子宮体がんの術後補助化学療法で再発を防ぐ
TC療法に勝るものはあるか
使用される薬剤は、現在では*タキソールと*パラプラチンの併用療法(TC療法)が主流。歴史的にはアドリアマイシンの単剤から始まり、プラチナ製剤のシスプラチンが効くことがわかり、この2つを合わせるAP療法が主流とされた時代があった。
しかし、その後の複数の臨床試験により、最終的に成績が評価されたのがTC療法だった。AP療法と治療成績は変わらずに、毒性の面で有利とされたからだ。TC療法の副作用としては、軽度の吐き気や骨髄抑制、手足のしびれや脱毛などがある。
そして、青木さんが行っているのが、*タキソテールとシスプラチンの併用(DP療法)の臨床試験(JGOG2043)。子宮体がん再発高リスク群に対するDP、AP、TCのランダム化第Ⅲ相試験を行った。対象は残存腫瘍2cm以下で、Ⅲ期、あるいは病変が腹腔にとどまるⅣ期、そして筋層浸潤1/2を超えるⅠ期、Ⅱ期のうち組織学的分化がG2、G3の子宮体がんで、2006年に登録が開始され、間もなく(米国臨床腫瘍学会ASCO2017で)結果が報告される。
*タキソール=一般名パクリタキセル *パラプラチン=一般名カルボプラチン *カルボプラチン=商品名パラプラチン *タキソテール=一般名ドセキタキセル
再発後もTC療法が主流
再発してしまった場合でもTC療法が主流となる。
青木さんは「多くの進行再発例を対象とした臨床試験は、前治療として化学療法を行っていないということが条件になっているので、その場合はTC療法というコンセンサスがあります。これに何かの薬剤を乗せたものはないかというと、分子標的薬を含めて考えてもまだよいものが出てきていません。化学療法を施行後に再発した患者さんには『これを使えば絶対よい』というエビデンス(科学的根拠)のある化学療法がないのです。確立した概念ではないのですが、治療成績のよいものを使って行くということで、再発例でもTC療法を繰り返すことが多いです。TC療法では、シスプラチンで必要となる大量の点滴がいらないという使いやすさもあり、ファーストチョイス(第一選択)となっています」と話す。
免疫チェックポイント阻害薬にも期待
青木さんは今後の課題の1つとして放射線治療の位置づけを挙げた。
「日本ではほとんど使わなくなりましたが、欧米では多く使われています。早期は摘出だけでよく、進行・再発の場合は化学療法でいいのですが、真ん中が混乱しています」と現状について述べるとともに、「最初の治療としてはTC療法がしばらく主体で行くでしょうが、��発の治療が分かっていません。同等と提示されている薬の中から、投与間隔や副作用を勘案して決めるとなっているのですが、いくつか効きそうなものを使ってみるという意味でも、第Ⅱ相試験をしっかりやっていくべきだと思います。遺伝子(DNA)レベルでどのような薬剤が効くのかを見ていくことも必要なのかもしれません。また、免疫チェックポイント阻害薬にも期待が集まります」と将来を見据えていた。
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