起こる状態で、冷や汗、動悸などの不快な症状をともないます。

リンパ節は体に侵入してくるばい菌などと闘う器官ですから、残せればそれに超したことはありません。しかも、早期胃がんの場合は、転移があったとしても、多くは胃の周辺リンパ節にとどまっています。広範に切除する必要はないのです。

理想をいえば、ごく狭い範囲のリンパ節郭清を行い、一部を術中病理診断に出し、転移が認められたらより広く郭清を行うのがベストでしょう。が、それができる病院は限られています。日本の胃がん手術は平均して高水準ですが、術中病理診断が可能かどうかは、案外病院選びのポイントかもしれません。

手術といえば、最近は腹腔鏡による手術が増えており、癌研でもそうしたオプションについて患者さんにお話ししています。たしかに、話を聞くと、体への負担が少なく感じられることと思います。

が、問題は手術を担当する医師の技量です。技量の優れた医師なら、開腹とほぼ同等の手術が可能ですが、そうした医師がまだまだ少ないこと、時間がかかること、小さいとはいえ意外に傷の数が多いことなどを考えると���現状では無理して進行がんにまで適用する必要はないという気がします。

急速に進歩している術前・術後の化学療法

胃がんの化学療法は、今までは、手術ができない進行がんの患者さんの延命のために、あるいは、手術で取り残した小さながん細胞を予防的に叩く、術後の補助療法として行われるのが普通でした。けれども、最近の進歩はめざましく、より積極的な使い方がされるようになっています。

たとえば、術前に投与して、あらかじめがん細胞を叩く術前化学療法です。実際、リンパ節に転移があるものの、ほかには転移が認められないような症例では、抗がん剤がリンパ節のがんによく効き、根治手術が行えたといったケースが増えています。

胃がんの化学療法を大きく変えたのは、TS-1(一般名テガフール・ギメラシル・オテラシル)の登場でした。この薬を術後補助療法に使うと、再発した人の延命効果が3割から6~7割と倍に伸びたのです。しかも飲み薬なので、外来で続けられます。

術前補助療法で使うときはシスプラチン(商品名ブリプラチン、ランダ)などと併用しますが、私自身の経験では1クールで7割以上効いているという実感があります。エビデンス(科学的根拠)はまだありませんが、術後に再発の可能性のある人への治験はちょうど登録が終了したところです。数年後には効果の有無が明らかになるのは間違いないと思います。

そのほかにもよく効く抗がん剤が増え、抗がん剤の使い方に習熟した医師も増えて、治療効果はますます高くなっています。ただし、胃がんの化学療法も日進月歩の新しい治療ですから、病院によって治療内容はかなり差があります。医師によく確認し、納得して治療を受けることが大切です。

診断・治療に関し、医師にぜひ質問したいことがら

診断について
  • 私の病気は顕微鏡で診断がついているのでしょうか。ついている場合、分化型がんでしょうか、未分化がんでしょうか、あるいはその他のタイプでしょうか。
  • がんは胃のどの部位にあってどこまで広がっているのでしょうか。
  • 深さはどこまでとかんがえられるのでしょうか。
  • リンパ節転移はありますか。あるとしたら胃のすぐそばのリンパ節でしょうか、遠くのリンパ節にもあるでしょうか。
  • 肝臓や肺など遠くに転移していますか。
  • 腹膜に転移していますか。
治療について
  • これからどのような治療が必要でしょうか。
手術の場合
  • 内視鏡で治療はできませんか。
  • 胃のどの部分を切除する必要があるでしょうか。
  • リンパ節もとる必要がありますか。あるとしてどの程度までとるのでしょうか。
  • 切除したあとはどのように再建するのでしょうか。
  • 手術の前後に化学療法は必要でしょうか。
  • 私の体力で手術が受けられるでしょうか。
抗がん剤の場合
  • 投与する抗がん剤の名前を教えて下さい。
  • 抗がん剤はどれくらいの量を何回、どのようなスケジュールで投与するのでしょうか。
  • 入院が必要ですか。
  • 主な副作用はなんでしょうか。
  • 一緒に飲んではいけない薬や、食べたり飲んだりしていけないものはありますか。
  • 治療中にどのような症状が出たら、すぐに相談したり診察を受けるべきでしょう。
治療後について
  • 今回の治療で完全に治る可能性はあるでしょうか。あるとしたらどれくらいでしょうか。
  • 転移、再発する可能性はどれくらいあるでしょうか。
  • 転移、再発を発見するためにどのような検査をどのような間隔でしたらよいでしょう。
  • 転移、再発の治療はこの病院でもやれるのでしょうか。



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