1. ホーム  > 
  2. 各種がん  > 
  3. 胃がん
 

身体への負担が少ないから術後の回復も早い 9センチのがんも開腹せずに一括切除するITナイフの最新成果

監修●後藤田卓志 国立がんセンター中央病院消化器内視鏡部医師
取材・文●「がんサポート」編集部
発行:2005年4月
更新:2019年8月

術前80パーセントの予測が、確実な病理検査で100パーセントになる

内視鏡では、治療前にがんの深さは80パーセント程度しか予測できません。これをがんの深さの正診率といいます。最終的には病理組織学的検索にて診断されます。そのために、手術の標本と同じように、広い範囲で病変が取れるESDの一括切除が、正確な病理診断を行う上で絶大な効果を上げるのです。

切除した組織を顕微鏡で見て、周囲にがんの取り残しがないように、十分なマージン(安全域)を確保したESDの一括切除により、切り取った組織の病理診断の精度は格段に上がります。術前に80パーセント程度だった診断が、ここで100パーセントに達するわけです。その結果を通して、今回の治療で終了なのか、追加の治療をするのかを判定するのです。

粘膜がんだと予測しても、病理検査で粘膜下層まで達している場合もあるし、それ以上に深いところに達していたら、根治手術として外科手術を行います。その割合は、国立がん研究センターでは15パーセントほどです。

逆もあります。病理検査と内視鏡診断でESDが適用できると判断しても、患者さんの強い希望で外科手術を行うことになり、開腹して切ってみたら粘膜のがんで留まっていたというケースです。

がんが大きくなればなるほど粘膜下層まで深達している頻度は高いといえます。大きさが2センチ以内であれば、治療前に粘膜がんと診断しても、実はがん細胞が粘膜下層まで深達していたというケースは、5パーセントぐらいしかありません。

しかし、病変が大きくなればなるほど、がんは粘膜だけではなく下まで深く浸潤していくので、この割合が15パーセントほどになります。

早期発見、イコール早期治療、イコール根治のために会社や地域の健康診断を

私のこれまでの内視鏡手術歴は、約500例を数えます。ESDに限ると400例です。そのうち手術に回るものは10パーセント、内視鏡治療で終了というのは350例ほどです。残る50例は、治療前には粘膜に留まるがんと診断したけれども、内視鏡治療後の病理検査にて粘膜下層まで深達していたことが分かり、手術を受けていただいたケースです。

ESD後の症状としては、切除した範囲、場所にもよりますが、翌日に���の中が多少チクチクする程度です。粘膜もやがてきれいに再生します。手術の翌日には水を飲んだり、プリンやヨーグルトが食べられます。2日目から3日目までお粥、4日目から普通の食事になります。そして5日目には退院できます。

手術後のフォローアップとしては、異時性の多発胃がん(異なる時期に発見される新たな胃がんで、元々のがんの転移や再発ではありません)にかかる人が5パーセントほど見られます。よって、粘膜内のがんの場合でも年1回はフォローアップ検査を受けてもらっています。1年に1回ぐらいフォローをします。進行がんの人は、手術をしても遠隔転移の可能性があります。肺や肝臓などへ転移してくる可能性がありますから、5年間はしっかりとフォローしていきます。

早期がんは自覚症状がほとんどありません。大多数が健康診断で発見されるケースです。個人的な人間ドックで内視鏡検査を受けて見つかる人もいます。国立がん研究センターの内視鏡部へ外来で来られる患者さんは、そうした健康診断を受けての来院です。すべては早期発見がスタートです。そのためにも会社や地域の健康診断を定期的に受けていただくことが肝要です。

[100例程度のESD経験がある医師と、その医師がいる病院]
医師名 所在地 施設名
近藤仁 住吉徹哉 札幌 斗南病院 消化器病センター
石後岡正弘 札幌 勤医協中央病院 外科
本間清明 酒田 山形県立日本海病院 内科
平澤大 仙台 仙台市医療センター仙台オープン病院 消化器内科
大森俊明 土山寿志 金沢 石川県立中央病院 消化器内科
山本博徳 花塚和伸 宇都宮 自治医科大学 消化器内科
後藤田卓志 小田一郎 東京 国立がん研究センター中央病院 内視鏡部
濱中久尚 東京 調布東山病院
矢作直久 藤城光弘 東京 東京大学医学部附属病院 消化器内科
田辺聡 相模原 北里大学東病院 消化器内科
小野裕之 乾哲也 蓮池典明 三島 静岡県立静岡がんセンター 内視鏡科
小山恒男 堀田欣一 佐久 佐久総合病院 胃腸科
赤松泰次 松本 信州大学医学部附属病院 内視鏡診療部
小島英吾 長野 長野中央病院 消化器内科
深尾俊一 豊田 中野胃腸病院
丹羽康正 名古屋 名古屋大学大学院 病態修復内科学
久永康宏 岐阜 大垣市民病院 消化器科
鳥居惠雄 京都 京都桂病院 消化器内視鏡センター
道田知樹 大阪 国立病院大阪医療センター 消化器科
梅垣英次 大阪 大阪医科大学第二内科学教室
飯石浩康 上堂文也 大阪 大阪府立成人病センター 消化器内科
豊永高史 岸和田 岸和田徳洲会病院 内科
森田圭紀 神戸 神戸大学大学院 消化器内科
仁科智裕 松山 国立病院四国がんセンター 内科
片岡孝一 徳島 徳島県立中央病院 消化器科
吉田元樹 熊本 熊本地域医療センター 内科
尾田泰 熊本 服部胃腸科
宿輪三郎 長崎 国立病院長崎医療センター
1 2

同じカテゴリーの最新記事